定期的なタイミングでやってくる愛車の車検。「次の車検はいつだったかな」と、フロントガラスの車検ステッカーを覗き込んだら、既に期日が過ぎていたという経験をした方もいるだろう。
本稿では、元ディーラー営業マンの筆者が経験した、車検切れエピソードも踏まえながら、うっかりで起きた車検切れへの対処方法をお伝えする。
文/佐々木 亘、写真/AdobeStock(トップ写真=buritora@AdobeStock)
■車検切れ状態の走行は重罰が下る
勘違いが多いから、まず説明しておこう。クルマの車検が切れただけでは、罪に問われることは無い。うっかり車検切れを起こしたところで、所有者に対するお咎めはないのである。
では、車検切れで何をすると罪になるのか。それは、「公道を走行する」ことだ。
車検切れのクルマ(無車検車)での運行を行った場合、刑事罰として6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(道路運送車両法第58条1項、108条)が科される。自賠責保険が切れている無保険車の運行では、1年以下の懲役または50万円以下の罰金(自動車損害賠償保障法第5条、86条の3)が科されるのだ。
さらに、行政罰として30日間の免許停止処分が課され、違反点数は6点となる。
車検切れ状態での公道走行は、うっかりでは済まされないほどの重い刑事罰と行政罰が下ることを知っていて欲しい。
■事故で保険が使えない! 車検切れでの走行は絶対ダメ
車検が切れた状態=自賠責保険が切れた状態でもあるのが一般的だ。場合によっては車検期間よりも1か月多く自賠責保険の保険期間が設定されていることがあるが、両者は基本的に同時期に切れるものと思っていたほうが良い。
したがって、車検切れのクルマは無保険状態のクルマでもある。強制保険が切れた状態で走るということは、自分にも周囲にも超危険な鉄の塊が動いていると考えなければならない。
では任意保険はどうか。対応は保険会社によってバラバラだ。この際、車検切れのクルマについて、保険金を支払わないと約款に書いてあれば、契約期間内であっても任意保険は意味を持たない。
難しい判断となるのは「重大な過失」で保険金を支払わないという規定がある場合だ。車検が無い状態で、クルマを公道で使用したことが重大な過失に当たるのかどうかは、保険会社の判断による。
無車検=重大な過失だから、保険金は支払わないと公言する会社もあれば、相手方への補償だけは行う(対物・対人補償)とする会社もあった。実務としては、ドライバーや身内への補償(人身傷害保険)と、車両保険だけは支払いを拒否するという運用をする保険会社が多いようだ。
無車検状態では、事故の際、相手方も自分自身も守ってくれる「保険」も使用できなくなる可能性があるということを覚えておいてもらいたい。
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