新車の車両本体価格800万円であるはずのトヨタ ランドクルーザー GR SPORTディーゼルが1580万円で販売され、新車価格300万円程度だったはずのホンダ S660モデューロXバージョンZの中古車価格が、直近では500万円近くになっている。
なぜこんなにも高いのか? 誰が利益を得ているのか? そして我々は、それらの人気モデルに今すぐ乗りたい場合、プレミアム価格を甘んじて受け入れるほかないのだろうか?
直近の事情について考察してみた。
文/玉川ニコ
写真/ベストカーWEB編集部
■誰が値段を釣り上げているのか
まずは冒頭に出てきたトヨタ ランドクルーザー GR SPORTについて。
ご承知のとおりランドクルーザー300の「GR SPORT」は、ダカールラリーに参戦するドライバーの意見をフィードバックしたという、ランドクルーザー300の高性能モデル。
電子制御でスタビライザーの利きを変化させ、市街地での走行安定性と悪路走破性を同時に高める「E-KDSS」や、それに合わせた専用チューニングのAVS(電子制御サスペンション)、フロント/リアの2つの電動デフロックなどを標準装備。さらに内外装デザインも他グレードとの差異化が図られ、かなりカッコいい仕上がりになっている。
パワーユニットは最高出力415psの3.5L V6ガソリンツインターボと、同309psの3.3L V6ディーゼルツインターボの2種類。トランスミッションはいずれもトルコン式10段ATで、本来の車両本体価格はガソリン車が770万円で、ディーゼル車が800万円である。
だがそれが今、冒頭で申し上げたとおり「1600万円近く」のプライスで販売されているのだ。
4年待ちといわれている超人気車ゆえ、多少の「即納プレミアム」が付くのはやむなしと思うわけだが、さすがに800万円の車を約1600万円で売るのは高すぎるのでは? と思うのは筆者だけではあるまい。
2022年4月1日現在、中古車販売店で(やたらと高い価格にて)売られているトヨタ ランドクルーザー GR SPORTの詳細は下記のとおりである。
・1498万円(走行1.0万kmのディーゼル車)
・1580万円(走行90kmのディーゼル車)
・1648万円(走行0.3万kmのディーゼル車)
・ASK(走行0.8万kmのディーゼル車)
「ASK」となっている0.8万kmの物件は、走行1.0万kmの物件が1490万円であることから考えると、おおむね1500万円前後だろうか。わからないが、「800万円」という本体の新車価格から考えるとちょっと高すぎというか、暴利を貪りすぎだと言わざるを得ない。
とはいえここで注意したいのは、「必ずしもその物件を売っている中古車販売店が暴利を貪っているとは限らない」ということだ。
例えば走行90kmで1580万円という物件の場合、その販売店が正規の価格である800万円で仕入れた個体にちゃっかり1580万円の値札を付け、莫大な粗利を得ている可能性もある。
だが逆に、そのお店も転売ヤーに1500万円ぐらいの大金を払ってなんとか大人気の未使用車を仕入れ、そこに80万円だけ利益を乗っけて販売しているという可能性もある。つまり誰が“犯人”であるかは、外から見ている我々にはわからないのだ。
だがどこかに憎き犯人=転売ヤーがいることは間違いないわけで、そいつの藁人形に対して心の中で五寸釘を打ち込みながら、ランドクルーザー GR SPORTの今後の転売価格を予想してみると……「まぁ下がらないでしょう」というのが結論となってしまう。
ロシアによるウクライナ侵攻の影響で予約をキャンセルする転売ヤーも増え、それによってランクル300の納期が大幅に早まれば、現在の過剰な超絶プレミアム価格は解消されていく。
だがそれと同時に、コロナ禍に伴う半導体の供給不足やサプライチェーンの壊滅といったクリティカルな問題は、早々には解決されないはず。それゆえ今後も、ごく一部の憎き転売ヤーが市場に転売するランクル300には、市場原理の必然として「1500万円ぐらい」のプライスボードが付くと予想されるのだ。
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