■ヤリスクロスの弱点
その代わりヤリスクロスには、ライバル車と比べた時の欠点も散見される。内装ではインパネの作りがヤリスとほぼ同じだから、質感はあまり高くない。前席のサポート性もいまひとつで、座り心地のボリューム感が乏しい。
Zの運転席には電動パワーシートを装着したが、コスト低減のためにモーターを1個に節約した。リクライニングやスライドの調節は、クラッチを切り替えて行うため、スイッチを操作してから各部が動くまでに時間差が生じる。運転姿勢を調節しにくい。
後席はヤリスに比べれば快適だが、SUVのなかでは足元空間が狭い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシひとつ少々だ。キックスは2つ弱、ヴェゼルは2つ半だから、長身の乗員がヤリスクロスの後席に座ると窮屈に感じる。
動力性能は満足できるが、ノーマルエンジンの最大トルクは14.8kgmで、4800~5200回転で発揮される。少々高回転指向だから、3000回転以下では駆動力が落ち込む。
例えば一定速度で巡航中にアクセルペダルを緩く踏み増した時は、エンジンの反応が鈍く、違和感も生じる。そこでアクセルペダルをさらに踏み増すと、CVT(無段変速AT)がギヤ比を自動的に変えてエンジン回転が高まり、この時には3気筒特有の粗いノイズが響く。
乗り心地は硬めだ。ヤリスクロスの買い得グレードは、ノーマルエンジン、ハイブリッドともに前述のZで、18インチタイヤを装着する。これが乗り心地を硬くした。開発者は「走行安定性と乗り心地のバランスでは、本来なら17インチがベストだが、外観の見栄えを優先して18インチを採用した」と述べた。
それでもSUVで1位の売れゆきには、この乗り心地を犠牲にした18インチタイヤの採用が優れた効果を発揮している。価格から残価設定ローン、さらにカッコよさを優先させた外観まで、ヤリスクロスでは「コストを抑えた売れるクルマづくり」が特徴だ。まさにトヨタの本領が発揮されている。
そのために好調に売れているが、前述のとおり欠点も少なくない。購入する時は、ヴェゼルと乗り比べるといいだろう。ヤリスクロスの商品力が欠点も含めてよくわかる。
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