■実効空力に特化したフィットモデューロXと、レーシングカーライクなオーラNISMO
高級で大きなスポーツカーのように、高性能なサスペンションを付けたり、フェンダーを膨らませてワイドなハイグリップタイヤを装着することができないコンパクトスポーツの場合、特に肝となるのが「エアロダイナミクス」だが、この2台はどちらも、緻密な設計が織り込まれている。
フィットモデューロXには、徹底した実走行テストを通じて導き出した「実効空力」という考え方にも基づいた、空力アイテムが装着されている。
フロントバンパー下側中央のスロープや、バンパーサイドのフィンなど、シミュレーションと共に、実走テストでその効きを検証済のアイテムだ。デザイン的にも、もう少し派手なフィンを期待してしまうが、「実効空力」的には、この大きさで十分な効果が得られる、ということだろう。
これらによって、四輪への垂直荷重を増大し、操舵レスポンスとダンピングを高めつつ、ロールやピッチングまえも抑えたそうだ。また、限界域での荷重の抜けを起こりにくくすることで、直進性と挙動のリニアリティーを同時に高めている。
対するノートオーラNISMOは、低重心で、ローアンドワイドなフォルムとしている。フロントオーバーハングやリヤオーバーハングの延長、サスペンションのローダウン、リヤスポイラー形状の最適化など、車両全体で、ダウンフォースを増大させている。
また、NISMOがレースで培った空力技術をベースとしたデザインを採用しており、フロントバンパー下のスプリッターなど、フォーミュラEのレースカーに似たデザインとなっている。
フロントバンパーサイドの、フロントサイドエアスプリッターとインレットダクトサイドは、空気流の剥離を抑えながら、スプリッター内に取り込む空気流れと、バンパー側面の空気流を整え、高速走行時の操縦性を大幅に向上させている。先代のノートe-POWER NISMOを上回る、ド派手な空力アイテムは、デザイン的にも、このクルマを所有することの満足感を得ることができ、ポイントが高い。
■パワートレインの味付けはNISMO圧勝
フィットモデューロXは、フィットと同じe:HEVのパワートレインが搭載されている。最高出力98ps/5600-6400rpm、最大トルク127Nm/4500-5000rpmの1.5リッター直4エンジンに最高出力109ps/3500-8000rpm、最大トルク253Nm/0-3000rpmを発生するモーターを組み合わせている。
一般道から高街路、高速走行まで、過不足ないレベルで加速はできるのだが、モデューロXをスポーティなグレードとして考えると、もうひとスパイスが欲しくなってしまう。
フィットのスポーツモデルといえば、最高出力132psを発生する1.5リッターVTECと、6速MTもしくはCVTを積んだ、先代フィットの「RS」が思い出されるが、今回のモデューロXでも、e:HEVに手を入れ、「新しいホンダらしさ」が伝わる遊び心を表現してほしかった。
対するノートオーラNISMOも、ベースとなるノートオーラと同じ、最高出力82ps/6000rpm、最大トルク103Nm/4800rpmを発生する1.2L、直3エンジンに、モーター最高出力136ps/3183-8500rpm、最大トルク300Nm/0-3183rpmのe-POWERシステムが搭載されているのだが、こちらはひと味違う。ECUのチューニングによって、味付けが変えられているのだ。
オーラのSPORTモードをNISMOのECOモードになるよう調節し、更にNISMO専用チューニングを施した、力強く伸びのある加速感を味わえる「NISMO」モードを新設定。これが、パンチが効いていて実に面白い。遅れがなく強い加速は、じわっと手汗が出るほどで、NISMOらしさが表れている。
ハイグリップタイヤも効果抜群で、コーナリングもシャープで無駄がない。新世代のスポーツとして、十分に魅力ある走りを実現している。
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