日産自動車出身で日本電産の社長を2022年9月に退任した関潤氏が、2023年2月1日付で台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が新規参入したEV事業の最高戦略責任者に就任した。関氏を直接取材したことも多い経済ジャーナリストの福田俊之氏が今後の関氏の戦略を俯瞰する。
文/福田俊之、写真/日産、ベストカー編集部
■元日産副COOで前日本電産社長の関氏が台湾へ!
3年ほど前、日産自動車の副COO(最高執行責任者)就任からわずか1ヵ月で、電気モーター大手の日本電産にCEO(最高経営責任者)含みで転身し、渡り鳥人生の達人として世間をあっと驚かせた関潤氏が、この2月に再びサプライズ転身を見せた。
米アップルのスマートフォン「アイフォン」の受託生産で名高い台湾の大手電子メーカー、 鴻海(ホンハイ)精密工業にスカウトされ、2023年2月1日付で電気自動車(EV)事業のCSO(最高戦略責任者)に就任したのだ。
鴻海はスマホ用部品の世界では不動の地位を占めているが、最大顧客であるアップルは自社の利益にとことんこだわる企業。そのスマホ事業にいつまでも依存していてはリスクがあるとの判断から、EVを第二の柱に育てようとしている。
同社が自動車分野で狙っているのは部品ではなく米テスラや中国BYDのような完成車だ。実際、プロジェクトはすでに大きく動いており、2022年10月には市販モデル第1号として7人乗りクロスオーバーSUV「Luxgen 7」を発表している。
■鴻海のEV事業には日産と日本電産とのつながりが
この鴻海のEV事業、実は日産自動車、日本電産と少なからず関わりがある。自動車分野に進出するにあたって鴻海がパートナーに選んだ台湾の自動車メーカー、裕隆汽車は1957年に日産と技術提携を結んだ企業で、今日においても日産とは協業関係にある。
また、鴻海が裕隆汽車と合弁で立ち上げたEV事業会社は2021年に日本電産と電動化技術の開発で協業の覚書を交わしている。その時の日本電産側のCEOはほかならぬ関氏だった。
2025年にEVの売上高1兆台湾ドル(4兆4000億円)、世界シェア5%を目指すという野心的な目標を打ち立てている鴻海の劉揚偉会長は経営危機に陥ったシャープを傘下に収めて、短期間で経営を立ち直らせたことで知られる剛腕経営者だ。
「日産、日本電産と深い関わりがあり、また少なからず遺恨もある関氏が日本電産を去ってから半年もしないうちにEVビジネスの実質的なトップに据えるというスピード感と大胆さにはあらためて驚かされました。自動車部品を手がけるウチにとっても大きな刺激になっています」
自動車部品大手、日立アステモの幹部は関氏の転身人事に関してこう語る。
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