■クルマの強烈な個性がオーナーのアイコンになる時代
例えばラングラーのように、無骨だけれどガレ場に行ったら無敵の走破性を持っているなど、強烈な個性がそれを選んだ人のアイコンになるということです。
パジェロはオールマイティなクロカンSUVですが、今の時代では「クロカンなのか? SUVなのか?」わからなくなってしまっています。
どうせだったらランクルまで行って突き抜けるか、あるいはベンツGクラスやレンジローバーのように高級ラグジュアリーを演出するか、ジープのラングラーのようにリジッドアクスルでスパルタンにするか。
現代は尖ったクルマに目が向くのです。パジェロが国内販売を終了するのは、ある意味、マークXと同じ流れだと思います。
しかし、ラングラーはいいですね〜。
アメリカのセドナの山奥へ行った時のこと。本当にこんなところをクルマが走れるのかという、岩が突き出しゴロゴロしているガレ場で、独立懸架サスのランクルが岩にオイルパンを打ち付けオイル漏れで止まっていましたが、その横をラングラーは平気でグイグイ登っていく。
旧式と思われるリジッドアクスルのメリットを改めて実感しました。独立懸架は足の動きはいいのですが、ガレ場では地上高が変わるのでダメです。
ランクルは中近東の砂漠の断崖でスポーツドライブをすると本当に頼りになるよいクルマです。
しなやかにストロークも長く動く足は、丘陵の砂のなかでは追従性もよくしっかりと走ってくれる。
パジェロも砂漠は得意です。逆にラングラーのようなリジッドアクスルでは、砂地やヌタヌタの沼地のような場所だと、片側タイヤが沈み込むと反対側のタイヤが浮いて空転し、走破性は劣ります。
レンジローバーもガレ場よりも砂漠やジャングル向きです。中近東で人気高いのは、トヨタのランクルやFJクルーザーなどです。
特にFJは軽量で車高が高く、低重心なので砂漠をグイグイ走れる。
ただ、中近東のお金持ちにはステータス性から、実際に売れるのはレンジローバーやランクルなのです。ベンツのGクラスは中近東ではどちらかというと都会のステータスという印象です。
ラングラーの足回りを覗き込むと、前後ともに長いトレーリングアームが特徴的です。ジムニーと同じです。
これでガレ場のストロークやしなやかさを稼いでいるのです。
リアサスのショックアブはリアタイヤに近接して前後方向に斜めに装着されていますが、これはショックアブをハネ石や岩場の打ち付けダメージから守るために、タイヤの内側に入れ込むように配置させるためです。
アメリカの荒野でクルマが止まるということは、死に直結します。
専門的に色々な要求される状況をわかっていなければこのような設計はできません。
打ち付ける場所は強度のあるホーシングやデフケースだけなのです。これが「本物」なのです。
パジェロの足回りを見ると、フロントダブルウィッシュボーン、リアマルチリンクの、普通にショックやスプリングが配置されたベンチマーク的なサスペンションです。
ラングラーのフロア下周りをさらに覗くと、前輪アクスル後方に図太いフロアガードバーが入っています。
岩場を前輪が乗り越えてドンと落ちた後に打ち付ける場所です。しっかりとフロアを守る構造になっています。
ラングラーのエンジンフードは外側にある2箇所の留め金で開閉しています。
フードを支えるポールはとても熱くなるので、手で触る部分には注意の喚起を兼ねた黄色の厚いウレタンが巻かれていて、そこを持たせるようにしているのです。
3.6LのV6 NAエンジン。上は回らないけれど、下からドンとトルクが出て、岩場をユルユルと走るにはやはりこのエンジンなのです。
ラングラーには直4、2Lターボもあり、最大トルクは40.8kgmでこの3.6Lの35.4kgmよりも大きいですが、ガレ場を走る際に必要な、極低回転での微妙なアクセル操作に対するレスポンスなどを考えると、やはりV6、3.6L NAがベストだと思います。
ラジエターは大容量で、大型のモーター式シングルファンで冷却しています。
これは走行風をアテにしていない、ということです。エクストラローレンジで岩場を歩くような速度で走る際に、走行風でラジエターを冷却することなどできません。
そのような使用状況を想定した冷却システムなのです。
パジェロはモーター式ではなく、エンジン動力を使ったファンです。これはある程度の速度を出して走ることが前提の冷却システムです。
砂漠ではこれでいいのですが、やはり岩場、ガレ場のスロー走行向きではありません。それはいいのですが、パジェロのラジエターは上部のコアがまったく冷却性能に寄与していませんね。この部分に前方からの風は当たりません。
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