メンテナンスパックは、ディーラーで新車・中古車を購入するときや、車検を受ける際に加入を勧められる。現在加入して定期メンテナンスを受けているという方も多いのではないだろうか。
本稿では、メンテナンスパックが本当にお得なのかを考える。また、なぜディーラーがこれほどまでに強くメンテナンスパックを勧めるのか、その裏に隠された意味を解き明かしていこう。
文/佐々木亘
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ディーラーからカー用品店まで? 広がりを見せるメンテナンスパック
現在、日本で営業を行っているディーラーでは、導入していない会社を探す方が難しいほど普及したメンテナンスパック。そのお店で同じ内容の点検・整備・消耗部品交換を都度払いで行うよりも、メンテナンスパックに加入したほうが、2万円~3万円ほど整備代金が安く済むことが多い。
メンテナンスパックのセット内容は、車両状態に合わせた点検と、その時期に推奨される消耗部品の交換が組み合わされたものだ。
6・18(30)カ月目の各点検では、エンジンオイル交換とディーラー推奨の整備が行われる。12カ月・24カ月目の点検は法定点検となり、エンジンオイル交換に加えて、オイルフィルター・ワイパーゴム・エアコンフィルター等の消耗部品を交換することが多い(交換部品に関しては、各社のサービス内容によって異なる)。
メンテパックは、ディーラーのみならず、カー用品店やタイヤショップなどへも広がりを見せている。各分野の特色を出したサービス(ガラス撥水サービス、タイヤ交換サービス、アライメント点検サービス等)を加え、ディーラーよりも魅力ある商品になっているケースもあるだろう。
基本的にメンテナンスパックは前金制だ。申込時に、メンテナンスにかかる全費用を支払うため、実際にメンテナンスを行う際には、都度支払いをする必要がなくなる。
また、前払いで加入したメンテナンスパックを利用しなくなった(転居などで点検を受けられなくなった)場合は、返金対応をしてくれるディーラーも多い(カー用品店等のメンテナンスパックに関しては、使わなかった分を返金対応するケースは少ない)。クルマの点検サイクルをしっかりと作ることができ、費用の面でもメリットがある。整備はディーラーにお任せしたいというユーザーは、是非加入して欲しいサービスだ。
メンテナンスパックは、本当にお得なサービスなのか
前述のとおり、ディーラーで都度支払いをし、同じメンテナンス内容を受けるのならば、支払額が数万円安くなり、確実にお得になるのがメンテナンスパックだ。しかし、クルマの整備を行うのは、ディーラーだけではないところに注目しなければ、本当にお得かはわからない。
例えば「車検」を受けるとすれば、ユーザーの選択肢は、ディーラー、車検専門店、ガソリンスタンド、整備工場などさまざまだ。税金や印紙代などの法定費用は、各社で共通だが、整備料金については、設定額に幅がある。ガソリンスタンドや車検専門店の価格が安く、ディーラーは最も高いというのが通例だろう。その差は約2万円以上になることもある。
基本的にはクルマを買うか、車検を受けるか、どちらかの契約を行わなければ、加入できないのがメンテナンスパックだ。ディーラーでの整備料金をお得にすることはできるが、クルマの整備という観点だけで考えれば、さらに安く整備や部品交換を行う術は、いくらでもあるだろう。
ユーザー自らが点検時期を把握し、適切なタイミングで適切な部品交換を行える(お店へ依頼できる)というなら、ディーラーのメンテナンスパックは割高で不要なものとも考えられる。
現実として、自動車メンテナンスの最安値がメンテナンスパックかといわれれば、それはNOだ。カー用品店やガソリンスタンドなどでの都度払いの方が、確実に安い。しかし、ユーザーのお金、時間、手間などを総合的に考えると、メンテナンスパックへ加入するのは充分に価値のある事だと思う。車両管理の手間をどう見るかが、加入・非加入の分かれ道になるはずだ。