■全幅のワイド化と国内の販売状況は根底でつながっている
そしてもうひとつ別の要素として、全幅がワイドな車種は、概して価格が高まる事情もある。日本の平均所得は、1990年代の後半をピークに下がり、今は多少持ち直したものの、約25年前の水準には戻っていない。その一方でクルマの価格は、安全装備の充実や消費増税により、15~20年前の1.2~1.3倍に高まった。
所得が伸び悩むと、新車に乗り替える時、予算を増額するのは難しい。今までと同じ予算では、購入できる車種が小さくなり、軽自動車やコンパクトカーの需要が増えた事情もある。
メーカーは、この状況に合った販売戦略を立てている。そのためにセダンを中心に海外指向を強め、全幅もワイド化され、ますます売れなくなった。車種の数も減る。ホンダではN-BOXが国内で新車として売られるクルマの30%以上を占めて、軽自動車全体なら50%を超える。
フィット、フリード、ヴェゼルまで加えると85%に達する。このような状況だから、狭山工場に閉鎖に伴い、伝統あるオデッセイを終了することになった。
以上のように、全幅のワイド化と国内の販売状況は、根底では繋がっている。「日本は軽自動車とコンパクトカーなクルマに任せておけばいい」という判断があるから、ほかの大半のカテゴリーは、ボディがワイド化しているのだ。
当然の成り行きともいえるが、運転の楽しいクルマがワイドになり、価格を高めていくのは寂しい。BRZや86の全幅が1775mmに収まっているのは、今では貴重で立派な見識に思えてくる。
コメント
コメントの使い方確かに全幅が広いと車両感覚が薄れる、かもしれないけど、1850mmと1800mmの車にほぼ違いなんて感じない。運転してみればすぐわかる。なぜなら、車両が大きかろうが小さかろうが道の真ん中を堂々と走ってくるし、交差点では通り過ぎてくれるのをバカづらさげて待ってるじゃん。そうなったら全幅は2000mm超えても問題ないと思うよ。むしろ全長のほうが問題。曲がれないとか駐車できない、なんてことになるからね。
昔の軽自動車サイズで最新レベルの衝突安全性や快適性を実現できないメーカーは、技術力が低い。