■各メーカーで異なるインターフェイス
とはいえ、ACCにしてもLKAにしても運転支援装置として便利だし、適切に使用すればドライバーの負担や疲労の軽減につながることは事実です。
ところが、スイッチの配置や形状、さらに操作方法や呼称などがメーカーによってバラバラで統一されていません。ACCやレーンキープアシストなどの運転支援装備の役割は「走り、止まり、曲がる」のコントロール機能です。言わばアクセルペダルやブレーキペダル、そしてステアリングと同じ操作の機能です。
これら重要な操作系の配置や操作方法などは、ISO(国際規格)できちんと規定されていて、どのクルマでも同じ操作方法と配置になっています。
しかし、現状の運転支援装備は、システムの呼称どころか操作スイッチの名称やその配置、そして使用方法や作動の視認方式などが、各メーカーどころか、同一メーカーの製品ごとにも差異がありバラバラです。規格を設定しようとする動きもいまだ見られません。
カーシェアの普及もあり、クルマを乗り換えるユーザーは混乱しています。
自動運転でもない運転支援装備をあたかも自動運転のように過剰な表現や宣伝をしたり、さらに、走りを制御する重要な装備にもかかわらず、使い方や表示方法などバラバラで統一した規格も整備されないままユーザーを惑わせているのですから、都合のよい解釈による人為的な事故が起きているともいえる状況です。
国交省が主導して運転支援装置の規格を統一するなど、早急な整備が急務です。国交省が動かないのなら、自工会が自主的に動くべきです。
■人間の脳に勝る人工知能はない
これまで数多くのACCやLKAなどの運転支援装備の付いたクルマに乗ってきましたが、機械の制御は絶対に人間の脳には敵いません。
AIだとかディープラーニングなど技術開発は進化していますが、自動車という限定された予算やスペース制約の中で、熟練した運転者の「先読み運転」機能までを保証できる運転支援システム(自動運転)は絶対に不可能です。
自動運転とは呼んでも、現実にはさまざまな制約条件が付いて、限定された状況で実現できるレベルです。
AIにしても、開発担当者が知っている範囲で積み重ねたデータによるフィードバック制御が主体で、クルマとしての製造原価やスペース制約では、保有できるデータ量と演算速度などは限定的です。
例えば高速道路を走る場合でも、慣れたドライバーだったら数台も先の前方の動きや周辺状況を見ながら、横や後ろの走行車両の動きを読み、車線変更や追越しの可能性を予見して、速度や走行する位置を決めて、車間距離を開けるなどの「先読み運転」をします。
しかし、スーパーコンピューター機能がない、クルマの製造原価から割り付けられた廉価で荒いメッシュの限定された範囲のデーターを演算処理して制御するACC程度では、それはできません。
また、前走車との車間距離が一瞬開いたとしても、その先で車線が詰まっていたら数秒後には元の車間距離に戻ることが容易に予測できるので、速度を保ったまま走り続けるでしょう。しかしACCは一定の車間距離を維持するために無駄な加速や減速を繰り返し車間距離を保とうとします。
前方に渋滞の車列があれば、上手な人だったら数百メートル手前から徐々に車速を落として後続車に注意喚起のサインを送りながら安全に渋滞の車列に近づきます。
しかしACCは設定された車間距離までは一定の車速のまま渋滞の最後尾に突進していき、強いブレーキで停車しようとします。先読みや制動力の調整はできません。
レーシングドライバーでも超一流になると先読みの世界になります。
私のNISMO時代は星野一義選手がいましたが、星野さんほど怖がりで気が弱いドライバーはいません。
怖いから何度も何度も繰り返し練習する。何度も走り込んだサーキットコースやマシンでも、0.1秒を争う世界では「外気と湿度、タイヤやクルマの状況、路面の油や砂や埃」など、刻々とコンディションは変わるのです。まったく同じコンディションは絶対にないのです。
何度も何度も走り込んで、さまざまな状況を身体に叩き込むのが星野さんのスタイルなのです。
星野さんのドライビングを完璧にプログラミングした自動運転マシンを走らせても、星野さんの運転に勝つことはできません。
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