■新世代へ受け継がれるファントムVIの雄姿
すっかり前置きが長くなってしまったがようやくロールスロイスの話に移る。エリザベス女王にとって先代の公用車であるロールスロイス ファントムVIステートリムジンだが、ものを大切にするイギリス王室、そして文化もあり、今日でもその存在感は揺るぐことがない。
ロールスロイスファントムVIステートリムジンは1977年にエリザベス女王即位25年を記念して、イギリス自動車製造販売者協会が献上したモデルだ。王室公用車特有のボルドーレッド(ロイヤルクラレット)と黒のバイトーンで塗られている。
また架装を担当するコーチビルダー「マリナーパークウォード」の施工によって、通常のファントムVIよりも高いルーフとパノラミックガラスが誂えられた。沿道から女王をはじめロイヤルファミリーのお姿が見えやすくなっているのも通常モデルとの大きな差異だ。
テレビを通じてファントムVIの姿はエリザベス女王と一緒に世界中に配信された。近年でいえば2011年にウィリアム王子(現:皇太子)とキャサリン・ミドルトンさん(現:皇太子妃)とのご成婚のシーンだ。
キャサリン妃が父親とウェストミンスター寺院に向かったのがまぎれもなくこのファントムVIだった。そしてエリザベス女王の国葬に際して、新国王に即位されたチャールズ国王が移動の際に乗られていたのも記憶に新しい。
エリザベス女王の70年を超える在位期間において、これほどまでに一緒に時間を過ごした公用車は数少ない。そしてロールスロイスの地位を世界的に高めた存在でもあったはずだ。またいつかイギリス王室の公用車としてロールスロイスが選ばれる日はくるのだろうか。
最後になるが現行のロールスロイスとベントレーはドイツ資本となってはいるものの、ビジネスとしては安定しており、もちろんイギリス国内でのクラフトマンシップも守っており、伝統と歴史をないがしろにしているわけではないことは補足しておこう。
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