新型レクサスLXは全車指紋認証標準装備「レクサスは盗みやすくて高く売れる」その汚名を晴らせるか?

■アメリカ仕様のLXには指紋認証がない!

アメリカ・ラスベガスで2021年11月に開催されたSEMAショーに出展していた新型レクサスLX
アメリカ・ラスベガスで2021年11月に開催されたSEMAショーに出展していた新型レクサスLX
ナビゲーションのディスプレイ左下がプッシュエンジンスタートスイッチだが、日本仕様で用意された指紋認証システムはなかった
ナビゲーションのディスプレイ左下がプッシュエンジンスタートスイッチだが、日本仕様で用意された指紋認証システムはなかった

 アメリカではランドクルーザー300の販売はないが、新型LXはすでに販売がスタートしている。お披露目の場所として選ばれたのはラスベガスで開催される世界最大のアフターマーケットの見本市『SEMA SHOW』のレクサスブースだった。

 筆者は2021年11月上旬、SEMAに取材で足を運んだが、レクサスブースの目玉となる展示でランクル300の発売がないぶん、新型LXに期待するところが大きいのだろう。プレゼンには多くのクルマ業界人(SEMAは業界関係者オンリーのトレードショー)が集まっていた。

 展示車両は室内に座ることができたので、さっそくエンジンスタートのスイッチを見てみたが……指紋認証のリーダーはついていなかった。

 日本とは比べものにならない盗難大国であるアメリカにおいてLXはそれほど盗まれていないのか? 指紋認証がないのはどんなことが理由だろうか? ブースのスタッフに聞いてみた。

 「日本で販売されるLXには全車標準装備だと聞きましたが、アメリカ市場向けのLXには採用されませんでした。その理由としては、アメリカでは重要視されていないんでしょうね」。

 ん?「重要視されていない」とはどういうことなのか。その後、周辺取材を重ねた結果、以下の結論を得た。

 要するにアメリカではLXの盗難比率が低い。日本では突出した盗難率だが、アメリカでは他のクルマの盗難台数があまりにも多く、目立った存在ではないようだ。

 2020年に最も多く盗まれた乗用車はホンダシビックで、その数3万4144台。乗用車の1位~6位まですべて日本車で2位はアコードの3万814台、3位カムリの1万6915台。対する日本は1位プリウスが517台、2位ランドクルーザーが395台、3位LXが286台……。アメリカの盗難台数は日本とは2ケタも違うのだ。

 そしてアメリカで盗難被害に遭うのは20年以上前の古いクルマが主流となる。盗んだ後にバラシて「部品」と流通させるニーズを見込んで盗むのだ。

 つまり、新車のニーズがそもそも低いので、指紋認証のような新しい防犯システムはあまり重要視されない、という意味に解釈できる。

 しかし、近年カナダではレクサスLXの盗難が急増している。カナダの保険会社の調べによると、カナダ・オンタリオ州においては2019年と2020年型のLXがなんと5台に1台盗まれたという。

 そして、カナダで盗まれたLXはバラされることなく、そのままの形で大西洋をわたって海外に密輸されている現状がある。日本の状況と酷似しており、盗難の手口としてもCANインベーダーやコードグラバーが主流だという。とくに、コードグラバーが急増しているそうだ。

 コードグラバーとはどんな手口で、なぜレクサスに多いのか?

■日本でも海外でも、LXの盗難手口で多いのは?

ロシアの販売サイトに掲載されていたCANインベーダー。見た目はモバイルバッテリーそのもの。販売していたWebサイトには操作方法のマニュアルや動画、対象車種まで載っていた
ロシアの販売サイトに掲載されていたCANインベーダー。見た目はモバイルバッテリーそのもの。販売していたWebサイトには操作方法のマニュアルや動画、対象車種まで載っていた

 LXを含むレクサスの盗難手口とし日本や海外(カナダやロシアなど)で急増しているコードグラバーとは本来、スマートキーを紛失した際にディーラーなどで再作製する際に使う方法である。

 これを悪用し、オーナーがスマートキーを操作するタイミングを狙ってスマートキーから発生する電波を受信し、特殊な専用機械でIDコードを読み取る。そしてスマートキーそのものを複製してしまうのだ。最新の機械では1km以上離れた場所からでもIDコードを読み込める機能があるというから恐ろしい。

 「コードグラバー」をはじめ、CANインベーダーなど最新の盗難手口に精通するカーセキュリティプロショップFIVE WIRE(大阪府豊中市)代表の竹島氏に現状を聞いた。

 「コードグラバーが使えるのは狙ったクルマのオーナーがスマートキーを使ってドア解錠などの操作を行うタイミングに限られるため、成功するにはいくつかの条件が必要です。

 しかし、コードを読み取って完璧に複製するため、キー登録さえしてしまえば持ち主がいなくてもいつでも安全に盗めるのが窃盗犯にとっての利点でしょう。

 また、リレーアタックは自走で盗んだあと一度エンジンを切るともう始動できません。コンピューターを入れ替えるなどの手間が必要です。しかし、コードグラバーなら紐づけされたキー(複製)を持っているのでそのままばらさずに海外に売却できます」。

 竹島氏の話によると、関西方面ではとくにレクサスをばらさずにそのままの形で日本海側の港から海外に密輸されるパターンが多いという。

 また、LXをはじめとしたレクサスがコードグラバーで盗まれる最大の理由について、衝撃的な事実を教えてくれた。

 「コードグラバーは、キーを紛失したときなど応急用の機能を悪用する手口ですが、その機能を使いやすく、コードグラバーがやりやすい(つまりはセキュリティが緩い)のが主にトヨタ/レクサスです。

 そして、トヨタ/レクサスの盗難が多いのはセキュリティ性能が低いという理由のほかに、何よりも世界中で高く売れるからなんです。

 盗みやすくて世界中で高いニーズがある……、だからこそ盗まれているんだと思います。指紋認証などのセキュリティシステムを導入しても、純正である以上はコストや利便性のニーズに縛られます。窃盗のプロにしてみれば突破は不可能ではありませんので、盗まれやすいという状況は変わらないと思います。」

 盗みやすくて高く売れるのであれば窃盗団にとってはとてもおいしい獲物になる。LXやランドクルーザーのオーナーはどうやって愛車を守ればいいのだろうか。

次ページは : ■新型ランクル300のオーナーが続々とセキュリティショップを訪れている

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

マツダ6、実は水面下で開発が続いていた!? 注目新車情報、グッズが当たるアンケートも展開「ベストカー4月26日号」

マツダ6、実は水面下で開発が続いていた!? 注目新車情報、グッズが当たるアンケートも展開「ベストカー4月26日号」

終売が報じられたマツダ6はこのまま終わるのか? 否!! 次期型は和製BMW3シリーズといえるような魅力度を増して帰ってくる!? 注目情報マシマシなベストカー4月26日号、発売中!