全店全車種取扱で大苦悩!? 聖域改革によるトヨタ販売会社の悲鳴と歓喜

■ラインナップ改善で販売力は圧倒的に向上

 商品ラインナップが分かりやすくなったことで、トヨタの販売力は圧倒的に向上した。各チャネルの販売現場は、これまで売ることを許されなかったクルマを販売できるようになり、管理顧客への提案力が大きく向上している。特に若手登用に積極的だった販社は実績が良い。変化が多く難しさが出る状況で、若年層がもつ適応能力の高さには頭が下がる。

 しかし、量販に軸足を置くと「質」が落ちやすくなる。生産・販売・購入・維持、どこをとっても質が下がる可能性があり、今後も数年間は、トヨタのブランド力を試される期間となるだろう。

 また、利益追求・効率化の一方で、地方の販社が考えなければならないことの一つに、どこの販売網を縮小するのかという問題がある。

 市場規模に対して、膨らみすぎた販売店の淘汰は既にスタートしているが、その割を食うのは、いつだって弱者だ。クルマの必要な地方から販売店が次々に消える現実を、想像できている人はまだ少ない。

 競争が激しくなればなるほど、小規模都市や過疎地域などのお店は採算が合わなくなる。採算がとれるお店は、人口の多い地域に集中してしまい、不採算店舗は縮小だ。今後は、地域に一つしかなかった販売店を失うユーザーが、数多く出てくるだろう。

 クルマを生活必需品として使う地域から、ディーラーがなくなるのは、CS(顧客満足)の意味でもCSR(企業の社会的責任)の面でも大きな問題となるのではなかろうか。

 インフラ的な側面も持ち合わせるクルマが、利潤追求だけに動くべきなのか、特に地方の販社はその在り方が問われることにもなる。量と質を双方にカバーし、新しいビジネスモデルをトヨタ販社が作り出せるのか。失敗の出来ない決断の時期は、刻一刻と迫っている。

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