■余裕あるドライブを体感できるパワフルな走りを実現
モーターの駆動力は先代型よりもパワフルだ。巡航中にアクセルペダルを踏み増した時は、モーター駆動の特性で、駆動力を素早く高める。
従来のガソリンエンジンに当てはめると、先代アウトランダーPHEVの動力性能は3Lに相当したが、新型でアクセルペダルを踏み増した直後の反応には、4.5L並みの余裕を感じる。
そして駆動用リチウムイオン電池が十分に充電されている時は、急な加速をしない限り、エンジンが始動することはない。仮に始動しても、エンジン音は先代型よりも静かだ。走行中にはタイヤが路上を転がる時に発するノイズも聞こえるから、エンジン始動に気付きにくい。電気自動車に近い感覚で運転できる。
新型ではリチウムイオン電池容量が20kWhに達するので、満充電にすれば、85kmを走行できる(WLTCモード)。また給油されたガソリンを使って、ハイブリッド車として走る時のWLTCモード燃費は16.2km/Lだ。
RAV4・PHVは22.2km/L、e:HEVを搭載するCR-Vの4WDが20.2km/Lだから、新型アウトランダーは燃料消費量が少し多い。
試乗したグレードはPだから、タイヤは20インチ(225/45R20)を装着していた。銘柄はブリヂストン・エコピアH/L422プラスで、新型アウトランダー用に開発されている。指定空気圧は前後輪ともに250kPaであった。
乗り心地は20インチとあって時速40km以下では少し硬いが、引き締まり感が伴う。マンホールの蓋を乗り越えたり、駐車場から路上に出る時の段差を通過した時なども、突き上げ感は抑えていた。
足まわりの設定が乗り心地に配慮したから、峠道などを走ると、ボディの傾き方が拡大しやすい。このような時に、一般的なSUVは、曲がる性能を抑える。旋回軌跡が拡大し始めて「これ以上は曲がりませんよ」というメッセージを出す。
ところがアウトランダーは曲がることを諦めない。ボディを大きめに傾けながら、車両を内側に向けて、ステアリングの操舵角に応じて忠実に曲がって行く。
ドライブモードをターマックモードに合わせると、一層、機敏に良く曲がる。先代型に比べると、走行安定性が底上げされたので、ステアリングのギヤ比も少しクイックに変更された。機敏な運転を楽しみやすくなっている。
その代わり峠道のカーブを曲がっている最中に、不用意にアクセルペダルを戻すと、後輪の横滑りを誘発する。しかし挙動変化が穏やかで対処しやすい。
カーブを曲がりながらアクセルペダルを調節することで、車両の進行方向を修正することも可能だ。こういった奥の深い運転感覚も、新型アウトランダーの特徴になる。
見方を変えると、これは重心が少し高い上質なSUVならではの楽しさだ。低重心のスポーティクーペやセダンでは、ボディの傾き方は小さいが、SUVは相応に傾く。新型アウトランダーでは、このプロセスが穏やかに進むから、ドライバーの操る感覚や一体感もクーペやセダン以上に盛り上がる。
■オフロードコースで4WDの走りを体感!
舗装されていないオフロードコースも走った。部分的に登降坂や泥道もあったが、余裕を持って走破できた。前後のモーターと、4輪を独立して電子制御するブレーキが相乗効果を発揮して、空転を抑えながら車両を確実に前進させる。
この時には、操舵角も含めて、ドライバーの意図を忠実に汲み取って制御している印象を受けた。舗装路と同様、悪路においても思い通りに運転できる。
悪路では、ドライブモードをグラベルモードに合わせると運転しやすい。多少のスリップを発生させながら機敏に曲がって行く。この時には後輪の駆動力が強く感じられ、ステアリングとアクセル操作による進行方向の調節も行いやすい。
さらに滑りやすい場所や登り坂では、マッドモードも有効だ。本来は泥道や深雪で使うモードだが、タイヤを空転させて泥を弾き飛ばしながら車両を確実に前進させる。ドライブモードを切り替えると、運転感覚の違いを楽しめる。
新型アウトランダーの価格は、試乗した最上級のPが532万700円だ。本革シートやBOSEプレミアムサウンドシステムなども含めて、上級装備がフルに装着される。RAV4・PHVのG・Zが499万円、ブラックトーンが539万円だから、新型アウトランダーの価格は同程度だ。
高価格だが、走行性能、リチウムイオン電池の容量、各種の機能や装備を考えると、価格は妥当だろう。経済産業省による補助金の交付額は19万1000円とされる。
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