日本カー・オブ・ザ・イヤー2016の発表が明日12月9日に迫った。今年の大賞の行方に注目が集まるが、本記事では昨年の大賞に選ばれたマツダロードスターについて振り返ってみる。
各方面から高く評価されたロードスターだが、三本氏は“1年を象徴するクルマ”をどう評していたのか?
「いいクルマだからこそ、言っておきたいこと」を、三本氏が提言する。
ベストカー2016年1月26日号
「三本和彦の金口木舌」
ロードスターに乗ると開発者の心が伝わってくる
ボクがオープンカーに乗ったのは、フェアレディSRが最初で最後です。今でこそもてはやされていますが、当時は屋根を開けて走ると、剛性感がなくてね、ボクの奥さんは嫌がっていました。
ということで、2015年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したマツダロードスターを乗りたいと思い、リクエストしたわけです。
初代、2代目、3代目と来て新型のスタイルは、またマツダ顔になってしまうのかと不安でたまりませんでした。でも、大人が買いそうでフランスのニースやモナコの風景にも溶け込めそうなデザイン。カッコイイ情感を持っていて安心しました。少々、舌をペロッて出す、ニシキヘビの顔にも似ていますが、いいと思います。
運転して驚いたのは軽くて、エンジンが予想外に回り楽しいこと。1.5Lなのでこりゃ走らないだろうって思っていたのですが、ほんとに杞憂に終わりました。東京・四谷近辺で屋根を開けて乗りましたが、視線を感じるし、なんといっても風が気持ちいい。
インテリアも安っぽいところは感じないし、マツダが気合いを入れて作ったという、開発者たちの心が伝わってきましたからね。
ハイパワーなロードスターも作るべし!
ただ残念な点は2つ。インテリアに色気がない、黒一辺倒。もちろん走りのよさは重要ですが、スタイルがここまで大人のエロチックさを出しているのにもったいない。既存のユーザー層ばかり見てきたのではないかと思うほど。このあたりにマツダの弱点を感じます。
幌とボディカラー、インテリアカラーのコーディネートもしなきゃ。こだわった革を使うとかね。若い世代に乗ってもらうと同時に、お金を持っているやんちゃなジジイにも目を向けないとね。
ほかのマツダ車も同じですがもっと本物感を出したほうがいいんじゃないでしょうか。ドイツ車ばかりを見ているような気がしてなりません。
次にエンジン。たしかに充分です。でもそれで終わりでいいのでしょうか? やっぱり突き詰めてほしいのです。
(ソフトトップモデルも)2Lは日本でも販売すべきですし、AMGやBMW Mのようなブランドを付けて、ハイパワーなロードスターを見てみたいものです。軽さが命というのはわかりますが、今の時代、過激さも必要なのです。ぜひお願いします。
三本和彦
1931年生まれ、東京都出身。東京写真大学(現在の東京工芸大学)写真技術科を卒業後、1956年より東京新聞に入社。
その後フリーのモータージャーナリストに転身し、ベストカーを始めとするさまざまな自動車雑誌に寄稿、TV番組の司会なども務めた。現在はベストカーで月に1度「金口木舌」の連載を執筆している。
★【金口木舌(きんこうぼくぜつ)】とは…古代中国で官吏が法律などを民衆に示す際に木鐸(ぼくたく。口が金属、舌が木製の鈴)を鳴らしたことから、優れた言論で社会の教えを導く人の例えという意味
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