もう「安物」なんて言えないぜ!!  最近「3気筒エンジン」が注目度急上昇のワケ

もう「安物」なんて言えないぜ!!  最近「3気筒エンジン」が注目度急上昇のワケ

 近年グイグイと注目度が上昇している3気筒エンジン。軽自動車やコンパクトカーのみならず、BMWの3シリーズのようにミドルクラスのセダンやステーションワゴンといったセグメントにも採用されている。

 それでも「え~、でも3気筒だよね……」とイマイチ納得できない方も多いのではないだろうか? 教えて!自動車評論家 鈴木直也さん!!

※本稿は2022年10月のものです
文/鈴木直也、ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年11月26日号

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■BMWが証明した3気筒エンジンの可能性

メカニズムのことならこの人! 自動車評論家 鈴木直也さんに答えていただいた
メカニズムのことならこの人! 自動車評論家 鈴木直也さんに答えていただいた

Q:改めて、今なぜ3気筒エンジンが見直されているのでしょうか?

A:3気筒エンジンを見直すきっかけとなったのが、BMWの1.5Lターボ。現行車だと横置きFF系プラットフォームに載っているけど、先代型3シリーズにもあったよね。あれがとてもよかった。

 アイドリング時のエンジンルームを見ると、エンジンはブルブル振動しているのに、室内ではほとんど振動を感じない。低速からしっかりとトルクが立ち上がるし、音もいわゆる3気筒っぽさがなく、安っぽくない。

 BMWが真剣に3気筒を作れば、こんなにちゃんとした3気筒エンジンが作れるんだ、ということだよね。

Q:なぜ、BMWは1.5Lを3気筒にしたのでしょう?

A:モジュラー設計の思想だよね。直3のB38A15A型エンジンはボアが82.0mm、ストロークが94.6mmのロングストロークで、今流の高効率エンジンのボア×ストローク比。

 1気筒当たりの排気量は499.3ccで、ガソリンエンジンではこのあたりの容積が低回転域のトルクの出方や燃焼効率などのバランスがいいとされている。このシリンダーで燃焼効率に優れた燃焼室形状などを緻密に設計したわけだ。

 で、3気筒だと1498ccとなるわけだよね。これに1気筒加えると総排気量1998ccとなり、さらに2気筒加えて直6にすると総排気量2997ccとなる。

 実際、BMWの直4、直6はこのモジュラー設計。それぞれボアピッチも共通で、シリンダーブロックの基本設計も共通化されている。部品も多くのものが共用できる。開発面でも生産効率でも効果的だよね。

 これらを踏まえてBMWは、1.5Lは3気筒でいこうと決断したんだろうね。作る以上は、エンジン屋BMWの名に恥じない、しっかりとした3気筒エンジンを作る。それをしっかりと実現したんだよ。

Q:ベンツの1.5Lターボは直4ですよね?

A:そこが面白いところ。ベンツには新開発した3Lの直6があるのだから、モジュラー設計とすれば3気筒の1.5Lができそうなんだけど、ベンツには3気筒エンジンはない。A180の1.3Lターボも直4。

 ベンツは3気筒の振動や音などの質感面を懸念して、採用に積極的ではないのだろうね。

Q:トヨタが1.5Lに新開発直列3気筒を投入していますが、このエンジンをどのように評価していますか?

A:この「ダイナミックフォース」シリーズのM15A系エンジンは「本気」の3気筒だよね。1L級の3気筒にありがちな軽自動車用3気筒のスケールアップ版ではない。

 これもBMWと同じくモジュラー設計思想なんだよね。ボア×ストロークが80.5×97.6mmで1気筒あたり496.5cc。3気筒で1490ccになるんだけど、これの4気筒版が総排気量1986ccのM20A型。ハリアーやRAV4、ノア/ヴォクシーの2Lだね。

 あれも乗ればわかるけど、メチャメチャいいエンジン。低中速域からシュッとトルクが立ち上がって、スムーズに吹け上がる。

ヤリスクロスのエンジンも、コンベンショナル、ハイブリッドともに直列3気筒の1.5Lを搭載する
ヤリスクロスのエンジンも、コンベンショナル、ハイブリッドともに直列3気筒の1.5Lを搭載する

 直3、1.5Lも‟ボロボロボロ”という3気筒特有の音は抑えられていて、振動だってほとんど感じない。コンベには振動を打ち消すためのバランサーシャフトが入っているんだけど、ハイブリッド用はナシなんだって。

 理由はアイドリングしないから。3気筒の振動が特に気になるのはアイドリング時なんだよね。THSだと動力分割機構を介してモーターと協調運転するでしょ? あれも3気筒特有の振動をうまく吸収しているんだろう。

 コンベの3気筒も気持ちいい。スムーズに吹け上がるし、トルク感がしっかり出ている。やはり1気筒あたり500cc程度あるとトルク感が違う。1.5Lで4気筒だと、1気筒あたり375ccだからね。

 しかも実走行燃費がいいってのがうれしい。このエンジンはトヨタが内燃機関の生き残りを真剣に考えて、真面目に開発したということがひしひしと伝わってくる。

Q:GRヤリスの1.6Lはなぜ3気筒なのでしょう?

A:G16E-GTSのボア×ストロークは87.5×89.7mmで、M15Aとは異なっているし、そもそもボアピッチも専用だし、ブロックだって専用。つまり、M15Aからのスケールアップではないんだよね。

 ではなぜあえて3気筒としたのか? 軽量でコンパクトなエンジンとしたかったことに加え、やはり低速からしっかりとトルクを出したかった、ということが大きな理由だと言うね。

Q:日産のe-POWER用エンジンはなぜ3気筒?

A:直接タイヤを駆動するわけではなく、発電機(モーター)を回すエンジンなので、振動の出にくい回転域を使うことができるし、そもそもアイドリングしないので3気筒のデメリットを感じにくいんだよね。

 e-POWERは4気筒横置きを積んでいるエンジンルームに、エンジン以外に発電用モーターやインバーターなどを搭載するから、なるべくエンジン本体は小さく、軽くしたい。そうなると3気筒がいい。

 エクストレイルの1.5L直3可変圧縮比ターボは素晴らしいね! コンロッドのリンク機構によって二次振動が抑えられているから、3気筒ながらもともと振動が少ない。エンジンの存在を絶妙に感じさせながら、モーター動力で力強く走る。あれは傑作!

Q:3気筒がいいのなら、2気筒はどうなんでしょう?

A:1970年代あたりの軽用エンジンは2気筒ばかりだったけれど、2スト2気筒はバランスがいいんだよね。4ストで直列レイアウトだと、2気筒は振動面でかなりキビシイ。

 フィアット500のツインエアは、まあ、フィアットという趣味性の高いクルマだから「味わい」としていいんだけど、あれが実用一点張りのコンパクトカーだったら、やっぱり厳しいでしょ。

 2011年の東京モーターショーでダイハツが新世代の省燃費エンジンとして2気筒のターボエンジンを展示していたけれど、結局実用化はされていない。ダイハツの技術陣に聞くと「音振動で市販車の品質には持っていけなかった」というから。やはり2気筒は実用的ではないと思うよ。


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