■自動車ディーラーが扱う、新車以外の商品は意外なほどに多い
基本的なクルマの整備はもちろん商品の一つだ。細かな消耗部品から、追加オプション、一般カー用品でも多く扱われるタイヤやナビ、ETCにドライブレコーダーなど、商品群は多岐にわたる。
また、ボディやシートのコーティング、エンジン・ガソリン添加剤や車内清掃・消臭・除菌など時代に合わせたサービスもラインナップしてきた。
一昔前のディーラーでは「それはカー用品店でやってください」と断っていたサービスが、今はディーラーではほとんど行える。ワンコイン、短時間で終えるサービスを数多くラインナップするお店もあり、店舗ごとの個性が見える部分でもあるのだ。
●意外と利益の少ないメンテナンスパック、利益の大きなボディコーティング
点検整備の中で、利益の核となるのが「車検」だ。車検をいかにして自分のお店で受けてもらえるようにするかが、ディーラーの利益を大きく左右する。
また、点検のためにユーザーが店舗へ来訪する時間は、営業活動を行うための重要な機会になる。この「機会」を作り出すためにも、管理車両の入庫促進活動は非常に重要な役割を果たすのだ。
そこで、多くのディーラーで販売しているのが「メンテナンスパック」と呼ばれる、前払い制の点検数回と消耗部品交換のセット販売。ディーラーで、最も売れているサービスの一つに挙げられる。
主流は、メンテナンスパックに車検時の整備費用までを含めて販売するというもの。すると、メンテナンスパック加入者は、加入店舗で車検を自然に受けるという流れが出来上がる。
いっぽうで、販売機会創出のため、利益をあまり生み出さないのもメンテナンスパックの特徴だ。来店時にメンテナンスパック+αの提案を行い、利益を積み上げていく。
利益率の高さ(原価率の低さ)で言えば、ボディコーティングが最たる例になると思う。契約時のプレゼントや無料サービスに選ばれることが多く、獲得した営業マンに支払われる報酬も比較的多い商品の一つだ。
■コロナ禍、盗難など時代を映し出す売れ筋の商品とは?
コロナ禍で爆発的に売り上げを伸ばしているのが、除菌・消臭系のケミカルと、清掃系のサービスだ。さらに窓を閉め切ってエアコンを作動させることが多くなり、エアコンの脱臭・清掃に対する注目度も高まった。高機能で割高な、高級エアコンフィルターを選ぶユーザーが増え、30分程度で行えるエバポレータークリーニングも、2020年以降に人気が高まった商品の一つだ。
そして、悲しいことだが、自動車パーツ盗難が増えている昨今、ホイールロックナットやナンバープレートのロックボルトといった、盗難対策用品の人気も高い。
いっぽうで、クルマ屋さんなのに人気の出ない、以外な商品もある。それはタイヤとドライブレコーダーだ。タイヤの不人気は、一昔前のディーラーでは割高というイメージが、現在も払拭しきれないのが理由だろう。取り扱いのラインナップも少なく、輸入タイヤなどを専門に扱うお店と比べると、価格の面では大きく劣ってしまう。
しかし、有名メーカーのタイヤに関しては、カー用品店と大差はない。ディーラーのタイヤが高いというのは、過去のイメージに過ぎないはずだ。
ドライブレコーダーは、取り付けにかかる時間がネックになっている。常に点検整備で一杯になっているディーラーのサービス工場で、ドライブレコーダーを購入当日に取り付けるのは至難の業だ。いっぽう、カー用品店などでは、当日取付をするのが当たり前。一刻も早く取り付けてほしいユーザーも心理を考えると、ドラレコがディーラーでは売れない理由も分かってくる。
新車の納期が延び続け、売れても納車できないという日々が続く自動車ディーラー。この危機的状況を支えているのが、中古車の販売とサービス部門の売り上げだ。
今後、新車売り上げに頼る自動車ディーラーは、経営そのものが成立しなくなる。バリューチェーンを意識し、付加価値をどう生かすかが、ディーラーが生き残るカギとなるだろう。
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