毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はマツダ MPV(1990-2016)をご紹介します。
文/伊達軍曹 写真/MAZDA
【画像ギャラリー】ミニバンながら高級感ある乗り味や雰囲気も魅力! マツダ MPVをギャラリーで見る(29枚)画像ギャラリー■高級感ある乗り味や雰囲気のミニバンとして登場したMPV
まさにMulti Purpose Vehicle(多目的な乗り物)として1990年に誕生。
2006年に発売された3代目の「スポーツカーの発想で、ミニバンを変える」というキャッチコピーも「そのとおり!」としか言いようのないもので、ミニバン離れした走りにより、一部のユーザーからは熱く支持された。
しかしメーカー自体が長期戦略を変更したことにより、生産終了とならざるを得なかった隠れ名車。
それが、マツダ MPVです。
多用途車を意味する「Multi Purpose Vehicle」という英語の頭文字をそのまま車名にした初代マツダ MPVが日本でデビューしたのは1990年1月。
全長4465mm×全幅1825mm×全高1745mmというボディサイズは同時代のアメリカ製ミニバンと同等で、日本の狭い道では難儀する局面もありましたが、その分だけ車内の余裕はたっぷりでした。
駆動方式はいわゆるFRで、搭載エンジンは当初3L V6のみでした。1991年10月のマイナーチェンジで「アンフィニ MPV」へと車名が変わり、それまでの本革シートに加えてファブリックシートの仕様も用意。
そして1995年10月のマイナーチェンジではデザイン変更を行うとともに2.5Lのディーゼルターボおよびガソリンエンジンを追加しました。
その後も改良を加えられながら、アメリカ市場でも堅実な人気を得ていたMPVは、1999年6月に2代目へとフルモデルチェンジされました。
駆動方式はFRからFFへと変更され、後部ドアもヒンジ式からスライドドアに。当初の搭載エンジンは新開発の2L直4とフォード製2.5L V6で、2002年4月のマイナーチェンジ時に新開発の2.3L直4 と3L V6に変更されています。
こちらも細かな改良を重ねながら販売された2代目でしたが、2006年2月にはいよいよ「スポーツカーの発想で、ミニバンを変える」というキャッチコピーを伴って3代目のマツダ MPVが登場しました。
搭載エンジンはV6が廃止され、全車2.3Lの直4に刷新。デビュー翌月には、3.5L自然吸気エンジン並みのトルクを発生する最高出力245psの2.3L直4直噴ターボエンジンも追加されます。
トランスミッションは、自然吸気エンジンのFF車は4速ATでしたが、ターボ車と4WDは6速ATに進化。そして車台はスポーティなマツダLYプラットフォームが採用され、これに伴って後輪サスペンションは先代のトーションビーム式からマルチリンク式に変更されています。
2008年1月のマイナーチェンジでは内外装デザインを小変更するとともに、自然吸気FF車のトランスミッションが5速ATとなった3代目マツダ MPVは、爆発的なヒット作にはなりませんでした。
とはいえ、まさに「スポーツカーの発想で、ミニバンを変える」というキャッチコピーどおりの素晴らしい走行性能と大柄なボディゆえの居住性の高さにより、一部ユーザーの心をがっちりつかんだミニバンではありました。
しかしマツダは――日本経済新聞の報道によれば2016年2月に――2017年をめどにミニバン各モデルの生産を打ち切り、次期モデルの開発は行わないことを決定。
そして実際、3代目マツダ MPVは2016年3月に販売終了となってしまいました。
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