FCVの普及への壁は高い!! 水素の調達にどう動くべきなのか?

■FCVの問題点と水素ステーションの問題点

製油所や化学工場等で製造された水素をステーションに運んでくるオフサイト式でもガソリンスタンドの建設費の2倍がかかる
製油所や化学工場等で製造された水素をステーションに運んでくるオフサイト式でもガソリンスタンドの建設費の2倍がかかる

 FCVは燃料電池スタックにより空気中の酸素と水素を反応させて電気を取り出す。この変換効率はは今はまだ6割程度と、EVが車両内部で行なっている電流の変換効率と比べればまだまだ低い。

 水素ステーションがなかなか増えない以上、FCVは長い航続距離を確保しなければ実用性が乏しくなってしまう。しかし燃料電池スタックの効率アップやコストダウンも研究が進められている。トヨタMIRAIもモデルチェンジの度に燃料電池スタックは小型高効率化されていくだろう。

 そうなってくれば、現在のタンク容量のままでも航続距離はさらに伸び、ボディサイズの小さいFCVも実用化される目処がつくようになる。そうなれば水素ステーションを利用するユーザーは増えて採算性は改善されて、水素ステーションの建設スピードも向上することになるだろう。

 水素ステーションも拠点を増やすべく、経済産業省や水素関連企業は規制緩和を進めてきた。ここ3、4年で2割の建設コストを削減できたと言われている。

 それでも外部から水素を補充するオフサイト式でもガソリンスタンドの建設費の2倍にはなるので、急にガソリンスタンドの代わりに建設ラッシュになるようなことはありえない。そもそも敷地もガソリンスタンドより広い必要がある。

 けれども急速充電器すらなかなか増えない状況で、増えたとしても1台あたり30分は充電のために占領するとなれば、従来の使われ方で帰省や行楽時期の膨大なクルマを急速充電で全て支えることは無理だろう。だから、溜めておいた水素を充填するだけで済むFCVや水素エンジンにも必要性がある。

■水素生成の問題点に解決策はあるか

 現在、天然ガスから取り出している水素は、化石燃料利用とCO2排出の2点で環境に良いとは言えないのは前述の通り。そこで現在、様々な方法で水素を調達する手段が研究されている。

 最も現実的なのが、オーストラリアにある褐炭(燃料用には使えない低質な石炭)から水素を取り出し、それを水素運搬船で日本に輸入して利用しようというものだ。

 マイナス253度まで冷却して液化水素とすることで体積を凝縮させ、魔法瓶のような保温構造で2週間維持しつつ日本まで運搬することに成功している。 

 まだ規模の小さな実験船とはいえ、大型船でも同じ構造なら通用することは証明されたのだ。

 褐炭は他に利用価値の低いものなので、有効利用と言えなくもない。

 しかし海外からの輸入となり、さらに地球の資源を使い捨てにする、ということでは理想的とは言い難い。周囲を海に囲まれた日本としては、自給自足のエネルギーとして水素を利用するのが理想だ。

 太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる発電で水を電気分解して水素を取り出すのは、理想ではある。しかし電力自体を再生可能エネルギーで賄おうまかなおうとしている将来に、燃料まで生み出す余力が生じるのは、多分ずっと後のことだ。別の方法で水素を確保しなければならない時代は当分続くだろう。

 下水の浄化設備で発生するメタンガスから水素を取り出す、ということも実証実験ではすでに進められている。これは下水処理場で微細藻類を培養してバイオ燃料を作り出そうとするプロジェクトと被る部分があるので、どちらも普及すれば下水処理施設利用のエネルギーの取り合いになる可能性もある。

 どちらにせよ下水処理施設で作り出すエネルギーで現在のガソリン消費分は賄える計算だから、家庭消費のガスも含めて、下水処理場は今後注目のエネルギーエリアに成長しそうだ。

 これからの10年ほどで、エネルギー利用の環境や構成比率は大きく変わっていく。我々は時代の大きな転換期に居て、今までに作られたクルマ、EVやPHV、FCVまで様々なクルマから選んで、移動を楽しめる環境にある。未来に夢を膨らませながら、非常に恵まれた時代を悔いなく楽しもうではないか。

【画像ギャラリー】トヨタの水素社会へ向けての挑戦! AE86 H2コンセプトと現行型MIRAIをギャラリーで見る(11枚)画像ギャラリー

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