■操縦性のアプローチも異なる
足回り系も、トルセンLSDと4WS、ダンパーインダンパーの4HCCを装備、装着するタイヤはブリヂストンのポテンザS001。
当然専用設計なのだが、あえてBSを選んだ理由はタイヤの接地面をあまり変形させたくないということなのではないかと思う。接地面形状をなるべく安定させた状態で4WSによって旋回性や安定性を高めるそんな味付けであるように感じた。
一方、シビックもハイブーストエンジンではあるが、過給圧はメガーヌより低めな印象。排気量を生かしてトルクバンドを広くしている。
とはいえ、シビックも野放図にパワーやトルクを発揮しているわけではなく、パワーコントロールに関しては先代モデルよりおとなしいと感じるほどスムーズなセッティングになっている。これはドライブモードをサーキットモードの+Rにしても同様。
もちろんレスポンスはよりシャープになるが、スロットルがガンガン開くというよりは、アクセル操作によりピタリとついてくる印象。だから、ちょっと攻めたコーナリングでアクセルコントロールがやりやすい。
サスペンションは可変ダンパー付きで、+Rにするとかなり引き締まったものとなるが、ダンパーの動き出しが滑らかで硬さを感じない。
LSDもヘリカルLSDが付き、トラクション性能を高めている。
興味深いのは、エンジンだけでなく足回りも先代シビックに比べ、ぐっとシビアさ、神経質さがなくなっていること。
先代タイプRはタックイン特性が比較的顕著で、サーキットだとアクセルのオンオフにも気を使うほどだったが、現行型はシビアさが薄れその分リアタイヤの懐が深く、リアタイヤを積極的に使って曲がっているような感覚がある。専用設計のミシュランパイロットスポーツ4Sとの相性もバッチリ。
印象としてボディ剛性がさらに高まっているのを実感できた。ボディが硬くサスペンションがきちんと仕事をしているのがよくわかる。先代タイプRと比べるとボディに構造用接着剤をより多くの箇所で使っており、結果としてボディ剛性が上がっているそうだが、これも大きく効いているのだろう。
どちらがいいかは甲乙つけがたい……というよりも、自分の好みや、どちらのメーカーの考え方に共感できるかで選んでいいと思う。むしろそうやって選ぶことで、速く走るために造られたシビックタイプR、メガーヌR.S.それぞれのエンジンの特性、シャシーセッティングが見えてくる。
こんなに深くエンジンとシャシーセッティングを連携させて作り込まれているクルマはちょっと見当たらないかもしれない。ライバルがいるからこそ進化した形と見ることができるだろう。
■GRカローラ vs ゴルフR
同じ300ps/40.0kgm級のパワー&トルクを発揮していても、FFと4WDでは見える風景がまったく違う。
FFは持てるパワーをいかにうまく引き出して路面に伝え、速く走るかというところに焦点が当てられていた。ところが4WDは300ps/40.0kgm級のパワーを全部引き出せるのが前提で、そのうえでいかにクルマをきれいに動かすかというのがテーマになっている。
GRカローラは、ラリーで活躍しているGRヤリスのパワーユニットとドライブトレーン系を使って作られたスポーツ4WDだ。
エンジンは1.6L3気筒ターボで304ps/37.7kgmを発揮。4WD方式はGR-FOURと呼ばれており、リアデフの前に配置された電子制御クラッチユニットの断続によって前後輪の駆動トルク配分を行うオンデマンド式に分類できる。
ただ、常時4輪が駆動しているフルタイム4WDで、基本駆動トルク配分は60:40、50:50、30:70となる。さらに30:70にセットしてトラックボタンを長押しすると、横滑り防止装置が解除される。
前後可変トルクスプリット4WDを採用することによって304ps/37.7kgmのパワー&トルクを余すことなく引き出せるように工夫しているのだ。
一般的な走行状態では60:40と前輪寄りに駆動トルクを分配して前輪主導で走らせ、スポーツモードではタイヤから曲がる力をより多く引き出したいので50:50としているのだ。
さらにスポーツドライブでは、より積極的に前輪の曲がる力を引き出すために30:70の駆動トルク配分を用意するというのがGRヤリスやGRカローラの前後可変トルクスプリットだ。
また、クルマの曲がり力をアシストし、またトラクション性能を高めるためにリアデフにはトルセンLSDが組み込まれている。
操縦性はアグレッシブに曲がる印象。特に30:70のトラックモードを試すと、明らかにフロントタイヤへの(駆動の)負担が少なく操舵の利きがよくなるのが感じられる。
リアデフにトルセンLSDが採用されていることもあって、パワーオンでぐいぐい曲がってくれる。フロントアウト側のタイヤの負担が少なく、駆動力と旋回性を上手く引き出している(オンロード)。
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