早くも受注絶好調 中身も優秀 新型ヤリスクロスに仕込まれたトヨタの本気

 2020年9月1日から発売が開始されたトヨタ「ヤリスクロス」。推定受注累計は1万5000台で、9月末までには3万台を突破する見通しだ。9月上旬時点で、納期は3カ月待ちの12月上旬となっている。

 そんな販売絶好調のヤリスクロスだが、7月に袖ヶ浦フォレストレースウェイでプロトタイプではあるがメディア向け試乗会が開催された(販売直前のため、プロトタイプと言っても市販車とほぼ同じである)。

 今回はサーキットではあるものの、試乗でわかったヤリスクロスのポイントについて、ベストカーでおなじみの自動車評論家・鈴木直也氏が解説していく。

※本稿は2020年8月のものです
文/鈴木直也
写真/池之平昌信
初出:『ベストカー』 2020年9月10日号

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■サーキットを限界まで攻めてみると?

 コロナ騒動が起こる直前の3月初旬にデビューしたトヨタ「ヤリス」は、新しいGA-Bプラットフォームと新型3気筒エンジンの優秀性で業界を唸らせた。そのヤリスをベースとして、今いちばん売れ線のスモールSUVに仕立てたのが「ヤリスクロス」。

 兄貴分の「RAV4」、弟分のライズ/ロッキーがともにそれぞれのクラスではベストセラーだけに、コイツが売れないはずがない。今さらではあるが、トヨタのしたたかな戦略にはホントに舌を巻く。

 今回はそのヤリスクロス初試乗なのだが、まだ市販前のプロトタイプなので舞台は千葉県にあるサーキットの袖ヶ浦フォレストレースウェイ。クローズド環境における限定的なインプレッションであることを、最初に断っておかなくてはいけない。安直に「すべてわかったヤリスクロスの実力!」みたいなことを言わないのが、本誌ベストカーの良心的なところですね。

ヤリスクロスのボディサイズは、全長4180×全幅1765×全高1560㎜(アンテナ除く)で、コンパクトなフォルムだ

 というわけで、最初に試乗したのはハイブリッドのFF。せっかくサーキットでの試乗なんだから、まずは遠慮なく限界まで攻めてみる。

 コースインして1コーナーを回ったところでフルスロットル。トルキーな加速感がなかなか頼もしい。緩やかな右2コーナーを全開で抜けると、3コーナー直前でだいたい130km/hに到達。巻き込むようにRが小さくなる4コーナーに向けてフルブレーキングを開始する。

 この4コーナーは典型的な「ブレーキングターンイン」だが、VSCのおかげで姿勢を乱すことなくクリッピングポイントにタッチ。連続した左5・6・7コーナーに向けて再び全開で加速する。

 こういった一連のサーキットドライビングが、余裕綽々で実に気持ちイイ!

リアウィンドウを寝かせたスポーティなリアフォルムを採用したヤリスクロス

 スペックを見ると、ハイブリッドのシステム最高出力は116psで、コンベンショナルな1.5Lガソリンの120psより若干低出力。にもかかわらず全域でよりパワフルに感じるのは、必要とあらば即アシストしてくれるモータートルク(14.4kgm)のおかげだ。

 新型のハイブリッドトランスアクスルはシステム出力を16%向上させたが、パワコンの高出力化と新しいリチウムイオン電池の採用による電動部分のパワーアップが顕著。これが、サーキットの限界走りでも相当効果を上げている。

パワーユニットはヤリスと同様、新世代の1.5L直3ダイナミックフォースエンジンと、この1.5L直3エンジンがベースのハイブリッドの2種をラインナップ

■ヤリスよりもゆったりと落ち着いた乗り味

 ハンドリングは、ベースとなったヤリスとはけっこう味付けが異なるように感じた。ヤリスはコンパクトハッチバックらしいキビキビ軽快なフットワークだが、ヤリスクロスはもっと落ち着いていて挙動が穏やか。スラロームのような速い転舵を試すとわかるが、ロールスピードもバネ上の動きもゆっくり動くように味付けされている。

 それがいちばん顕著なのがハイブリッド4WD。トラクションに余裕があるからVSC介入の頻度が低く、低速コーナーからの立ち上がりがスムーズで乗りやすい。車重が重いせいでラップタイムは速くないが、たぶん公道では上質感のあるスムーズな走りが好ましく感じられるだろう。

ダッシュボード全体の断面を薄くすることでワイドな印象を与えるインパネデザイン
シート地は「G」グレードがブラックのファブリック、上級グレード「Z」はブラウンの合皮+ファブリックが設定される
ラゲッジは荷室長が820mmあり、コンパクトクラスとしては充分な広さを確保。ゴルフバッグを横に2つ積むことができる。また、後席は4:2:4分割可倒式で、真ん中だけ倒せば長尺物を積んでも大人4人が乗車可能だ

 これとは反対に、最も軽快なフットワークが楽しめたのがコンベンショナルな1.5L仕様だ。こちらはFFモデルのみの試乗だったが、全体の軽快感はヤリスに近いイメージ。ハイブリッドバッテリーが搭載されていないぶんリアが軽く、接地感のいい前輪を基点にアクセル操作で積極的にクルマの姿勢をコントロールする面白さがある。非公式計時ながら、ラップタイムもコンベ1.5Lが最速だったようで、コイツをホットハッチ的に楽しむのもアリなんじゃないかと思う。

 今回の試乗はサーキットのみだったから、燃費についてはなんとも言えないが、ヤリスの燃費(WLTC 36km/L)から予想すると悪かろうはずがない。おそらく、ハイブリッドは30km/L台に乗せてくるだろう。

 そう考えると、やっぱりベストチョイスはヤリス同様ハイブリッドのFF仕様が本命。燃費メリットだけじゃなくスポーティな走りも楽しめるという意味で、幅広いユーザーに満足度が高いと思います。

■ヤリスと実用性を比べると荷室と後席の広さは魅力的

 ヤリスがデビューした時、多くの人が指摘したのが後席と荷室の狭さ。ほぼ同時デビューとなったフィットが優秀だったから、比較されて批判されるケースが多かった。

ヤリスのボディサイズは、全長3940×全幅1695×全高1500mm、ホイールベース2550mm(FF車)。ヤリスクロスのサイズは、全長で+240mm、全幅で+70mm、全高で+60mm、ホイールベースで10mm大きい

 これはトヨタにしてみれば承知の上。GA-Bプラットフォームが今後バリエーションを拡充してゆくことで、そういう要求に応える車種を増やしてゆく作戦なのだ。

 ヤリスクロスのリアシートやラゲッジルームを見ると、それがよくわかる。

ヤリスの後席スペース。身長170cm台の筆者が座るとご覧の感じとなる。頭まわりに圧迫感がある
ヤリスクロスの後席スペース。大人が座るにはやや狭いヤリスに比べて、ボディサイズが大きいヤリスクロスは広く、ヤリスよりも足回りに少しゆとりがあり、頭上回りの圧迫感も少ない
荷室容量はVDA法でヤリスが209L。ヤリスクロスは390Lを確保

 後ろの席に座ってみれば一目瞭然。ルーミーさは「ヤリスより1クラス上か?」と感じるし、リアドア開口や乗降性についても同様。さらに、荷室にはゴルフバッグが2つ余裕で収納できるのをはじめ、床板をアレンジすることで天地方向にかさばる荷物(例えば大型旅行トランク)にも賢く対応している。

 SUVのUは「ユーティリティ」の頭文字。看板に偽りなしですね。

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