■忘れられがちなブレーキの「エア抜き」
ブレーキのメンテナンスについて加えておきたいのが、「エア抜き」だ。あまり採り上げられない項目かもしれないが、心に留めておきたい。
エア抜きとは、ブレーキ部分(主に油圧系統)に発生した気泡を抜くこと。ブレーキの効きが悪い、あるいはブレーキペダルを踏む際に違和感があると感じたら、ブレーキ部分に気泡が発生している可能性がある。
ブレーキの油圧系統内に気泡が生じると、ブレーキペダルを踏んで油圧をかけても気泡を圧縮するために使われるため、ブレーキの効きが悪くなる症状が発生する。気泡が発生するのはブレーキフルードであり、ブレーキの効きが鈍くなったと感じたら、ブレーキフルードの交換を勧めたい。
ただし、交換の際に注意してほしいのは、調整の前後でブレーキングの際の踏力やフィールがどう変わったのかについて慎重にチェックしてほしいということ。
安全面を考えれば、基本的にディーラーや整備工場のスタッフに依頼してほしいが、踏み応えというのはあくまで感覚的なものだから説明するのが難しいからだ。さらにいえば、ブレーキフルードを交換しても「こんなものかなあ」と変化が感じられないこともあるからだ。
ブレーキフルードの交換時期は、2~4年が交換目安となっているので、車検の際に交換することを目安にしてほしい。むろん急激にブレーキフィールに変化があれば、原因として「エアがかんでいる」ことを疑ってみることに意味はあるはずだ。
■停まったままでの据え切りはいいわけない 労わることが必要だ
切り返しが必要な狭い路地を抜けるような、日常の場面で据え切りをしなければならないケースは頻繁に出くわすわけではない。けれども、時間に追われていたりすると、ついつい荒っぽいステアリング操作を行ってしまうというのは心当たりがあるかもしれない。
力任せに据え切りしてしまい、ステアリングに負荷をかけ続けるというのは、機械モノにすべき行為ではないことは想像がつくはず。ステアリングを作動させるギア機構は、直接的に接続するわけではないとしても、接続するステアリングのハブ周りやサスペンションアームに備わるラバー製ブッシュなどにとって、余分な負荷となってトラブルの元になる可能性がある。
少々踏み込んでトラブルをもたらす要素を考えるために、パワーステアリング機構の仕組みをおさらいしておこう。
大まかにいって、現状のほとんどのステアリング形式はラック・ピニオン式(かつてのメルセデス・ベンツはボール循環式を採用していた)が採用され、もはや現代のクルマには不可欠といえるパワーアシスト機能(いわゆるパワステ)は油圧式と電動式、これらを組み合わせた電動油圧式の概ね3種類がある。
油圧式のアシスト機構は、エンジン回転をクランクシャフトからベルトを介してパワーステアリング用ポンプに伝える。ポンプ内のパワステフルード(オイル)が作り出す油圧トルクがステアリング・ギアボックスに伝わり、ステアリングの操舵力を補助する。
電動式パワーステアリングは、電気モーターを使用してステアリング操舵に必要なトルクを生み出す方式を採る。ステアリングを支えるコラムやステアリングが接続するステアリングラック、ピ二オンギアの作動などをモーターでアシストする方式がある。
モーターを利用した電子制御が可能なため、エンジンのパワーを利用しないこともって、燃費への影響も少ないなど、現在ではこの電動式が主流となった。自動車線維持/変更機能など将来の自動運転機構などの実現には、電動式パワステの機能は必須となっている。
油圧式パワステの弱点はいうまでもなく、油圧系からのオイル漏れだ。走行中ではほぼ作動状態にあるポンプ周りなどでは経年劣化は避けられない。オイル漏れが発生していても、急激に油圧、具体的にはステアリングのアシスト量が変化しないと認識しにくい場合もあるので、定期的なチェックが欠かせない。
据え切りのようなシステム全体に負荷をかけてしまうような操作は避けたほうがよい。これは油圧を介さない電動式(油圧式と組み合わせる場合もある)パワステにも当てはまり、メカニカルな作動のみでも気を遣って操作するに超したことはない。
油圧式パワステの異常の原因の多くは、パワステフルードの不足による異音や動作不良ということになる。適切な量までフルードを補充すればトラブルの症状は改善される。
それでも症状が収まらない場合には、ステアリングのジョイント部など、メカニカルな故障を考慮して、ディーラーや整備工場で詳細なチェックを受けるべきだ。ブレーキ周り同様に微細なトラブルであっても走行中に見舞われた場合には、トラブルシュートが間に合わず、大きな事故につながりかねないので、常日頃から注意しておこう。
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