満充電ではエンジンを駆動させ、エンジンブレーキで制動力を確保
前述したように、ハイブリッドカーのBレンジの役目は、急な下り坂走行の安全を高めるために、制動力を強めること。通常のDレンジで下り坂を下りるよりも、フットブレーキの負担を減らすことができ、ブレーキパッドのフェード現象(熱による摩擦力の低下)のリスクを減らすことができるのです。さらにDレンジで走行するよりも、減速エネルギーの回生量を増やすことができるので、燃費の向上にもつながります。
ただし、満充電に近い状態からの下り坂や、長い下り坂では回生ブレーキによって、容易にバッテリーが満充電になります。過充電はバッテリーにとっては致命的な問題を引き起こすので、満充電になった時点で減速回生はできなくなります。そのため、Bレンジではエンジンを駆動(燃料カットで空回り)させて、エンジンブレーキで制動力を強化する方法を取っています。こうなると、燃費向上は期待できませんが、何よりも安全が優先されます。
まとめるとBレンジは、急な長い下り坂で、強い制動力を発揮。これにより、フットブレーキの負担を減らしつつ、減速再生を積極的に利用して燃費を向上させます。ただし、満充電になって回生ブレーキが利用できなくなったときには、エンジンを駆動させて制動力を確保する走行モードなのです。
(※筆者注/多くのメーカーのハイブリッド車で、このような制御となっていますが、すべてのメーカーが同様の制御ではありません。例えばトヨタプリウスの場合、下り坂でBレンジを使用した場合、バッテリーが満充電となるとエンジンを回すのに燃料を消費する制御としているようです。2022.6.16 22:00)
一般走行でもアリだが、大きな燃費改善は期待できない
回生ブレーキを強めて燃費が良くなるなら、通常走行の減速走行中にBレンジを多用して、燃費を向上することは可能でしょうか。
理屈上は、回生量が増えるので燃費の向上は可能です。ある程度強めの減速時に、DからBレンジにシフトして、フットブレーキで調整すれば良いのです。もともとエンジン車でシフトダウンを多用していたドライバーなら、操作は問題ないでしょう。ただし、条件にもよりますが大きな燃費改善効果は期待できません。そもそも、Dレンジでも極力回生ブレーキを使うように設定されているからです。
比較的起伏のある道路を走行する場合、チャレンジする価値はあると思います。ただし、まめでない人は、面倒臭さが先に立って、ストレスの原因になったり、車間距離がうまく取れずに迷惑運転のもとになるので、お勧めできませんね。
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ハイブリッドのBレンジは、下り坂では使わない手はありません。しかし、回生ブレーキを多用することばかりに集中すると、フットブレーキがおろそかになり、非常に危険。回生ブレーキは、あくまでフットブレーキの補完であると考えておくのが、安全だと思います。
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