新型LXは本当に「楽に、上質に」なのか
では、実際に新型LXを走らせてみると、「楽に、上質に」は体感できるのだろうか?
最初に走らせたのは、ちょっとしたワインディングを含む街中だ。ワインディングは狭く、全長5100×全幅1990×全高1885(エグゼクティブは1995)mmの新型LXの巨体は神経を使う。また、ラダーフレームのSUVならではの反応の遅さもある。
しかし、ボディの見切りは意外に悪くなく、また、ゆったりとした動きも慣れてしまえば扱いやすい。すぐに狙ったラインをきれいに走り抜けることができた。そんななかで感心したのは、V6エンジンの小気味よいビート感と、伸びのよいパワー感だ。
車両重量は約2.6トンもあるのに、鈍重どころか「速い!」という印象が強く残る。最高出力305kW(415馬力)・最大トルク650Nmは伊達ではないということ。そして、乗り心地はフラットライドでロール感は自然。ゆったりとした振る舞いながらも、クセのない素直な乗り味であった。
続いて高速道路へ。ここで驚いたのは直進性の良さだ。まっすぐにビシッと走る。ハンドルの手ごたえは重く、微小な操作にもクルマがしっかりと反応する。まるでプレミアムの大型セダンのようなフィーリングである。
ATは10速もあるので、シフトアップによる加速の途切れはほとんど感じることはできない。スルスルと途切れず、そして伸びやかに加速する。ただし、エンジンの音や振動はミニマムで、その存在感は非常に小さい。パワフルなくせに、なんと控えめなパワートレインだろう。
「道なき道」でみせた本領と意外性
そして最後に試したのが特設のオフロードコースだ。急坂やコブ、岩場などが用意されており、普通の街乗りSUVでは、挑戦するのに二の足を踏むような難コースだ。ところが、そんなオフロードコースを「LX」は、難なく走り切った。
驚くべきは、センターデフロックどころか、左右輪のデフロックもなし。使うのはブレーキで模擬的なLSD効果を生み出す電動デフロックだけで、しかも、その作動はごくわずか。大きなワダチやコブを軽々と走りきる。しかも、18インチだけでなく22インチの巨大なホイール、そして夏タイヤで!
その走破性の秘密は、伝統のトレーリングサスペンションや最長110mmのストロークを持つAHCにある。長いストロークを持つ4輪が大きなデコボコでも路面をつかんで離さないのだ。
こうしたオフロード性能の基本性能の高さに加えて、「マルチテレインセレクト」や「クロールコントロール」「ダウンヒルアシストコントロール」などの制御システムも用意されている。
「クロールコントロール」を使えば、アイドリングのクリープ走行よりも遅い一定速度でクルマが進み、運転手はハンドル操作に集中できる。速度が遅いので、段差を超えるときの揺れも、より小さくなるのだ。また、車両の周囲だけでなく、床下を透かし見る「フロアビュー」機能を使えば、狭いオフロードの道でタイヤの位置が一目瞭然。大柄な「LX」でも、非常に簡単=“楽に”走り切ることができたのだ。
振り返ってみれば、街中では、ラダーフレームのSUVらしい鷹揚とした走りを見せつつ、高速道路ではプレミアム・セダンのようなソリッドさ、オフロードでは高い実力と安易な操縦性を披露した。そして、どのステージでも、その姿勢はフラット感が強く、いわゆる乗り心地は、どこでも最上級クラスの快適さであった。どこでも「楽で、上質」というのは間違いなかったのだ。
驚愕なのは、約2.6トンもの巨大なラダーフレームのSUVが、それを実現したことだ。オフロードの走破性の高さは、「ランドクルーザー」譲りであるから当然のことだろう。
しかし、オフロードでの強いキックバクのいなしと、高速道路でのしまりの良いハンドリングは、本来、相反するもの。そんな問題に対して、「LX」の開発陣は、電動パワーステアリングとAHC、そして「AVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンションシステム)」(これは「ランドクルーザー」にも採用されている)でクリアしたという。
AHCは、車高、バネレートを変化させるもので、AVSはダンパーの減衰を変化させる。これに電動パワーステアリングを合わせることで、オンロードとオフロード、そして快適な乗り心地のすべてを実現させたというのだ。
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