新型フィット試乗でわかった長所と注意点 偉大な初代や先代をどう超えたのか?


 2020年2月13日に発表され、2月14日から発売されたホンダの主力となるコンパクトカー、新型フィット。

 その新型フィット初となる公道試乗会が千葉県木更津市にある上総アカデミアパークを舞台に行われた。

 今回は一般公道での試乗した印象をはじめ、全5グレードに乗ってわかった長所と注意点のほか、読者が気になっているであろうポイントを中心に、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が徹底解説する。

※2月末現在の受注台数は2万4000台を超え、月販目標台数1万台の約2.4倍

文/渡辺陽一郎
写真/平野学

【画像ギャラリー】新型フィット5つのグレード詳細写真&未公開メカニズム解説図


人に心地よい 人に寄りそうヒューマン・フィット!

5つのグレードを設定した新型フィット。左上からリュクス、ネス、ベーシック。手前左はクロスター、右がホーム。写真中央下は筆者の渡辺陽一郎氏

 まず、新型フィットはどういうクルマなのか、本題に入る前におさらいを兼ねて、ポイントをわかりやすく挙げておきたい。

 新型フィットは、クルマの移動においてもリラックスや癒しを求めているという潜在ニーズにたどり着き、そのニーズに応えるために、「心地よさ」を開発テーマに掲げている。

●フロントピラーを半分以下に細くして、出っ張りのない低く水平なダッシュボードですっきりとした「心地よい視界」
●樹脂製マットで支えるボディスタビライジングフロントシート、厚みのある柔らかなパッドをしたコンフォートULTRリアシートなど「心地よい座り心地」
●高剛性ボディ、低フリクションサスペンションなどで「心地よい乗り心地」
●センタータンクレイアウトによる後席のチップアップ機構や気軽にかばんなどを置けるテーブルコンソール、HV車でも荷室容量を確保した「心地よい使い勝手」
●ワンモーションフォルムで表情のあるデザインは日本人に寄り添う存在の柴犬をイメージ
●服を選ぶような感覚で、ベーシック(BASIC)、ホーム(HOME)、ネス(NESS)、 リュクス(LUXE)、クロスター(CROSSTAR) の5種類のグレードが選べる
●パワートレインは1.3Lガソリンと、ハイブリッドは先代の1モーターから、モーター主体のe:HEV(1.5Lハイブリッド)の2種類
●フロントワイドビューカメラとソナーセンサー(フロント4個、リア4個)による新ホンダセンシングの全車標準装備化、交差点右折時、対向車と衝突回避する新機能が付いた衝突軽減ブレーキを設定
●MTやRSグレードを廃止

先代フィットからどう進化した?

2013年9月に発売された先代フィットは無機質でどことなく冷たいイメージのするデザインといわれたという
人に心地よいを開発テーマに掲げられた新型フィット。ユーモアのある顔だ

 新型フィットのボディサイズは、SUVスタイルのクロスターを除くと5ナンバー車で、全長も4m以内に収まる。先代型とほぼ同じ大きさだ。

 プラットフォームは先代型と共通化され、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2530mmで先代型と等しい。

 燃料タンクは前席の下に搭載され、荷室の床下には大容量のアンダーボックスも装着した。後席の座面を持ち上げると、車内の中央に背の高い荷物も積める。これらの特徴は先代型と共通だ。

 その上で進化、あるいは変化した点も多い。注目されるのは外観だろう。新型はボディ全体に丸みを持たせ、特にフロントマスクは、クロスターを除くとグリルの開口部を薄く見せて柔和な印象に仕上げた。

 フロントピラー(柱)は2本配置した。前面衝突時の衝撃は、ドライバーから見て手前側のピラーで吸収する。

 そのために奥側はマド枠の機能になり、細くデザインできた。視界がワイドに開け、斜め前方も見やすい。ピラーが細いために、フロントウインドウ左右端の歪みが若干見えるが、気になるほどではない。

 後方視界も向上した。先代型ではサイドウインドウ下端を後ろに向けて大きく持ち上げたが、新型は水平基調になってスッキリと見やすい。

 インパネの形状も変わった。視界も考えて、インパネ上面を平らに仕上げている。運転するとボディが少しワイドに感じた。

 インパネも水平基調で、立体感が乏しく質感の演出では不利だが、シンプルな使いやすさを表現した。2本スポークのステアリングホイールも珍しい。

 メーターはデジタルのみ。スペースの節約とコスト低減も採用の目的だが、多彩な情報を表示できて、カラー液晶だから視認性は良い。

新型フィットのコクピット(リュクス) 。ブラウンの本革内装が標準装備とは驚いた。奥のピラーの細さ、ナビがダッシュボード上に出ていない点に注目。エアコンのスイッチ類もメッキ加飾されており、触り心地のいい本革ステアリング、ソフトパッドなどまるで輸入車のようだ
最量販グレードとなるホームのコクピット。インテリアカラーは写真のソフトグレーとブラックの2種を用意。ドアアームレスト、ニーパッド、インパネに採用されたソフトパッドはプライムスムース(リュクスも同様)と呼ばれる。シートはプライムスムース×ナチュラルテキスタイルのコンビシート)。e:HEVのホームは本革ステアリングを標準装備

 エアコンのスイッチは比較的高い位置に装着されて操作しやすい。シンプルなデザインと、視界を向上させたボディスタイルは、両方とも「親しみやすく、心地よく使えるクルマ作り」の考え方に基づく。

 過去を振り返ると、2001年に登場した初代フィットは、燃料タンクを前席の下に搭載して、抜群に広い室内を確保した。

 2007年に発売された2代目は、初代の機能を洗練させ、ハイブリッドも加えて堅調に売れた。

 2013年の3代目(先代型)は、サイドウインドウの下端を後ろに向けて持ち上げるなどスポーティ感覚を表現したが、リコールが重なったりN-BOXにユーザーを奪われて売れ行きは伸び悩んだ。そこで4代目の新型は、親しみやすさと心地よさを大切に開発されている。

  新型フィットの開発責任者、本田技術研究所四輪R&DセンターLPL主任研究員田中健樹さんは、

 「コンパクトカーのお客様は、実用的な機能に満足しても、雰囲気や情緒に物足りなさを感じることが多い。新型はこの点に注目して、デザイン、視界、シートの座り心地などを心地よく仕上げた」と言う。

新型フィットの開発責任者、本田技術研究所四輪R&DセンターLPL主任研究員田中健樹さん。紺のパンツと素足でのスリッポンコーデがオシャレ

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