定番のBMW、新進のアルファロメロをGT-R開発マイスターはどう見たか?

■ステルヴィオはFRプラットフォームを活かし切れていない

 ステルヴィオの運転席に座わると「FF小型車のような」ドライビングポジションや操作性になっています。

 シート位置をペダルで合わせて、テレスコを一番手前まで伸ばして調整しても、ステアリング位置は前方で遠く、操作角度もドライバーに対しFR車の長所である、操作性のよい正対する角度ではなく、FF小型車のような水平な操作角度になっています。

ステルヴィオはジュリア、X3は3シリーズと、それぞれベースになるFRスポーティセダンから生み出されたミッドサイズSUVである

 ステルヴィオはFRのミドルクラスの車両でありながら、ドラポジ&運転操作性と衝突対策性能はFF小型車の設計技術で作られているようです。 

 一般にFF小型車はエンジンルームの衝撃吸収性が厳しく、衝突時にエンジン&ミッション全体が居室に飛び込んでくるために、ドラポジや操作性より衝突対応を優先して寸法や配置の設計をせざるを得ません。

 ドラポジや操作性は少し犠牲にしても、ステアリングとドライバーの距離を遠くし、ステアリングの傾斜も水平気味にしてエアバック展開性能や衝撃吸収寸法の確保を優先させ、衝突時の頭部や胸部のダメージ(HIC値)を下げているのです。

 一方、FR車はエンジンルームの衝撃吸収性がよく、また衝突時にエンジンとミッションはフロアトンネルに潜り込み、プロペラシャフトも衝撃吸収反力を出せるため、衝突性能よりドライビングポジションと操作性を優先した設計ができる長所があります。

 しかし、私の目からみると、長年この種の高性能FR車開発から遠ざかり、FF車開発経験が主体の世代となっているために、アルファロメオの社内に今ある設計基準やノウハウや技術マニュアルはFF車開発が基盤となっていると思われます。

乗り心地のよさは特筆ものだが、操安性は初期応答が曖昧で、途中から急激にゲインが立ち上がり、熟成不足だ

 ドラポジやステアリング配置だけでなく、ダッシュ周りの車体構造やサスペンションなども作り慣れたFF小型車の技術が主体になっています。

 これはもったいない! せっかくFRとしたのなら、このようなスポーツ性や質感に関わる部分はFR車の長所をきちんと生かした設計としてほしかったです。

 インパネ周りのデザインは私が楽しみにしていたラテン特有のセンスとアソビ心は残念ながら少なく、オーソドックスな正統派になっています。可もなく不可もなくです。

 カーナビはなく、スマホ接続してナビ表示ですが、コスト削減の大衆車ならこれでもいいのですが、この価格帯のクルマだったら、年配のドライバーもいるし、普通のカーナビを求める人も多いと思います。

 また、乗るたびにいちいちスマホの設置と接続作業も面倒です。

 一方のX3のインテリアはBMWの定番デザイン。丸形メーターは液晶表示になっていますが、デザインのテイストは昔ながら。ただ、タコメーターの針の位置に合わせて数字が大きく表示されますが、かえって目がチラチラしてあまり視認性がよいとは思えません。

 ドラポジはステルヴィオに対してしっくりきます。ステアリングの位置も操作角度も圧倒的に適正です。ステルヴィオに対して10cmは近いし、ステアリングホイールの角度もステルヴィオほど寝ていません、FR車のよさを感じます。このドラポジは高級車の安心感や上質感にも繫がります。

やはりBMWはFRプラットフォームを使いこなしている。操安の前後バランスにも優れていて気持ちいい

 ステルヴィオのエンジンルームを見ると、なぜ、ラジエターの真後ろに水冷インタークーラーを置くのか!?

 ラジエター水温は90~95℃で、前面から通過してきた走行風はラジエター後側でおおよそ80~70℃まで暖まります。

 一方、インタークーラーで冷やすエンジン吸気は50℃以下にしなければならないのですが、せっかく冷やした吸気を80℃のラジエター通過風で熱くしてしまっています。

 水冷インタークーラーのラジエターはまた別の位置にあり、外気で35℃付近で冷やしているのです。

 また、ジュリアの時にも指摘しましたが、ブレーキフルードのすぐ近くに排気タービンがおいてあるレイアウトは相変わらずです。遮熱板があるとはいえ、タービン本体の表面温度は700℃近くになります。遮熱板があっても最大300℃近い熱にブレーキフルードはさらされているのです。

 それにしてもステルヴィオのサスアッパーはずいぶん内側にオフセットしてキャスタートレールが小さい。

サスアッパーが内側にオフセットしすぎている。これによって理想的なジオメトリーにできていないと感じた

 恐らくダブルウィッシュボーンのアッパーアーム配置を優先させたのでしょうが、これはタイヤが小さいFF車の手法。このジオメトリーの設定では、今の大きなタイヤの転舵時の接地面の補正量は足りているのか少し疑問です。

 X3のエンジンルームは3シリーズなどと同じ構造です。ブレーキフルードなどは二重隔壁構造の内側に入れているため、タービンの熱の影響を受けません。ストラットのアッパーマウントも最近のトレンドで適正な位置です。

 アクスルセンターに対しアッパーマウントはずいぶん後方にあります。キャスター角度を大きくし、転舵時にキャンバ角が多く増加するよう、接地面変化をちゃんと補正しています。大径タイヤの慣性力に対し直進性も確保しています。

 対してステルヴィオは転舵でのキャンバ変化は少ないし、大径タイヤの慣性力の直進性もどうなのでしょうか? 横Gがかかるコーナリング時には、操舵量とサスのストローク量に合わせて、キャンバ角が増加することでタイヤの接地面が確保され、踏ん張りも効くのです。

 ステルヴィオのジオメトリーだと、激しいコーナリング時には、せっかくダブルウィッシュボーンであっても、ストラットタイプのようにタイヤの外側ショルダー部に頼った接地面変化をしていくのを、運転していると感じます。

次ページは : ■キャスタートレールが充分に取れていないステルヴィオ

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