燃費は悪いし安全性も低く、うるさい上に遅い…それでも最高だった「昭和のクルマ」の魅力とは?

燃費は悪いし安全性も低く、うるさい上に遅い…それでも最高だった「昭和のクルマ」の魅力とは?

 技術の進化によって、どんどん便利で快適で安全になっていくクルマ。令和のいまは、スイッチひとつで前走車に追従してくれる機能があたりまえになり、昭和の時代では考えられないほど、クルマは進化をしている。

 こんなに便利で安全になっているのに、クルマ好きは「昔のクルマはよかった」とする人が少なくない。昭和のクルマは、いったい何がよかったのか。令和のクルマとの違いとは!??

文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:NISSAN、MAZDA、MITSUBISHI、SUZUKI、TOYOTA、HONDA

昭和のクルマの操る楽しさは令和のクルマでは決して感じられないもの

 昭和のクルマのもっとも大きな魅力は、なんといってもシンプルなメカニズムだ。令和のクルマに比べて、電子機器やコンピューター制御が圧倒的に少なく、小型車であればエンジンルームはスッカスカ。ボンネットを開けると隙間から路面が見えるぐらいだった。そのため、クルマはいまよりもずっと軽量で、メンテナンスもしやすく、オーナー自らメンテナンスや修理をすることも少なくなかった。もちろん故障も圧倒的に多かったが、そのたびに自ら修理をすることも、クルマ好きにとっては、クルマに乗る楽しさのひとつでもあった。

 操る楽しさも格別だった。軽量であることに加えて、小型車でもFR(エンジン前置きの後輪駆動車)が当たり前であった昭和のクルマは、まさにクルマを「操っている」感覚が強かった。味わい深いハンドリング、エンジンやトランスミッション、路面から伝わってくるダイレクトな振動は、現代のクルマでは決して感じられないものであり、昭和のクルマの大きな魅力だった。

 デザインも魅力的だった。令和のクルマは、燃費性能や走行性能を追求するため、コンピューターで細かくシミュレートし空気抵抗の低減を重視したデザインがされているが、昭和の時代はとにかくカッコいいデザインを追求するクルマが多かった。現代のような高い安全基準もなかったため、ノーズを低く抑えた、いかにも速く走れそうなフロントデザインを最優先しており、現代のように、ボンネットに厚みを持たせたりする必要もなかった。リトラクタブルライトも事故時の安全性等の観点から現在は採用されなくなったが(禁止されてはいない)、ノーズを低く見せるデザインや、ライトがせり出すギミックにもワクワクさせられたものだった。

1978年(昭和53年)発売の初代マツダ サバンナRX-7(SA22C)。低いボンネットとシンプルでシャープなスタイリングは昭和ならではのデザインだ
1978年(昭和53年)発売の初代マツダ サバンナRX-7(SA22C)。低いボンネットとシンプルでシャープなスタイリングは昭和ならではのデザインだ
1970年(昭和45年)に発売された初代セリカ。斬新なスタイリングで大ヒットした
1970年(昭和45年)に発売された初代セリカ。斬新なスタイリングで大ヒットした

ただ、燃費は劣悪、安全性も低く、快適装備もなかった

 ただもちろん、いいところばかりではない。昭和のクルマはエンジンの熱効率が悪く、コンピューターによる燃料制御もいまほど精度が高くなかったため、燃費がとにかく悪かった。空力性能やタイヤの性能もいまより劣るので、車両重量が軽量であっても燃費はよくなく、スポーツカーで人気のキャブチューンをしようものならさらに悪化する。

 また、いまでは当たり前の安全装備であるエアバッグやABSもまだ一般的ではなく、横滑り制御機能や衝突被害軽減ブレーキなども搭載されていなかったため、令和のクルマと比べて安全性は低かった。実際、交通事故による死亡者数は、1970年(昭和45年)がピーク。現在は、自動車保有台数が増えているにもかかわらず、事故総数は減少し続けているという状況であることを考えれば、昭和のクルマの安全性は、令和のクルマと比較にならない。

 また、エアコンやパワーウィンドウなどの快適装備も、昭和の時代では高級車のみに設定されており、オプションとなるケースが少なくなかった。遮音性やタイヤ、ボディ剛性がいまより劣るため、車内に侵入してくるノイズも大きく、(それを楽しんでもいたのだが)とても快適とはいえない車内環境だった。

1970年(昭和45年)発売の三菱ギャランGTO。ハイレベルなスペシャリティカー志向に応える形でリリースされた、昭和を代表する名車の一台だ
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1979年(昭和54年)発売の初代アルト。47万円という衝撃の本体価格に加え、4ナンバーの商用車登録で高額な物品税を回避し、安価な日常のアシを求めるユーザー層に爆発的なヒットを記録した
1979年(昭和54年)発売の初代アルト。47万円という衝撃の本体価格に加え、4ナンバーの商用車登録で高額な物品税を回避し、安価な日常のアシを求めるユーザー層に爆発的なヒットを記録した

次ページは : 操る楽しさだけでも、知ってほしい!!

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