新型フィット試乗でわかった長所と注意点 偉大な初代や先代をどう超えたのか?

15/16インチタイヤによる走行安定性と乗り心地の違いとは?

185/65R15サイズのタイヤはベーシックとホームに標準装備
185/65R15サイズのタイヤはベーシックとホームに標準装備
185/55R16はネスとリュクスに標準装備。クロスターは185/60R16サイズ
185/55R16はネスとリュクスに標準装備。クロスターは185/60R16サイズ

 フィットの足まわりは、前輪にストラットの独立式、後輪は車軸式で、4WDの後輪にはド・ディオンアクスルが使われる。セッティングはNAエンジンとe:HEVでは異なり、クロスターも最低地上高を高めたから違いがある。

 さらにタイヤサイズはベーシックとホームが15インチ(ホームは16インチもオプション設定)、ほかの3グレードは16インチだ。

 16インチでもネスとリュクスは185/55R16、クロスターは185/60R16の違いがある。タイヤサイズと重量などに応じて指定空気圧も異なるから、セッティングの種類は多い。

 走行安定性と乗り心地のバランスが最も優れているのは、NAエンジンの16インチタイヤ装着車だ。

 指定空気圧は前輪が220kPa、後輪は210kPaと妥当だ。街中を時速40km以下で走ると少し硬いが、コンパクトカーでは優れた部類に入る。大きめの段差を乗り越えた時に伝わるショックは角が丸い。

 先代型はカーブを曲がっている最中に段差を乗り越えると、突き上げ感が生じて進路も乱されたが、新型はこの不満を解消した。

 峠道などを走ると、後輪の接地性を優先したことが分かる。全車に共通する特徴で、特にノーマルエンジン車は前輪側を中心に車両重量がe:HEVよりも約100kg軽いから、車両の向きも適度に変えやすい。挙動の乱れを抑える走行安定性と、操舵に対する軽快な動きを両立させた。

 e:HEVの16インチタイヤ装着車もコンパクトカーでは快適だが、クロスターを除くとノーマルエンジン車に比べて少し硬い。指定空気圧は前輪が240kPa、後輪は230kPaに高まり、ノーマルエンジン車に比べると、路上の細かなデコボコを伝えやすい。

 峠道などではボディの重さを意識させ、若干唐突にボディが傾く印象もある。コーナーに入った後も、旋回軌跡を少し拡大させやすい。それでも後輪の接地性が高いから安心感も伴い、速度が上昇すると乗り心地は快適になる。

 またe:HEVの16インチタイヤ装着車は、ステアリングギヤ比が可変式だから、舵角が大きくなるとハイギヤードになる。車庫入れの時など、ステアリングホイールを忙しく回す操作を抑える。

e:HEVの16インチ装着車には可変ステアリングが装着される
e:HEVの16インチ装着車には可変ステアリングが装着される

 左右に一杯に回した時のステアリングホイールの回転数は、ノーマルエンジンが2.8回転、可変式になるe:HEVは2.3回転だ。

 クロスターはe:HEVでも乗り心地が快適に感じる。タイヤサイズが185/60R16だから空気の充填量が少し多く、指定空気圧も220・210kPaに下がるから柔軟になった。

 開発者は「最低地上高を高めてもサスペンションのストローク(上下に柔軟に伸縮する範囲)は増えていない」と言うが、SUVらしい、ゆったりした乗り心地を演出できている。

 その一方で、15インチタイヤ(185/60R15)を装着したベーシックは乗り心地が硬めだ。足まわりのセッティングはホームと同じだが、転がり抵抗を抑えたタイヤが装着されて指定空気圧も240・230kPaと高いから細かな振動を伝えやすい。

 公道を走ってみて全体的にしなやかでソフトな印象を受けたのだが、これは剛性感のある少々固い乗り心地のVWポロを意識したわけでもなさそうだし、どちらかというとフランス車の乗り味に近いかもしれない。

 そこで、どのクルマをベンチマークにしたのか、前出の開発責任者田中さんに再び聞いてみた。

「当初はVWポロをベンチマークにしようと思いましたが、心地よさという観点ではそうではないと。サスペンションがよく動くしなやかな乗り心地、そして心地よい視界を持っているシトロエンC4ピカソを超えるものを作ろうと思いました。あとはフランス車らしいシート表皮のバリエーションが豊富なところを参考にしました」。

後席の乗り心地のよさにニンマリする筆者
後席の乗り心地のよさにニンマリする筆者

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