■ロッキーへのHV追加は海外へのメッセージ?
そこで注目すべきは今回のロッキー(ライズ/以下ロッキーシリーズ)でのシリーズハイブリッドの追加設定である。
ロッキーシリーズはダイハツのDNGAという思想に基づいた新規プラットフォームを採用しており、これは登録車のA/Bセグメント及び軽自動車で共通となっている。これが、軽自動車のHEVもロッキーシリーズに準じたものになるではないかとされる所以なのである。
そして、ダイハツの軽ストロングHEVがシリーズハイブリッドとなれば、その先に“軽規格BEVありき”との話が進んでいることは容易に察することができる。もちろんロッキーシリーズもその先にBEVがあるはずだ。
前述したとおり筆者としては「なぜロッキーからHEV?」という疑問がそこでわいてくる。国内市場だけを考えれば軽自動車へ最初にストロングHEVを設定したほうがインパクトは大きく販売実績にも大きく影響するはず。もちろん、そんなに急に大量のユニット供給できないといった背景もあるのかもしれない。
今回のロッキーシリーズのHEV追加というのは、日本よりも海外(とくにASEAN諸国)へ向けたメッセージのようにも見える。
ASEAN加盟国での代表的な自動車生産国と言えば、タイ、インドネシア、インドとなる。とくにタイは“ASEANのデトロイト”ともいわれ、自国量販ブランドを持たないものの、世界の多くのメジャーブランドの生産拠点がある。世界各国へ輸出されており、日本製よりも製造品質が高いとの評価があるようだ。
日本へも日産キックス、同マーチ、三菱ミラージュなどが輸出されている。そのタイが2021年3月に“2030年までに自動車生産の半数をBEVにする”ことを検討していることを明らかにしたのである。
ここのところ、タイで行われるモーターショーでは電動車の展示が目立つので「もしや?」とは思っていた。
ただ、すでに中国上海汽車がタイに工場を構えてSUVタイプのBEVを生産していたのだが、長城汽車もGM(ゼネラルモーターズ)の工場を買収し、2021年6月より電動車(PHEV)の現地生産を開始している。
しかし情報筋によると「中国メーカー(政府?)主導ではなく、独自に車両電動化を進めて行きたいとタイ政府は考えているようだ」との話も聞いている。そして、将来的には“BEV版EMS(家電や電子機器において、受託生産を行うサービス)”の一大拠点にしたいとかなり真剣に考えているようである。
つまりタイのBEV版EMSを利用して、例えばGMなど各メジャーブランドモデル向けに製造されたBEVをタイから出荷したいと考えているとの話もあるのだ。これが実現すれば、車両電動化では大きく出遅れている日系ブランドの積極的利用と言うものも十分考えられる。
ASEAN域内では、前述したタイ、インドネシア、インドのほかマレーシアなども加わり、それぞれの国で車種を作り分け、お互いの国で融通しあってラインナップしていたりすることもある。そうなると、加速するBEV化はタイだけでは終わらないとも見ている。
つまり、ASEANで人気の高いコンパクトクロスオーバーSUVスタイルでのシリーズハイブリッド車の日本国内デビューは、日本よりも車両電動化熱が高まりを見せるASEANをより意識したものとも考えられる。
つまり、いま詳細はわからないが、ダイハツの軽ストロングHEVがロッキーシリーズのHEVと共用部分が多いと考えると、ASEAN市場も巻き込んで量販して現地生産も行うことになるので、量販効果だけではなく構成部品の一部をASEANから輸入することによるコストダウンも実現可能となる。
前述したように2022年に国内登場予定とされているダイハツ軽ストロングHEVがかなりの魅力的な価格設定になる可能性も十分に孕んでいることになる。
ただし、タイはすでにPHEVなどを一足飛びにして、BEV普及へ一気に舵を切りたいようなので、ASEAN地域の車両電動化は日本よりはるかにスピーディに進んでいくのではないかともされている。そうなると、ストロング軽HEVの先にある、軽BEVもかなりインパクトのある価格設定になることは十分考えられる。
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