■「利用すべき人たち」が使いにくい現状
ここまで法律上の細かい状況を説明してきたが、優先駐車区画の不正利用については「罰則を設けるべき」という意見もあるだろうが、事は簡単に済まされない。
使用できる方の範囲が定まらなければ、不正利用そのものを定義できず、取り締まりや罰則規定を設けることなどは遠い先の話になってしまう。むろん、優先駐車施設を利用したい人々が、身体的あるいは社会的にどのような状況にあるのか、公的に判断・認証されるという手続きが必要になる。
前提として、車いすの使用者が円滑に利用することができる駐車施設について、設置が法律の上で義務づけられているのは、官公庁など、公共施設や立体駐車場、機械式駐車場、高速道路のパーキング/サービス・エリアの駐車場、平面有料駐車場、都市公園の公園施設である駐車場などとなっている。
問題の利用者の範囲については、高齢者、障害者(身体障害者・知的障害者・精神障害者・発達障害者を含む、すべての障害者)、妊婦、けが人などの移動や施設利用の利便性や安全性の向上を促進するため、公共交通機関、建築物、公共施設などのバリアフリー化を推進することが謳われており、単に「車いす使用者のため」の駐車施設という範疇に収まるものではないことは意外に知られていないのではないか。
国土交通省では「利用者対象者の検討」として、地方公共団体が定める障害の種類や等級別、要介護度等の区分などによる利用者の対象範囲について、対象者の想定人数や駐車場の整備の実情も勘案して「十分に検討することが必要」としている。
■有効な優先駐車スペースを確保するために
自治体に望まれる優先駐車区画のハード面での取り組みとしては、幅が350cm以上を設定、区画後部に幅120cm以上の通路を設けて必要なスペースを確保するとされている。
さらに障害者や高齢者などの間でも使いやすくする工夫として、「車いす使用者のための幅の広い駐車スペース」にプラスして、軽度障害者や高齢者用に、250cmの通常の区画幅で施設出入口に近い駐車スペースを設ける「ダブルスペース」の導入を検討することが有効としている。
法律のうえで、国、施設管理者、国民、それぞれの責務として挙げられているのは、国(地方自治体)は「具体的なバリアフリー施策について、高齢者、障害者、地方公共団体、施設管理者など関係者の参加の下で検証し、その結果に基づいて新たな施策や措置を講ずるよう努める」こととされている。
すなわち、単に駐車施設に関する基準を設けるという取り組みだけでは済まされないことを国は認識しているということだ。
施設管理者については、障害者の移動等円滑化のために必要な措置を講ずるように、国民については、障害者等の移動及び施設の利用を確保するため協力に努めるとしている。
前者には、テレビカメラや認証確認用ゲートを設ける例があるものの、果たして「努める」という表現がどのようなレベルなのか、いまひとつ判然としていない。
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