先日、免許更新時に講習を受けたのだが、交通安全協会の教官が念を押していたのが「ハイビームが基本」。東京に住んでいる筆者にとって、夜間、対向車や前を走るクルマがいない時でもほぼロービームで走行していることがほとんどなので「寝耳に水」。ここで改めて道路交通法では、ハイビームが基本なのか? ロービームで夜間、走行していると警察に捕まってしまうのだろうか?
文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobe Stock(トビラ写真/beeboys@AdobeStock)
■ハイビームが基本、対向車や前走車がいたらロービームに切り替えるが正解!?
最近、表通りから1本入った道路を走っていると、やたらハイビームを点灯しているクルマが多くなった気がしている。トヨタやレクサス、マツダが採用しているオートハイビームの影響かと思っていたのだが、今回、免許更新時に交通安全協会の教官が「夜間はハイビームが基本」と推奨していたのも原因の一つではないか。
講習時に、ハイビームの使用を奨励している要因の1つに、薄暮(夕暮れ時)や夜間の視界不良が原因で交通事故を起こすケースが増えていると説明があった。確かに夜間、街灯が少ない道路を走っていると前方が見えにくく歩行者や自転車が突然現れたように気付いて驚くことがある。ハイビームにすると標識もよく見え、黒っぽい服を着た歩行者も全身が見えるようになる。
根拠となるのは警察庁が発表した薄暮時間帯・夜間における交通死亡事故発生状況。令和元年から令和5年の5年間における交通死亡事故のうち、薄暮時間帯・夜間における交通死亡事故を分析した結果、「日没時刻と重なる時間帯である17時台から19時台に最も多く発生」、「薄暮時間帯における死亡事故は10月から12月にかけて最も多く発生」、「薄暮時間帯や夜間については、自動車と歩行者が衝突する事故が最も多く4割以上を占めている」ことがわかった。
さらに「自動車対歩行者」による死亡事故(夜間・自動車直進中)において一定の条件下で発生したものを調査分析した結果、ハイビームを活用していれば衝突回避できた可能性の高いものが126件(約56%)あることが判明し、ハイビームの活用は事故防止に一定の効果が認められることが明らかとなっている。
そもそも2017年3月の改正道路交通法施行により、クルマの走行中のヘッドライトは原則ハイビームが基本となり、前方にクルマがいる場合はロービーム(すれ違い灯)に切り替えることが明確化されていた。
法律上は、ヘッドライトは原則ハイビームで、ロービームはすれ違い灯。実は、改正以前の道路交通法でもルールは同様のものだ。この道路交通法が制定されたのは昭和35年で昭和46年に一部改正されたものの、当時はクルマが少なく、道路整備も充分ではなく、街灯も少なく夜間は暗かったのだろう。
しかし、現在では高速道路や郊外の道路を除けばロービームでも問題ないほど整備されている。それでも改正道路交通法でこのように明記された理由の1つとしては、街灯の少ない路上でロービームのまま走行していたクルマが歩行者に気付かず、はねてしまった事故がきっかけだといわれている。
詳細を知りたい人は以下の通り。日本の道路運送車両法「道路運送車両の保安基準(前照灯)第32条」では、すれ違い用前照灯(以下ロービーム)は40m、走行用前照灯(以下ハイビーム)は100m先を照らすことができると定められている。
【原則的に】、警察の取り締まりの対象となる道路交通法第52条(車両等の灯火)の第1項で前照灯は基本的にハイビームを主たる前照灯とし、第2項の「灯火を減ずる装置」となるのがロービームとなる。
第52条の内容を抜粋すると、
(第1項)「車両等は、夜間(日没時から日出時までの時間)道路にあるときは、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない」
(第2項)「車両等が、夜間、他の車両等と行き違う場合又は他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければならない」
つまり、夜間(日没から日の出まで)を通行するときに、歩行者や対向車がいるとき、ほかの車両の後ろを走るとき以外ハイビームを付けなければならず、これを守らないと違反となる。
もともとは、ハイビームが「走行用前照灯」、ロービームが「すれ違い用前照灯」だったのだ。対向車、歩行者が多いエリアはロービームに切り替え、いなければハイビームと覚えておけばいいだろう。
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