■オリジナルにはこだわらず、きちんと直して現役マシンとして走らせたい
単に古いクルマだからと、今の世の中では走れないというのは受け容れ難いんです。置き物になってしまったらただの鉄の塊でしかありませんから。
博物館などで古いクルマを動体保存していたり、通勤に使っていらっしゃる方を見ると尊敬の念を抱きます。やはり、クルマは人を乗せて走ってこそだと思いますね。
そのため、オリジナルにはこだわらないという考え方なんです。きちんと走るためなら、他社部品の流用も全然問題ないと思っていますし、必要であれば部品作ってもらうのもありと思っていますから。
このSVXも、手に入れた時はボロボロだったんです。当初は自分で手を入れていたのですが、やはり限界があり、おそらくは日本で唯一のアルシオーネSVX専門店であるK-STAFFさんと出会えたからこそ、今の姿があると思っています。
■愛車との濃いエピソードを教えてください
●ボロボロのレストアベース車をワイドボディ化
当初はルーフの塗装焼けを塗り直そうと主治医であるK-STAFFさんと話していたら、フェンダーラインはどんな形状がよいのかという話になりまして。
私なりのイメージを伝えてみたところ「それなら塗装するタイミングでフェンダーを作ってくれないか、板金屋さんで聞いてみよう!」という流れになったんです。
板金屋さんにつたない言葉で「ボディとブリスターフェンダーは直角に、くぼみのラインをシャープに出して、1990年代のプレス機ではなかなか再現できなかったエッジのラインもシャープさを…」と伝えたら、すぐに傍にあった鉄板を切ってきて、「こんな感じのフェンダーでしょ? 」と、私のイメージをその場で再現してくれたんです。
そのラインこそが、まさしく私が頭に描いていたイメージどおりで、その場で「お願いしますっ!!」と依頼することにしました。
その後、1年以上かけて試行錯誤を繰り返した結果、ボロボロだったレストアベース車がフルエアロ&フェンダーライン修正仕様に生まれ変わりました。
当初は3枚の鉄板で再現しようとしたところうまくいかず、結果的に5枚の鉄板を組み合わせ叩き出しで私のイメージを再現してくださったそうです。
しかも、塗装の前段階であるサフェーサー処理を施し、イメージとは違うとまたイチからやり直したとか…。この形状を生み出すまで6回もやり直したと伺っています。
ただ単に、車幅を広げるフェンダーをつけたSVXは海外にも何台か存在しますが、いわれなければ気づかない、けれど見たら目を離せない、そんな絶妙な品の良さを狙い、SVXの持っている美しいラインと一体化させることも含めてオーダーしました。
フェンダーは約10mm増ですが、もともと絞ってある肩の部分にエッジを付け、デッキを作ったことでワイドに見えるようになっています。フューエリッドもワイドボディのラインに沿ってさりげなくラインを合わせてくれている点も感激しましたね。
●エンジンをオーバーホール。その結果…
15万キロ走破したエンジンも不調の兆しがありました。そこで、知人のツテをたどってレース用のエンジンを組む方にオーバーホールをお願いしました。その際「ノーマル仕様のままちょっとリファインする程度でお願いします」とリクエストして……。
当時のインプレッサの部品を流用しつつ、エンジン内部にこれまで蓄積したカーボンの除去や、公差の範囲内のバラツキをうまく調律していただいたんです。さらに、ATやトルコンとの相性も加味しつつ、バランス取りをしていただいたようで、ニュートラルにしたままだと振動が出るんですが、トルコンに繋ぐとピタっと消えるんですよ。
5000kmの慣らし運転(普通に街乗り)を終えたあとの「3.3リッターフラットシックスエンジンのとんでもなく滑らかなフィーリング」に感激しましたね。
エンジンがキレイに回るようになったので、もう少しパンチほしいなぁと思いK-STAFFさんを訪ねた時、たまたま何本か作ったオリジナルマフラー(カナダのステブロ製のマフラー)の最後の1本が倉庫にあり、実際に音を聴かせていただいたところ、イチコロでした(笑)。その場で即決しました。
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