日本でも絶大な人気を誇るイタリアンコンパクト”FIAT500”の新型モデルが本国で、ワールドプレミアを迎えた。
一目で見るものを引き付けるキュートなスタイルは、500そのもの。しかし、この新型500は、全面刷新されるだけでなく、FCA初の電気自動車へと生まれ変わるという。
本国で発表されたばかりの最新情報を基に、新型FIAT500の情報をお届けしよう。
【画像ギャラリー】愛らしさはそのままに!new FIAT 500を確認せよ
文:大音安弘、写真:FCAジャパン
全面刷新の新型チンクエチェントは、なんとEVに
FCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)は、2020年3月4日、本国メディアサイトを通じて、フィアットの中核モデルであるコンパクトカー”FIAT500”の新型モデルを世界初披露した。

1957年に誕生し、長きに渡り、イタリアの国民車として活躍した第一世代のヌオーバ500。その愛らしいスタイルを現代的にアレンジし、2007年に復活を遂げた第2世代となる現行型は、フィアットを代表するヒットモデルへと成長。
日本でも、2008年の導入以来、幅広い層から支持を受ける人気モデルだ。その3世代目となる新型モデルが今回、アンベールされた。
全面刷新が図られたという新型の最大の特徴は、BEVとなったこと。FCA初の電気自動車となることもアナウンスされており、現行型では、アイコンのひとつとなっているツインエアなどの特徴的なエンジンとも決別を図るようだ。
シティカーに最適なEVユニット
EV性能として、最も注目される航続距離は、42kWhのリチウムイオンバッテリーを内蔵し、WLTPサイクルで最大320km(欧州参考値)を実現。
充電については、 時間を短縮化すべく、85kWの急速充電システムを搭載。急速充電器を利用すれば、日常利用としては十分な50kmの走行に必要な電力を、わずか5分。35分あれば、バッテリー容量の80%まで充電を行うことが出来るという。
もちろん、普通充電にも対応しており、家庭用の固定ウォールチャージングシステムも用意する。
モーター最大出力は、87kW(約118ps)。最高速度は150km/h(※電子リミッター作動)と極めて平凡なスペックであるが、0-50km/h加速が3.1秒、0-100km/h加速が9.0秒であることも明かされており、EVらしい俊敏な加速が味わえるようだ。
ドライバーが望む最適な走りが提供できるように、3つのドライブモードを設定。オールマイティな”Normal”モードは、エンジン車にできるだけ近づけた設定で、EV初心者にも違和感の走りを提供する。
EVらしい走りを強調する”Range”モードは、EVならではのワンペダルドライブを実現。完全停止には、ブレーキ操作が必要となるが、アクセルオフのみで、エンジンブレーキよりも強い減速が得られるため、多くのシーンで、アクセル操作のみでの加減速を行うことが出来るとする。
そして、最後のひとつは、お出かけの際に重宝する「Sherpa」モード。これは、複数の車両システムを制御することで、ナビに設定した目的地または最も近い充電ステーションまで、確実に到着できるようにエスコートする。
電力消費を抑えるために、最高速度が80km/hに制限されるほか、空調やシートヒーターも基本設定ではOFFにある、いわゆる省エネモードとなる。

受け継がれる愛らしいスタイル
未来のモビリティをイタリア的な感覚で表現したというスタイルは、往年のヌオーバ500、そして、現行型500の愛らしいスタイルをしっかりと受け継ぐものだ。
ただ現行型と比較し、より控えめで、クリーン、そして、シャープにまとめたとしている。
特に印象的なのが、フロントマスク中央に収まる500エンブレムだ。これはFIATロゴと置き換えられる形で、新設されたもので、電動化を意識したデザインを採用。最後の「0」が「E」にも見えるように、遊び心が加えられている。
また新たな試みとして、ライトユニットとボンネットがオーバーラップしたデザインを取り入れ、ライト上部のデザインが、まつ毛のように添えることで、まるでクルマがほほ笑んでいるようなフロントマスクに仕立てている。

ボディサイズは、新プラットフォームの採用により、ややサイズアップ。全長と全幅がそれぞれ60mm、ホイールベースも20mm拡大されているが、全長4m以下のコンパクトカーであることには変わりない。
ただし、ボディタイプは、キャンバストップを備えたカブリオレのみとなるようだ。
質感とモダンさが高められたインテリア
より機能性が高められたインテリアは、プレーンなスタイルとしながらも、搭載機能もアップデート。ダッシュボードデザインは、より低く配置することで、良好な視界と開放感あるコクピットを構築。
ボタンの削減を始め、シフトボタンやエアコンパネルもコンパクトかつ水平展開のデザインとしたことで、ビジュアル的な質感も向上されたようだ。
メーターパネルは、7インチの液晶タイプとなり、ナビ機能を備えたインフォテイメントシステム用10.25インチのタッチスクリーンをセンターに配置する。

ダッシュボードに、グローブボックスが新設されたように、収納スペースも増設。効率的な形状の新プラットフォームにより、駆動用バッテリー搭載しながらも、ラゲッジスペースも現行型同等レベルを維持している。
さらに先進の自動車運転支援機能も強化されており、歩行者や自転車検知まで対応する「インテリジェント・アダクティブクルーズコントロール」や死角となる後側方からの接近車両を検知警告する「アーバン・ブラインドスポット」など様々な機能を搭載する。
気になる日本での展開は……
イタリアでは、3月4日より、ローンチエディション”La Prima”の事前予約の受付が開始された。このモデルは、充実装備を備える導入記念限定車で、ミネラルグレイ、オーシャングリーン、セレスティアルブルーの3色を設定。
さらにキャンバストップもFIATモノグラムデザインとなるなど、実に、ファッショナブルな仕様となる。
限定車の証として、主要国で販売される車両には、販売国名とシリアルナンバーを併記した専用バッジが装着される。
価格は、 3万7900ユーロ(※環境補助金の適用を含まず)。日本円換算で、約450万円となる。この価格には、改定用充電ウォールチャージングシステムが含まれるというが、なかなかの値段だ。

気になるのは、日本への導入のタイミングだろう。FCAジャパンに確認したところ、現時点では、何も決まっていないとのこと。
ただ現行型の生産が継続されていることもあり、すぐに現行型が終売となるわけでもなさそうだ。今は、その動向を見守るしかないようだ。