■FFミドシップ構造
マークII三兄弟やローレルといった上級小型車というジャンルが売れまくっていた1989年に、ホンダはアコードインスパイア&3代目ビガーでこのジャンルに参入した。
このジャンルは6気筒エンジンを搭載したFR車とするのが当時のセオリーだった。
しかし、アコードインスパイア&ビガーは「重量配分の適正化によるハンドリングの向上」などといった理由で、直列5気筒を縦方向に搭載し、その後ろにトランスミッションを置き、トランスミッションと独立したデファレンシャルはエクテンションシャフトでつなぐ、FFミドシップと呼ぶ構造を採用した。
FFミドシップはフロントの軽さにより「トラクション(駆動力)が不足している」という評価があったほか、FF車なのにキャビンのトランスミッションが張り出すためFF車のメリットである広さがないという弱点もあった。
それだけにFFミドシップを採用した陰の大きな理由は「FF車ながら前輪の位置の自由度を増やすことで、FR車のようなフロントオーバーハングの短いシャープなデザインとするためだったのでは」という説もあった。
アコードインスパイア&3代目ビガーは内外装が魅力的だったことを大きな理由にそれなりに成功したのだが、その後FFミドシップを採用した2代目と3代目のレジェンドや2代目アスコット&ラファーガ、2代目インスパイア&セイバーは低調だった。
そういった経緯もあり、結局ホンダのラージセダンは1990年代終盤からオーソドックスなエンジン横置き構造に戻っている。
■UM-4(アンダーフロアミドシップ4WD)
軽乗用車の規格が現在のものとなった1998年、ホンダは今でいうクロスオーバー的なモデルとなるZを復活する形でリリースした。
Z最大の特徴は、4WDでエンジンを床下のミッドに搭載したUM-4の採用だ。
UM-4は室内長の長さというキャビンの広さ、フロントの軽さによるシャープなハンドリング、フロントにエンジンがないことによる高い衝突安全性や取り回しの良さ(タイヤの切れ角が大きいため)といったメリットがあったのは事実だった。
しかし、その反面で汎用性に欠けていたためコストが高い点など、全体的に「メリットはあるけど、手間ほどではない」というのも確かで、UM-4はZ以降続かなかった。
また2000年代以降EV化もありスマート、現行トゥインゴ、三菱iといったミドシップではないものの、RRの小型車は登場しているのを見ると、やはりミドシップとなるUM-4は中途半端な感があったのも否めない。
■スポーツハイブリッドi-DCD
2013年登場の3代目フィットのハイブリッドは、エンジンとトランスミッションの間に小型モーターを挟み込んだシンプルなハイブリッドとなるIMAの後継となる、スポーツハイブリッドi-DCDを採用した。
スポーツハイブリッドi-DCDは3代目フィットのハイブリッドで1.5リッターエンジン+7速DCTに29.5馬力のモーターを組み合わせたもので、7速DCTによる歯切れのいい変速をはじめとした、ハイブリッドながらスポーティなフィーリングを持つ点は魅力だった。
しかし、その反面でEV走行中に追い越し加速などのためアクセルを深く踏んだ際のレスポンスが今一つという点や、7速DCTがドイツ製のため対応が思うようにいかなかったこともあり、リコールが4回もあったという致命的な問題もあった。
ただ、スポーツハイブリッドi-DCDは3代目フィットのハイブリッドのあと、初代ヴェゼルやシャトル、現行フリードなどにも採用され、熟成を重ね、フィーリングや信頼性が向上したのは事実ではある。
だが、ホンダ自身がスポーツハイブリッドi-DCDに懲りてしまったのは現行フィットや現行ヴェゼルから、ハイブリッドがトランスミッションはなしで、クラッチによるエンジン直接駆動モードも持つ2モータータイプとなるe:HEVに移行していることが証明している。
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