クルマの後方をモニターに映し出すバックカメラ&モニターは、クルマの後方死角をカバーしてくれる安全装置の最右翼といえる。後退時の事故防止に役立つ機能だが、今一度クルマの死角について確認しておきたい。
文/山口卓也、写真/トヨタ、写真AC
■クルマにはさまざまな構造的死角がある
「死角」とは、その角度からでは見えない地点や範囲のこと。クルマには構造的に多くの死角があり、ボディ形状によっても死角は異なる。改めてどんな部分が死角となるのか確認しておこう。
■前後左右ウィンドウより下の部分
フロント及びリアウィンドウより下の部分。特に、車高の高いバンタイプやトラックなどはその範囲も広くなる。
サイドウィンドウより下は、サイドミラーによって見える部分はあるが、映らない部分も多い。右ハンドル車では左側の死角範囲が広くなるので、左折時に自転車やオートバイなどを巻き込む事故を起こしてしまうこともある。
さらに、サイドミラーに映らない位置にいる斜め後ろのクルマに気づかず、車線変更時に接触する事故を起こすこともある。
■ピラーによって見えない部分
クルマの屋根を支えている柱の役目を担う「ピラー」による死角もある。ピラー自体はそれほど幅があるわけではないものが多いが、細いピラーであっても死角は存在する。
特にフロントガラス両脇のAピラーが視界を遮ることで右左折時、右左折先の横断歩道にいる歩行者の発見が遅れ、危うく事故になりそうになったというドライバーは多いはず。
また、山道の急な右カーブを曲がる時は、対向車の発見が遅れる場合もあるので注意したい。
■トラックなどの「あおり」より下部分
筆者はピックアップトラックを数台乗り継いだが、あおり(荷台の囲い部分)下の死角には特に注意していた。
箱型のバンタイプでは、リア上部についたミラーによってリアバンパー付近は確認できるが、トラックタイプでは「あおり」となるため、ミラーが取り付けられない。
よって、あおりの高さより低いボディそばの物や人はまったく見えない状態だったのだ。
■クルマの後方を確認できるバックカメラは義務化
クルマ後方は運転姿勢と逆方向なため、目で見て確認しようとするとバックミラーを使うか、体ごと後方に向けて自身の目で死角部分を確認しようとするドライバーは多い。
それでも、「駐車時に子どもを先に降ろし、駐車スペースに入り込んだ子どもを後退時に轢いてしまった」「駐車していた自車の直近で遊んでいた子どもを発進時に轢いてしまった」などの痛ましい事故は起こっている。
そこで2021年6月、国土交通省は「後退時車両直後確認装置」(バックカメラ、検知システム、ミラーなど)の義務化を発表。同月10日に改正された保安基準が施行された。対象となるのは二輪車や一部の特殊自動車を除いた、乗用車・トラック・バスなど。
ここでいう後退時車両直後確認装置に含まれる「検知システム」とはバックソナーのことで、クルマの四隅から超音波を出し、反射して戻るまでの時間から距離を測定するもの。
距離に応じて警告音や音量が変わり、障害物の存在をドライバーに教えてくれるため、バックカメラでなくとも検知システムやミラーなどでも問題ないとされた。
後退時車両直後確認装置は、新型車では2022年5月から、継続生産車(既存モデルの新車)では2024年5月から装着が義務化される。義務化されるバックカメラは、車体の後方0.3mから3.5mまでの範囲が確認可能なもので、センサーは0.2mから1mまでの範囲を感知可能なものとなっている。
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