■有効に思える「パーキング・パーミット制度」
わずかな光明といえるのが、バリアフリー新法の施行によって地方自治体が生み出した、「パーキング・パーミット制度」だ。施設管理者の協力のもと、当該施設の車椅子使用者用駐車施設などについて、条件に該当する利用対象者が共通に使用できる利用証を交付するというシステムだ。
ただし、呼び名も地方公共団体により「おもいやり駐車場制度」や「障害者用駐車区画利用証制度」などと変わることを見てもわかるように、利用対象者の範囲は地方公共団体ごとに設定されていて一律ではないことから、いずれは国土交通省や厚生労働省との全般的なすりあわせが必要になるはず。
ともかく国の省庁や地方自治体、施設管理者、施設使用者など、全体を統括する制度システムの必要性がようやく議論され始めたという段階でしかない。
■優先駐車区画の不正利用に対する罰則規定の難しさ
繰り返しになるが、改正バリアフリー法となっても、国、施設管理者、国民の責務とされているにもかかわらず、どのような方が車椅子使用者用駐車施設を使えるのか未だに不明確であることが、不正利用が横行してしまう現状の根底にある
優先駐車区画を適所に設けるという取り組みが難しい施策であることは認めるとしても、現状では課題の中間整理として「適正利用のキャンペーン」レベルでしかないのは残念だ。マナーの問題であるのは確かだが、国民の自主努力に頼るばかりでは、不正利用がなくならない状況は改善しないだろう。
それでは不正利用を防ぐために、罰則規定を設定する手法は有効だろうか。海外では罰金制度が設けられているのは「マナーや啓発活動では限界がある」とした見識があるからだ。障害者用の駐車利用証カードの配布が実施されたうえで、健常者の使用などの取り締まりが実施されている。
日本で罰則などに関して政府により法制化された場合には、制度全体を統括するのは総務省、具体的規定を定めるのは厚生労働省、これを実施するのが地方公共団体。さらに罰則規定が導入されれば、これに基づいて取り締まりを管轄するのは警察庁という、複雑極まる制度を構築することになる可能性が高い。
そんな「縦割り行政化」を打破したうえで、優先駐車区画を使いたい人が問題なく利用できるように、「不正利用はNGである」という当たり前のことが当たり前でない現実を変えていくためには、なにより政府による「周知が必要」などといった指針レベルから脱して、具体的な施策を提示してもらいたい。
■国際シンボルマークの曖昧さ
ピクトグラムは東京オリンピック&パラリンピックでも注目された、優先駐車区画のピクトグラムはさすがに一般的に周知が広まっているように思う。
障害のある人々が利用できる建築物や公共輸送機関であることを示す世界共通のマークであり、車いす利用者を想像させるものだ。ただし、バリアフリー新法などに基づき使用されているが、駐車禁止を免れる、または車いす使用者用駐車施設を優先的に利用できることなどの証明にはならないことをどれだけの人が認識しているだろうか。
たとえば、国際シンボルマーク(車椅子に乗っている人をイメージさせる)でさえ、健常者の利用を禁止するといった強いメッセージになり得ておらず、身体障害者用駐車場を利用できる者を「歩行困難な者」として捉えがちになってしまう。
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