日本車なのに日本の道に合ってない! クルマの全幅は何mm以上が運転しにくいのか?

■全幅が違うと、運転するとどのように車幅感覚が違ってくるのか?

昨年登場したヤリスも小型車枠である全幅1695mmを堅持。4m以下の全長との組み合わせで取り回しは抜群に良い
昨年登場したヤリスも小型車枠である全幅1695mmを堅持。4m以下の全長との組み合わせで取り回しは抜群に良い
欧州のBセグコンパクトに比べるとナローなサイズながら、日本車らしい緻密なレイアウトにより、室内幅はそん色ない。ハイブリッド車もラインナップされており、欧州でも人気に火が付いた
欧州のBセグコンパクトに比べるとナローなサイズながら、日本車らしい緻密なレイアウトにより、室内幅はそん色ない。ハイブリッド車もラインナップされており、欧州でも人気に火が付いた

 このような全幅の拡大に基づく車幅感覚の違いは、いかなる理由によって生じるのか。全幅が1695mmの5ナンバー車、1750mm前後の3ナンバー車、さらにワイドな1850mm前後の車種で比べてみたい。

 運転席に座って前方を見ると、以前はボンネットがしっかりと見える車種が多かったが、最近は見える範囲が全般的に狭まった。例えばカローラのセダンやワゴンのツーリングでは、ボンネットは手前の一部しか見えない。ミニバンになると、ボンネットが視野に入る車種はほとんどない。つまりボンネットの見え方だけが、車幅感覚に影響を与えるわけではない。

 それでは何が車幅感覚に関係するかといえば、左右のフロントピラー(フロントウインドウの窓枠部分)の見え方がある。

 全幅が1695mmに収まる5ナンバー車は、前方を見ている時でも、視野にピラーが入っている。右ハンドル車の場合、ドライバーから遠い左側のピラーも無意識に見えている。運転中にピラーは意識しないが、車幅を把握する上で、目安になっているわけだ。

 それが全幅を1750mm前後に設定した3ナンバー車になると、左側のピラーが視野の左方向へ遠ざかる。5ナンバー車では、左右のピラー間隔が自分の肩幅に近い感覚なのに、3ナンバー車になるとピッタリした印象が少し下がる。

 全幅が1800mmを超えると、左側のピラーが一層見えにくくなってしまう。全幅のワイド化は、物理的な通行のしやすさに加えて、ドライバーの運転感覚にも大きな影響を与える。

 現実的な車幅を示す言葉として、ミラー・トゥ・ミラーがある。ボディではなく、ドアミラーの外側で測った全幅で、狭い道での通りやすさはミラー・トゥ・ミラーで左右される。

インプレッサも3代目以降完全に1700mmを超えたモデルとなった。現行モデルは1775mm。ただし幅広になったからといって、運転のしやすさへのネガな話はあまり耳にしない。何故だろうか?
インプレッサも3代目以降完全に1700mmを超えたモデルとなった。現行モデルは1775mm。ただし幅広になったからといって、運転のしやすさへのネガな話はあまり耳にしない。何故だろうか?
スバルには運転時の視界確保のための社内規定がある。そのため、デザイン優先で犠牲にもなりがちな視界を十分に確保し、安全性や安心感を高めている
スバルには運転時の視界確保のための社内規定がある。そのため、デザイン優先で犠牲にもなりがちな視界を十分に確保し、安全性や安心感を高めている

 そこで例えば現行インプレッサは、先代型と比べて全幅は35mm広い1775mmになったが、ミラー・トゥ・ミラーは広げていない。ドアミラーの形状や取り付け位置を工夫して、全幅をワイド化しながら、ドアミラー部分の拡大は先代型と同じに抑えた。

 ミラー・トゥ・ミラーを抑えたクルマを運転すると、狭い道や駐車場での使い勝手は、全幅の割に優れている。しかし通常の車幅感覚は、ミラー・トゥ・ミラーではなく、全幅の数値に基づくように感じる。真っ直ぐに走っている時の「人馬一体」は、車両の全幅とピラーの位置関係で決まる。

 そうなるとピラーの見え方や取りまわし性、運転のしやすさを基準に全幅を判断すると、ベストはやはり1700mm以下の5ナンバー車だ。

 しかし最近は側面衝突時の安全確保などの必要から、5ナンバーサイズに収めるのが難しい。5ナンバーサイズだと、ボディ底面の骨格が干渉して前輪の最大舵角が減り、3ナンバー車よりも最小回転半径が拡大する場合もある。

カローラスポーツ。こちらはグローバルカローラと同様に全幅1790mmとなる。グローバルではこの全幅が標準となる
カローラスポーツ。こちらはグローバルカローラと同様に全幅1790mmとなる。グローバルではこの全幅が標準となる
カローラツーリング。全幅は1745mmに抑えると共にホイールベースもカロスポと同一の2640mmとすることで市中での取り回しの良さもアピール(グローバル仕様のホイールベースは2700mm)
カローラツーリング。全幅は1745mmに抑えると共にホイールベースもカロスポと同一の2640mmとすることで市中での取り回しの良さもアピール(グローバル仕様のホイールベースは2700mm)
カローラツーリングの室内。こちらは全車共通のため、全幅の広いカローラクロスと比べても、見た目の違いはほとんどない
カローラツーリングの室内。こちらは全車共通のため、全幅の広いカローラクロスと比べても、見た目の違いはほとんどない

 こういった事情から3ナンバー車に拡大するとしても、1750mm程度に抑えるのが好ましい。例えばカローラの場合、スポーツ(5ドアハッチバック)の全幅は1790mmだが、日本向けに開発されたセダンとワゴンのツーリングは1745mmだ。

 この点について、カローラの開発者は以下のように話している。

 「従来の日本仕様のカローラは、基本的に5ナンバーサイズを守ってきた。しかし現行型は、走行安定性や乗り心地などを向上させるため、海外仕様とプラットフォームを共通化して、3ナンバー車に拡大させている。それでも全幅はなるべく抑えたい。

 そこで販売の主力になるセダンとツーリングは1745mmとした。3代目のプリウスは、2代目に比べて全幅を拡大しながら、1745mmに設定して好調に売れた実績がある。そこでカローラも、1745mmまでなら、日本の市場でも許容されると考えた」。1745mmの全幅は、運転感覚や取りまわし性を悪化させない限界的な数値でもあるのだろう。

次ページは : ■今や小型車でも全幅1800mmが普通。普通車に至っては更にワイド化が進行中

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