2023年11月。WRCの日本ラウンドとなるラリージャパンが開催された。自動車評論家としてプライベーター参戦した国沢光宏氏。「100回くらいコースアウトしそうだった」という超難易度の高いラリーを制したタイヤについて語ってもらいました。
文:国沢光宏/写真:塩川雅人(Masato Shiokawa)
【画像ギャラリー】超ド級難易度を支えた 「ラリージャパン完走」自動車評論家が語る タイヤ選択の難しさと奥深さ(5枚)画像ギャラリー■ラリーマシンのセットアップは一筋縄ではいかぬ
ダンロップ、ドライ路面ではしっかり感を確保しつつ、ウエット路面や氷雪路面で水分に触れるとゴムがソフトになり高いグリップ性能を発揮する「アクティブトレッド」採用のオールシーズンタイヤを来年発売するという。
そんなゴムが出来たらラリー車用のタイヤに最高かもしれない--など考えながら、100回くらいコーウアウトしそうになった今年のラリージャパンの話です。WRCはイコールコンディションを重視するため厳格なタイヤの使用制限を行っている。
使える本数はもちろん、タイヤもFIA承認バーコードが入ったものを使わなければならない。よってかなり特殊なタイヤになり、日本だとチョイスが限られる。実際、昨年ラリージャパンに出場するにあたり入手出来るタイヤを探したのだけれど、1カ月で手元に届くのはアメリカ製のタイヤのみ。
出場する車両は一度も乗ったことがないため、クルマのセットアップを兼ね、アメリカタイヤで昨年のラリージャパンの前に全日本ラリーに出場したのだけれど、いやいや非常に厳しかった!
グリップレベル低かったんだろう。「こんなアンダーステアなの?」と思うくらい曲がらない。ルノーに(ウルゴンさんです)聞いてみたら「ミシュランでセットアップしたのでグリップ不足では?」。
このタイヤじゃダメだとなりダンロップに泣きついたところ「本数は十分揃えられないかもしれませんが何とかしましょう」。ということで昨年のラリージャパンはダンロップです! するとどうよ! グリップレベル、全く違いますね! SSを3本走り、セットアップ改良したら、全く違うクルマになった! タイムも驚くほど良くなり、格上のクラスを喰えるほどに!
■22年のリベンジを果たすべく……
けれど楽し過ぎました。調子に乗って攻めたら浮き砂利でコースオフ。岩壁にガチャン。スポンサー無しの貧乏チームということもあり、交換出来るパーツを持っておらずリタイア。1週間くらい激しく落ち込む。
長い前置きになりました。そんな経緯あり、今年のラリージャパンもダンロップ! 昨年忘れてきたモノを取り戻そうという算段(また忘れモノする可能性ある?)。
本番走行前に行うレッキは3日間とも良い天気。当然ながらドライ路面で、落ちている枯葉だって濡れていない。しかし! 本格的なラリーが始まる金曜日は大雨。こうなるとタイヤ選びで迷うこと無し。
ダンロップのFIA認証タイヤ、パターンは1種類。コンパウンドが「ハード」「ソフト」「ウエット」だ。もはやウエットしかない。スタート前、ダンロップの人に情報を聞く。
すると「ウエット路面でもある程度グリップすると思います。ただ縦方向の深いミゾは無いので水溜まりに気を付けてください」。なんなってウエット路面はタイヤで限界が決まる。
アドバイスを頭に入れてスタートすると、どこも水溜まり! 世界で一番クルマの運転が上手なワークスカーに乗っている人すら同じコーナーで3台飛び出すほどの悪コンディションだったりして。
加えて気温低くタイヤが暖まらない。アクセル開けて行くと3速すらホイールスピンしちゃう。そもそもアクアプレーニングの連続で真っ直ぐ走らず。考えてみたら対向車とすれ違い出来ないほど狭い道に、滑りやすい落ち葉びっしり。
落ち葉の下には濡れると雪みたいに滑る青い苔。そこで速さ競争しようってんだから普通じゃありませんワな。まぁそれがラリーです(笑)。
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