現在日本で買える新車の小型FRスポーツモデルとして名前が浮かぶのはトヨタ86&スバルBRZ、マツダロードスター&アバルト124スパイダー、BMW2シリーズクーペくらいである。
そのうち2シリーズクーペは基盤となる1シリーズと2シリーズがFFに移行しており将来が不透明なのに加え、価格も550万円からと現実的とは言い難い。
現在においては高額車、ベンツやBMWといったプレミアムブランドならともかく、小型FRスポーツモデルを市販するというのはこれほどモデルが少ないくらい大変なことだ。
そう考えると日本車に3車種(実質的には2車種か)の小型FRスポーツモデルがあるというのは、考えてみると凄いことである。
市販化は大変なことにせよ、日本メーカーも小型FRスポーツモデルをまったく作る気がないというわけでもなく、モーターショーにコンセプトカーが出展されたマツダRX-8やホンダS2000は市販化されている。
しかし対照的に小型FRスポーツモデルはモーターショーにコンセプトカーが出展されながら市販化されなかったということがほとんどであり、当記事ではそんなコンセプトカーを振り返ってみる。
文:永田恵一/写真:TOYOTA、NISSAN、DAIHATSU、SUZUKI
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トヨタS-FR
初公開:2015年東京モーターショー
トヨタは現在の86のはじめのコンセプトカーであるFT-86を2009年の東京モーターショーに出展した直後の2010年の東京オートサロンに、コンパクトサイズのスポーツFRとなる「FRホットハッチコンセプト」を出展した。
FRホットハッチコンセプトは欧州で販売されるFFコンセプトカーのアイゴのボディだけを使い、FRのパワートレーンは1.5L、NAエンジンなど当時あったコンパクトSUVのダイハツビーゴ&トヨタラッシュのものを搭載するという成り立ちだった。
出展時には「150万円級のコンパクトスポーツFR」というコンセプトが掲げられ、市販されれば「ドラテクを磨きたい若者にピッタリのFR時代のスターレットの現代版」とワクワクしたものである。
FRホットハッチコンセプトは市販されなかったが、FRホットハッチコンセプトの発展というか86の弟分的な存在として2015年の東京モーターショーに出展されたのが「S-FR」である。
S-FRは全長3990×全幅1695×全高1320mmという5ナンバーサイズのファニーなスタイルを持つFRクーペだ。
パワートレーンは6速MTということは発表されたが、エンジンは発表されず、1.5L、NAあたりと想像された。
コンセプトカーながらインテリアなど全体的な完成度は高く、「ゴーサインが出れば市販化は早い」という期待も強かった。
さらに翌2016年の東京オートサロンにはよりレーシーな「S-FRレーシングコンセプト」も出展されたが、すでに開発はストップしているようだ。
S-FRが市販されなかったことは残念だが、市販化されなかったのもわからなくはない。その理由を考えると以下の3点が思い浮かぶ。
■1.5L級FR車のパワートレーンの調達が困難だった(ダイハツがインドネシアで生産し、トヨタが販売する商用車のタウンエース&ライトエースのものをFRホットハッチコンセプトのように使えるような気もするが……)
■アライアンスを生かしマツダロードスターのクローズド版をS-FRとする手もあったかもしれないが、それもロードスターへの影響を考えると無理がある
■もしS-FRが200万円で市販化されたとしても86&BRZの中古車と競合し、中途半端な存在となる恐れがあった
幻となったS-FRだが、GRヤリスを市販化するトヨタだからもし何かの拍子で開発が再開することがあるなら、精一杯応援したいところだ。
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