クルマの購入方法は、現金払いとローンに大別され、借用するカーリースもある。この中で自動車メーカーや販売会社が力を入れているのが残価設定ローンだ。
契約時に3~5年後の残価(残存価値)を設定して、残価を除いた金額を分割返済する。
例えば200万円のクルマの3年後の残価率(新車価格に占める残価の割合)が、新車価格の40%(80万円)であれば、この残価を除いた60%(120万円)を3年間で分割返済する。
返済を終えても車両は自分の所有にならないが、月々の返済額を安く抑えることは可能だ。
3年後の残価を除いた金額は、表現を変えれば、3年間で価値が減る金額に置き換えられる。従って残価設定ローンは、車両を利用した期間の料金だけ支払うカーリース、あるいはレンタカーに似たローンともいえるだろう。
本企画では、残価設定ローンの長所、短所について見ていく。
文:渡辺陽一郎/写真:TOYOTA、HONDA、MAZDA、SUZUKI、DAIHATSU、平野学
【画像ギャラリー】残価設定ローンの残価率とも密接に関係するので要チェック!!~2020年3月販売ランキング~
残価設定ローンを押す販売会社の思惑
残価設定ローンは返済を終えた時点で、車両の返却、残価を支払って車両を買い取る、改めてローンを組んで返済を続けるという方法を選べるタイプが多い。
メーカーや販売会社の狙いは、車両を返却して、改めて新車で残価設定ローンを組んでもらうことだ。そうなれば新車が売れて、素性のわかった程度のいい下取り車も入手できる。
現金購入や車両価格の全額を返済する従来のローンでは、返済を終えれば車両はユーザーの所有になるから、そのまま乗り続けることも多い。
しかし残価設定ローンなら、車両の返却という選択肢があるため、販売会社は新車への乗り替えを提案できる。そこで残価設定ローンは、年率1.9~3.9%といった低金利を頻繁に実施する。ユーザーを残価設定ローンへ誘致するためだ。
また残価設定ローンの中には、返済期間満了後に改めてローンを組んで返済を続けると、低金利が適用されず、年率7~9%の標準金利に戻るタイプもある。低金利の適用は、残価設定ローンの期間中に限定するわけだ。
この場合は、改めてローンを組んで返済を続けようとすると、金利の上昇によって月々の返済額が高まることもある。
ユーザーとしては、古いクルマを使い続けて返済額が高まるなら、その車両は返却して、新車で低金利の残価設定ローンを利用しようと考える。
これこそがメーカーと販売会社の狙いだ。
販売店によると「今は携帯電話の普及もあり、クルマを定額制で使う抵抗感が薄れた。残価設定ローンを利用して、定期的に新車に乗り替えるパターンは、携帯電話の定額制に馴染んだお客様の意識に合っている」という。
そこで残価設定ローンに適したクルマの選び方を考えたい。
残価率の高いクルマで最大のメリットが生まれる
残価設定ローンは、先に述べたとおり数年後の残価を除いた金額を分割返済するローンだ。
そうなると200万円のクルマの3年後の残価が新車価格の40%(80万円)なら、残価を除いた60%(120万円)を3年間で分割返済するが、残価が60%と多ければ、3年間で返済するのは40%(80万円)で済む。
残価の高い車種を選べば、月々の返済額を安くできるわけだ。
従って最終的に残価を支払って車両を買い取ることは考えず、返却を前提にするなら、なるべく残価率の高い車種を選ぶ。そうすれば同じ返済額で、新車価格の高いクルマに乗ることも可能だ。
例えば3年間で120万円を返済する場合、3年後の残価率が40%の車種であれば、価値が減る60%が120万円に相当するから、新車価格は200万円になる。
ところが同じく3年間で120万円を返す場合でも、3年後の残価率が60%の車種になると、120万円は40%に相当する。そうなると新車価格は300万円に増える。
つまり3年後の残価率が40%になる200万円のクルマと、残価率が60%になる300万円のクルマでは、月々の返済額が同額になるわけだ。従って残価設定ローンのメリットを引き出したいなら、残価率の高い車種を選ぶことがコツになる。
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