■レヴォーグSTIスポーツでZFダンパーを体験
レヴォーグSTIスポーツに採用される「CDCevoダンパー」の構造は、通常のダンパーにバルブ制御用のアクチュエーターとGセンサーを装備する。ダンパー内部には、コンベンショナルなダンパー同様にオイルが注入されており、バルブの開閉動作により、オイルの流速をコントロールし、減衰力を変化させている。
車両側には6軸のスラストセンサーを備えたECUを装備しており、ECU側でバネ上の車体の動きを、ダンパーのGセンサーからバネ下の動きをそれぞれ収集。
さらに車両側からも、CANシステムを通じて、車速やステアリング角度などの情報を得ることで、1秒間に100回もの演算を行い、車両の安定を保つために、4輪独自に減衰力を変化させる。もちろん、作動は電気となるため、電動車時代に向けて、電力消費量の削減も考慮した開発を行っているそうだ。
クローズドコースでの試乗では、CDCダンパーの性能を理解するために、レヴォーグSTIスポーツを使い、ZFが独自の制御を加えた車両が用意された。
特別な制御の内容は、ダンパーが最もソフトな状態「コンフォートプラス」と最もハードな状態となる「スポーツプラス」モードの2種類だ。これは最適化されたレヴォーグSTIスポーツのセッティングがベストだが、本来のダンパーの性能を理解するために、極端なダンパー特性にされている。
まずは、制御の重要性を知るべく、ダンパー設定を固定したセッティングで走りを体験。ソフトな「コンフォートプラス」は、まるで絨毯のような柔らかさだが、スラロームでは大きくローリングをし、コーナリングでは外に膨らみやすくなる。ブレーキングではノーズダイブも発生。
極端な言い方をすれば、大昔の国産高級車のような乗り味だ。一方で、ハードな「スポーツプラス」では、スラロームやコーナーでは機敏な動きを見せるが、ダンパーが、あまり衝撃を吸収しないため、ドタバタした動きとなる。またコーナリングで限界を超えると、不安定な動きにも繋がる。
まるで足回りを固めることだけを良しとした昔の改造車のようだ。もっとも運動性能の高いレヴォーグだけに、違和感ある動きでもコントロールはできるが、いずれも気持ちよい走りとはかけ離れていた。
そこにバルブ制御が加わるとどうなるか。クルマの姿勢は恐ろしく安定する。
ダンパーの減衰力が異なるので進入スピードには差が出るが、コーナリング中やブレーキング時の姿勢は、「コンフォートプラス」も「スポーツプラス」のいずれもタイヤの接地が安定しているので、ステアリングやアクセル操作も最適な部分を感じ取りながらコントロールできるので、運転もし易い。
この柔軟な対応ができるから、好みに合わせてモードを変えて運転を楽しむことができる。つまり、レヴォーグSTIスポーツのキャラ変も、このようなシステムがあってこそ。
もちろん、CDCダンパーのメリットは、乗り心地や走りだけではない。例えば、ラゲッジスペースに重量物を積んで走る際の路面の凹凸も綺麗にいなしてくれる。
コンベンショナルなダンパーだと、減衰力は伸びも縮みも、減衰力の曲線に合わせた動きしかできないので、瞬時に状況によっては後輪の触れにも繋がる。つまり如何なる積載状況でも、車両姿勢を一定に保つこともできるのも強みなのだ。
最後に、郊外のワインディングを含めた一般道路を走らせてもらったが、ソフトでもハードでも違和感がない走りが行えた。
特にスポーティなレヴォーグのキャラクターとのマッチングは、「スポーツプラス」が良く、改めてレヴォーグの素性の高さも実感できた。ダンパーの細やかな制御の恩恵で、走りに違和感は全くないので、レヴォーグにもダンパーのみの調整機構があっても面白いだろう。
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