■2030年目標は火力が75%から41%、原子力が6%から約20~22%に増やす経産省のエネルギー基本計画
以下、実状を紹介しよう。自工会の表を見て頂きたい。日本は電力の75%を火力。19%が太陽光や水力など再生可能エネルギー。そして表にはないが6%を原発で作っている。
そして経産省が2021年7月21日に発表した、最新のエネルギー基本計画の素案(9月15日更新)を見ると、2030年度には火力を41%程度(平成27年策定時は56%程度)まで減らすという。
再生可能エネルギーは2019年度の18%程度から約36~38%(平成27年策定時は22~24%程度)。なんと! 6%から約20~22%(平成27年策定時と変わらない)を原発にしようと考えているのだった。
欧州のエネルギー戦略を見ると、2030年までに再生可能エネルギーを60%に倍増させ、原発は33%から17%に減らしている。極めて妥当かつ実現できそうな目標だと思う。
一方、我が国は原発による電力を3倍以上にしようとしているのだった。既存の原発を稼働させても無理。そして我が国で原発を新設しようとしても、8年じゃ、とうてい無理。
自工会の表を再度見て頂きたい。日本の太陽光のコストを15.8円とし、日本より緯度高いため発電効率の悪い欧州を6.8円にしている。
日本の太陽光発電コストは、世界で見たら飛び抜けて高い。理由は簡単。経産省が原発のコストを安く見せ、原発を推進してきたからに他ならない。自工会の表を見たら、誰だって日本のコストはおかしいと思う。
自工会の日本と海外の発電コスト表が公開された後、経産省もマズイと思ったのか太陽光が最も安いという2030年の発電コストを出してきた。それでも海外と比べたら圧倒的に高いですけど……。
とはいえ、経産省は現時点で太陽光発電を主力に切り換えるという判断をしていない。原発の利権から離れられない企業や地方自治体がたくさんあるからだ。
このままだと2030年は原発の比率を増やすことなどできまい。また、再生可能エネルギーを突然「増やせ!」ということになっても時間がかかる。
そうこうしているうち2030年を迎えてしまい、日本から欧州に輸出できなくなってしまう……。そんな最悪でいながら、容易に予想できる日本の将来を自工会会長は憂慮しているのだろう。
なのに政治家は原発にこだわる経産省をコントロールできず、電気自動車をたくさん作らない自動車業界を時代遅れだと言う。どう考えたっておかしい。
自工会会長は550万人といわれる自動車産業の就労人口をなんとかキープしたいと考えているようだ。このままだとEUで販売するクルマはEUの工場で生産しなければならなくなる。
直ちに太陽光発電の増強(農地の上に発電パネルを載せるソーラーシェアリングが有望ながら農水省が許さない)や世界3位の発電ポテンシャルを持つ地熱発電(環境負荷の少ないバイナリ型)などに取り組まないと間に合わなくなる。
新しい首相がエネルギーの将来展望を持っていなかったら、すべて手遅れになりそうだ。
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