壊れたら高すぎるクルマ部品 寿命を延ばすにはどうする?

■エアコン・コンプレッサー焼き付き/工賃込み:20万~30万円

左上のコンプレッサーが壊れるとやっかいだ(写真/dougilly@Adobe Stock)
左上のコンプレッサーが壊れるとやっかいだ(写真/dougilly@Adobe Stock)

 カーエアコンは「エア・ミックス」と呼ばれる方式が主流となっている。これは吸入された空気が全てエバポレーター(クーラーユニットの冷却フィン部)を通過。エアミックス・ダンパによってヒーターコアを通る空気と通らない空気に分けられる構造で、冷気と暖気を混合させられるため暖房しながら除湿する「除湿暖房」も可能なのだ。

 さて、アルコールが皮膚に付着するとスゥーと冷たく感じる。これは蒸発するときに皮膚から熱を奪うからだ。

 このような液体が気体に変化するときに必要とする熱を「気化熱」と呼び、冷気を造り出す「クーラーユニット」はこの現象を利用している。

 とはいえ、気化熱を利用するために蒸発した液体を大気中に放出しっぱなしでは不経済で効率も悪い。そこで、一度気体になった「冷媒ガス」を再度、液体に戻して再利用している。つまり、液体→気体→液体という変化を繰返しつつ循環させているのだ。

 その気体になった冷媒を液体へと戻す働きをしているのが「エアコン・コンプレッサー」で、冷媒経路内には冷媒ガスと共にコンプレッサーの潤滑を目的とした「コンプレッサーオイル」が一定量、注入されている。

 このため、ガス漏れを起こしたときには「冷媒ガス」と共に「コンプレッサーオイル」も多少なりとも漏れ出す。それゆえ、冷えなくなったとき根本的な修理をすることなく「冷媒ガス」の補充のみ続けていると、オイル切れをおこして「エアコン・コンプレッサー」が焼き付く可能性が高まる。

 万が一にも「エアコン・コンプレッサー」が焼き付いてしまうと削れ落ちた細かな金属片が冷媒経路内の隅々まで拡散してしまうため、クーラーユニットの構成パーツをそっくり交換する必要が出てくる。そうなった場合、20万~30万円の高額の修理代がかかることに。

 ガス漏れが原因で冷えなくなったときは、多少、費用がかかったとしても電送整備専門の工場に依頼してキッチリ修理したい。

■ウォーターポンプの故障/工賃込み:2万~5万円

一定の温度になるとサーモスタットが動き、水車のような歯車が動いて強制的に冷却水を循環させるのがウォーターポンプ(写真/Dmytro@Adobe Stock)
一定の温度になるとサーモスタットが動き、水車のような歯車が動いて強制的に冷却水を循環させるのがウォーターポンプ(写真/Dmytro@Adobe Stock)

 エンジンの冷却水にはサビと凍結に防止効果を発揮するLLC(ロング・ライフ・クーラント)が使用されている。

 このLLCは定期的に交換する必要があり、交換を怠ると本来の性能が発揮されず、冷却経路がサビて詰まったり、凍結などといったトラブルを引き起こす。

 また、一定の濃度を維持する必要もあり、減ったからといって無闇に真水を補充したりすると薄まって性能が低下。サビの発生を招くことになる。

 そんな具合に冷却水を劣化させてしまった場合、冷却水の循環という重要な役割を担っている「ウォーターポンプ」の寿命を縮めることになる。

 劣化した冷却水を使い続けるとメカニカルシールやシャフトベアリングの劣化を早めてしまい、水漏れを起こしやすくなるのだ。そうなってしまったら、ただちに交換する必要がある。

 ジワジワと水が漏れ出す初期の段階なら冷却に支障はないものの、時間の経過に伴って漏れ量が増えていき最後には冷却水をまともに圧送できなくなる。その結果、エンジンを冷却できなくなるため、オーバーヒートを起こすことになるからだ。

 「ウォーターポンプ」の交換だけで済めば2万~5万円(車種によってはもっと高額になるケースもある)で済むが、無理に走らせてオーバーヒートをーこじらせた場合、エンジンに致命的な損傷を与えてしまうこともあり「乗り換えたほうが特」というケースも。くれぐれも注意したい。

 なお、「ウォーターポンプ」に不具合が発生した場合、初期の段階ではポンプケース側面から冷却水が漏れ出し、進行すると「ガラガラ」といった異音を発するようになる。

 もしも停めておいたクルマの下に水が漏れた跡があり、その水が透明(エアコンから排出された水)だったら問題ないが、もしも「赤」や「緑」といった色が付いていたら要注意!

 冷却水漏れの疑いがあるからで、さらにエンジン回り(エンジン前方側)から聞き慣れない異音を伴うようだったら、かなりヤバい状態。ただちに冷却水の点検を行いたい。

 そして、LOWレベルを切っていたなら無理は禁物。そのままの状態で走らせると「オーバーヒート」する可能性があるので、プロに点検・修理を依頼したい。

 ちなみに、エンジンが正常な状態にあるとき、水温計の針は目盛り板の中央付近、80~85℃くらいで落ち着いている。このくらいの水温が適温で、どのような走行状態でも常に安定するようコントロールされているからだ。

 このため、走行中に指針が高温側にじわじわ振れてきたら要注意! パワーが徐々に低下してきてアイドリングが不安定になり「ブルッ、ブルッ」と振動しだした瞬間に「プスッ」と止まってしまう。

 そんな症状を伴うようなら「オーバーヒート」の疑いが濃厚。そのまま無理に走り続ければエンジンに致命的なダメージ(シリンダーヘッドが歪む)を与えてしまうので、異常に気付いた時点でただちにクルマを停めてエンジンを冷やすことが大切だ。

【画像ギャラリー】一度壊れると5万円以上吹っ飛ぶクルマの部品とは?

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