■劇的進化を遂げたエボIV
95年10月のランサーのフルモデルチェンジを受け、翌96年8月にエボIV発売。4G63はエンジンの搭載位置を左右逆転(ミッションを新設計しカウンターシャフトが廃止になったため)。
そしてこのエンジンで280ps/6500rpm、36.0kgm/3000rpmを達成。エボIIIで行った圧縮比アップの対策を含め大幅な手直しが行われた。
圧縮比を9.0から8.8に変更し、バルブタイミングも変更(オーバーラップ増)。ガスケットをカーボンからメタルに変更。鍛造ピストンを採用(スカート部を肉薄化して軽量化)。強化コンロッドの採用。ツインスクロールターボを採用するとともに、排気マニホールドからタービンホイールまでを完全デュアル化して排気干渉を低減など多岐にわたる。
エンジンの吹き上がりの抜けが良くなりクリアなパワー感になった。10馬力のパワーアップもさることながら、31.5→36.0kgmの大幅なトルクアップに驚いた。鋭い吹き上がりと迫力の加速性能が印象的だった。
操縦性に関しては初採用のAYCの出来がいまひとつ。それが影響しているのかリヤ回りの重さ感や鈍さが気になった。
98年1月エボV発表。4G63はエボIVで大幅な手直しを行ったためエボVでの変更は少なめ。ただしツインスクロールターボのノズル面積の拡大によって最大トルクが36.0kgmから38.0kgmへとさらに向上している。
AYCの熟成が急速に進み、恐ろしくよく曲がるエボが完成した。
エボVIは99年1月発表。エンジンスペックには変更がないが主に冷却性能の向上が図られた。
オイルジェットクーリングチャンネル付きピストンが採用されるほか、冷却水レイアウトの変更やオイルクーラーの大型化、ナンバープレートのオフセット配置など。またRSにチタンアルミ合金タービン(TD06HRA16G-10.5T)を採用した。
タービンブレードの慣性力が50%低減し、ターボの吸気口径を58mmφから60mmφに拡大することでレスポンスを向上している。
このチタンアルミ合金ターボの威力は絶大だった。ターボの効きだしが明確にわかるくらい素早く、ターボラグを意識しなくてもよいレベルまで熟成した。
操縦性の面ではフロントのロールセンターを30mm下げたことで、ストリートユースでは荷重移動がしやすくなったがスポーツドライブやモータースポーツユースではロールの増大がデメリットとなった。
■世代を経るごとに洗練されていくエボシリーズ
その足回りの問題を改良したのがエボVIトミー・マキネン仕様。ロールセンターを戻し、さらに車高を10mmダウンしターマック仕様が標準となった。
エンジン回りではGSRにチタンアルミ合金ターボが標準装備(RSはオプション)となった。こちらのターボはTD05HRA-15GK2-10.5Tで、エボVI RSのものと比べるとコンプレッサーホイール径が小径化したことと翼形状の変更によってハイレスポンス化している。
このほかターボコンプレッサーの改良によってGSRの最大トルクの発生回転数が3000rpmから2750rpmと低くなっている。
2001年1月フルモデルチェンジしたランサーセレスをベースにエボVIIが登場した。ターボをメタルターボのTD05HR-16G6-9.8Tに変更。吸気系の改良によって吸気抵抗20%低減。最大トルクは39.0kgm/3500rpmに向上。RSはチタンアルミ合金TD05HRA-16G6-9.8T。
エボVIIの剛性の高いボディに驚かされた。タイヤの様子やサスペンションの動きが逐一正確に伝わってくる。しかもACD、AYCによる4駆動制御機もはっきり感じることができた。あえて言えば、足回りが硬めでスイートスポットが狭い印象がある。
エボVIIIは、アルミ製鋳造ピストンと鍛造構成コンロッドを採用。信頼性を向上させている。また、過給特性の見直しによって最大トルク40.0kgmを実現。ターボはGSRがメタルターボのTD06HR-16G6-9.8T、RSにチタンアルミ合金のTD05HRA-16G6-9.8Tを装備(GSRはオプション)。
リヤ左右のトルク配分量を2倍にしたスーパーAYC (GSR)の採用によって、さらにぐいぐい曲がるようになった。このクルマにアンダーステアはあるのか? と思えるくらい曲がりやすかった。エンジンはいよいよパワー感、トルク感が骨太な印象になった。
2004年、エボVIII MRはターボをTD05HR-16G6-10.5Tに変更したことで最大トルク40.8kgmを達成。
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