■見た目がよく、ライバルより安いという魅力
販売店にヤリスクロスについて尋ねると以下のように返答した。「今はSUVが人気を高め、ヤリスクロスの売れゆきは好調だ。SUVでは価格が割安で、外観はカッコイイ。コンパクトカーのヤリスに比べると後席も広く、ファミリーのお客様にも推薦しやすい」。
ヤリスクロスが好調に売られる背景には、このように複数の理由がある。まずSUVで大切な外観の存在感が強い。全長は4180mmと短く、運転しやすいコンパクトサイズだが、全幅は1765mmと少しワイドだ。
そしてホイールベース(前輪と後輪の間隔)を全長の割に長い2560mmとして、4輪をボディの四隅に配置した。外観はボルボXC40をコンパクトにしたような印象で、SUVの力強さを上手に表現している。販売店の指摘どおり、ヤリスクロスにとって外観の魅力は大きい。
価格が割安なことも特徴だ。エンジンは直列3気筒1.5Lのノーマルタイプとハイブリッドを用意した。
ノーマルタイプで最も安価なX・Bパッケージは、法人やレンタカー向けで衝突被害軽減ブレーキを省いたから推奨できないが、価格は180万円を下まわる。ノーマルエンジンならば最上級のZでも221万円だ。
ハイブリッドZも258万4000円で、ノーマルエンジンと比べて37万4000円の上乗せに抑えた(価格はすべて2WD)。
一方、ライバル車のヴェゼルは、直列4気筒1.5Lのノーマルエンジンは装備のシンプルなGのみだ。販売総数の90%以上はハイブリッドのe:HEVで、売れ筋のe:HEV・Zは2WDでも価格が289万8500円に達する。
同じくライバル車のキックスでは、ノーマルエンジンが用意されず、ハイブリッドのe-POWERのみだ。Xの価格は275万9900円になる。
このようにヤリスクロスは、ハイブリッドでも価格がライバル車に比べて20万~30万円は安い。ノーマルエンジンを選ぶと55万~70万円も下まわる。ヤリスクロスでは、インパネのデザインやホイールベースをベース車のヤリスとほぼ同じにすることで、開発コストと価格を安く抑えた。
加えて価格の安いノーマルエンジン車にもグレードが豊富に用意され、少ない予算で購入できる。この買い得感がヤリスクロスの魅力をいっそう強めた。
■購入しやすさは本体価格設定だけにあらず
またヤリスクロスでは、残価率(新車価格に占める残価の割合)が高い。3年後なら新車価格の52%だ。ノーマルエンジンのヤリスクロス Z(新車価格は221万円)の場合、月々の返済額は、頭金のない3年間の均等払いで4万100円に収まる。
同様の見積りを同じエンジンを搭載するベース車のヤリス Z(197万1000円)で行うとどうなるか。ヤリス Zでは、ヤリスクロス Zと違ってアルミホイールがオプションだから、これを装着して総額は205万3500円とする。
ヤリスの場合、3年後の残価が新車価格の41%と低い。しかもアルミホイールのオプションは、装着しても残価が変わらないため、月々の返済額はさらに増えてしまう。
その結果、ヤリス Zの月々の返済額は4万4000円だ。新車価格はヤリスクロス Zが221万円、ヤリス Zはオプションのアルミホイールを加えて205万3500円だからヤリスクロスが約16万円高いのに、月々の返済額は逆に約4000円安くなる。
販売店では「ヤリスクロスでは50%以上のお客様が残価設定ローンを利用する」というから、5ナンバーサイズにこだわらない場合、ヤリスクロスを選ぶユーザーが増える。
販売店の数もライバル車とは異なる。今はトヨタの全店が全車を扱うので、ヤリスクロスは4600箇所で販売される。ホンダの2200箇所、日産の2100箇所に比べると2倍以上だ。強力な販売網もヤリスクロスの売れゆきを押し上げた。
このように見るとヤリスクロスの好調な販売は、デザインや機能だけでなく、ノーマルエンジンの設定と割安な価格、月々の返済額を抑えられる残価設定ローン、販売網などによるところが大きい。
ヤリスクロスの納期を販売店に尋ねると「今でも約半年を要する」というが、ヴェゼルに比べると生産体制に余裕がある。つまりトヨタの生産力と販売力がヤリスクロスの売れゆきを高めた。
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