2018年6月26日、新型クラウンが発売。通算15代目となる新型は、60年を越える歴史のなかで日本を代表するセダンに成長した。しかし、日本市場では、ユーザー層が高齢化し、セダンが衰退するなど「国内専用車」を取り巻く環境は、昨今激変した。だからこそ、15代目の新型は、その真価を問われるモデルチェンジでもある。新しいクラウンは、世界と戦える、そして何より日本に適した新時代の国産セダンへ進化を遂げているか。
文:松田秀士/写真:池之平昌信
ベストカー 2018年7月26日号
国内専用車の価値問われる15代目のモデルチェンジ
「いつかはクラウン」という有名なキャッチはすでに30代の多くに死語となっている。これまでにもターゲット年齢層を下げる努力を行ってきたが、まさにクラウンは変革の時を迎えている。
しかし、どう変革し、どう進化すればいいのか? 国内専用ラグジュアリーセダンの在り方が問われるフルモデルチェンジだ。
デザイン? それは好みだから多くを語らないでおく。ただ、個人的には(新型は)クラウンらしさを残して30代にも訴求できるテイストになったと思う。しかし、BMW 5シリーズやベンツ Eクラスのような華がもっと欲しい。
インテリアは少々期待外れだった。例えばEクラスは平面的フルディスプレイを採用している。5シリーズは10.2インチのセンターディスプレーとメーターは表示そのものがカラー液晶となり、ジェスチャーコントロールなど革新的技術が盛り込まれる。
これに対して新型クラウンでは操作性を重視してダブルディスプレイを採用している。操作性重視は理解できるが、タッチディスプレイは目視による確認が必要で、さらに2段にしていることで眼のピントコントロールに負担がかかる。
メーター表示も立体的なアナログで洗練さに欠ける。ターゲット層の若年化を謳うわりに断捨離ができていない。シンプルエモーションというインテリアコンセプトなのだから。
乗り味は従来型と一線を画す
しかし、走り出せばそんなことは気にならなくなる。それほど、これまでとは一線を画す乗り味に進化している。
これまでのマジェスタ、ロイヤル、アスリートをひとつのクラウンにまとめたわけだが、パワートレーンはレクサスLS、LCにも採用されている3.5L、V6ハイブリッド、カムリの直4、2.5Lを縦置きにした2.5L直4ハイブリッド、そして2L直噴ターボを搭載したモデルの3種類。
まずは2.5ハイブリッドモデルから試乗。今回の新型のなかでイチバンの売れ線モデルになるはずだ。
サスペンションには電子制御による可変減衰力コントロールのAVSが装備されるモデルもあるが、こちらはコンベンショナルな素のサスペンション。
エンジンはカムリに搭載されてパワーと燃費の両立を実証ずみのパワートレーンだ。縦置きにしても、パワーフィールもレスポンスも良好。低速域から高速域まで扱いやすい。
若干エンジンノイズが気になるが、高速域になればなるほど乗り心地も室内音もこなれてくる。どのような走りをしても、燃費のよさが売りになるはず。
2.5Lハイブリッドモデルには4WD仕様もラインアップされ、フロントサスペンションはドライブシャフトを考慮した4WD専用設計。FRモデルと比較しても前後バランスが取れている。
ターボ車は欧州車的な足さばきが特徴
次に2L直噴ターボモデル。このパワートレーンは旧型にも搭載されていた。スーパーECTの8段変速を採用し、サスペンションはAVSを採用する「RS」グレードだ。
走り出しからしっとりと落ち着いた印象。路面に吸い付いているかのような安定感がある。この吸い付き感は欧州車に通じるものだ。5シリーズに比べるとサスペンションストロークは少なめで、締まった足という印象。Eクラスとよく似た締まり感だ。
AVSを一番ハードな「S+」にセットしても、乗り心地は大きく損なわれず、むしろ上下動が抑えられるぶん快適だ。ハンドリングも車重の軽さを生かしてクイック。
そして、最後に3.5Lハイブリッド。こちらは言うことナシというくらいに完成度が高い。低速域から高速域への繋がるトルク&パワー感。さらに室内の静粛性も高い。乗り心地は重量を味方につけた、しっとりと落ち着きのあるものだった。
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