果たしてどっちが正解なの? オールシーズンタイヤで得する人、損する人

■タイヤにとって世界で最も過酷な環境にある日本の冬

 これに対して冬用タイヤをウインタータイヤと呼ぶ。日本ではスタッドレスタイヤがよく知られているが、ウインタータイヤの1カテゴリーで、かつて売られていたスパイクタイヤに代って登場したタイヤだ。1980年代にスパイクタイヤの粉塵問題でスパイクタイヤの製造と使用が禁止され、これに代わって作られたのがスパイク(=スタッド)を持たないスタッドレスタイヤだった。

 なぜ日本でスタッドレスタイヤが進化したのかというと、日本の冬はタイヤにとって世界で最も過酷だから。気温が低いほうが厳しく思えるが、タイヤにとっては氷に水分がなければグリップはそれなりに発揮できる。

日本の冬の峠道は、圧雪、わだち、アイスバーン、ぬかるみとその日の天候と時間により様々に変化する(naka@AdobeStock)
日本の冬の峠道は、圧雪、わだち、アイスバーン、ぬかるみとその日の天候と時間により様々に変化する(naka@AdobeStock)

 問題は氷に水幕が張った状態で、冷凍庫から出したばかりの氷は指に張り付くのに水につけるといきなりつかみづらくなる、まさにあの状態だ。

 日本の冬は0度付近の状態にあることが多く、特に日中は氷が解けて滑りやすい路面が多く出現する。そのため、かつては氷のグリップに優れたスパイクタイヤが多く使われていたのだが、使用が禁止されたことで、それに代わるタイヤとしてスタッドレスタイヤが作られるようになり、いまだに進化しながら性能が高められている。

■雪が降らない地域でもスタッドレスタイヤは必要か?

 ところで、スパイクタイヤはなぜ氷の路面でもグリップするのか。それはスタッドレスタイヤに使われているゴム(トレッドゴム)が低温でも柔軟性を失わず、氷の路面をとらえてグリップしてくれるから。

 もちろん、トレッドデザインやサイプ(極細溝)などの効果も少なからずあるのだが、大雑把に言うと、氷の路面はゴムの性能がグリップ性能に大きく影響し、雪の路面はトレッドデザインが大きな効果を発揮する。

 だから理想的には、夏はサマータイヤ、冬はスタッドレスタイヤがいいと思う。ただ、非降雪地域に住んでいて、冬季も雪のあるところに行かない人であれば、あえて高いお金を払ってスタッドレスタイヤを履くのはもったいない、と考える人も少なくないと思う。

 そこで注目を集めているのがオールシーズンタイヤ。オールシーズンタイヤを装着すればこれ1セットで1年をカバーできるからだ。

■オールシーズンタイヤはスノーフレークマークが付くと冬用タイヤと認められる

オールシーズンタイヤの証にはM+S(マッド&スノー)マークが表記されている。しかし冬用タイヤと認定されるには「スノーフレークマーク」が刻印されている必要がある(TOPIC@AdobeStock)
オールシーズンタイヤの証にはM+S(マッド&スノー)マークが表記されている。しかし冬用タイヤと認定されるには「スノーフレークマーク」が刻印されている必要がある(TOPIC@AdobeStock)

 その火付け役はグッドイヤーの「ベクター4シーズン」というオールシーズンタイヤ。アメリカでは中部から北部にかけてはオールシーズンタイヤが標準装着されるケースが多いのだが、これまでは性能的にはM+S(性能基準はありません)レベルだった。

 ベクター4シーズンはウインタータイヤとして厳しい基準のある『スリーピークマウンテンスノーフレークマーク』(通称スノーフレークマーク)を取得し、大幅にウインター性能を引き上げ、また欧州でもウインタータイヤとしての使用が認められたことで注目を集めた。

 特にドイツでは冬季はウインタータイヤを装着することが法律で定められたことから、通年装着できしかも冬用タイヤとしても認められるオールシーズンタイヤの需要が一気に高まった。

 その後、多くのメーカーがスノーフレークマーク付きのオールシーズンタイヤを開発し、市場に参入してきた。

次ページは : ■オールシーズンタイヤってどんなタイヤ?

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