ヴェゼルがデビューしたのは、2013年12月のこと。以降、デビュー直後から爆発的な人気を得ており、昨年もSUV販売台数でナンバー1に輝くなど、すでに7年目へと突入しているモデルにもかかわらず、いまだにその勢いは衰えていない。
ヴェゼルはご存じの通り、ホンダが誇る大ヒットコンパクトカー「フィット」をベースに開発されたコンパクトSUVだ。
フィットが今年2月に新型へモデルチェンジしたことで、その動向に注目が集まっていたヴェゼルだが、2021年初には新型がデビューする、との情報が出てきている。
しかし、ヴェゼルが戦うコンパクトSUVジャンルは、今まさに群雄割拠。長年のライバルであるC-HRや、昨年登場したロッキー/ライズ、CX-30に加えて、6月にはキックス、そして今年秋にはヤリスクロスオーバーが登場する。
今年2月に登場した新型フィットは、登録車販売ランキングにて、3月は1位(1万4845台)、4月は2位(8977台)と、売れ行きは好調だ。
フィットからヴェゼルへ。ヴェゼルは次期型でも、この「成功の方程式」を再現することができるであろうか。
文:吉川賢一、写真:ホンダ、トヨタ、マツダ、ダイハツ、日産、予想CG:ベストカー編集部
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登録台数で読むヴェゼルの位置
ライバルのC-HRにかろうじて勝ち1位を獲得したヴェゼルだが、大人気モデルのRAV4がすぐそこまで迫っていた。
昨年11月にデビューしたライズの勢いが圧倒的だ。トップ3はトヨタ勢となった。またCX-30も健闘している。
新型ヴェゼルはどうなる?
現時点、新型ヴェゼルに関しての確定情報はないので、新型フィットの姿から予想していく。
まず、プラットフォームであるが、新型フィットが先代フィットのプラットフォームを流用したことから、ヴェゼルも現行ヴェゼルの流用となると考えられる。
「時代遅れではないのか」と感じるかもしれないが、強みも弱みもよく分かっているプラットフォームを使うことで、合理的な対策を織り込むことができる。
そして、ただ流用するだけでなく、新型フィットには、構造用接着剤の採用など、走りの質感向上につながる新技術がしっかりと導入されており、もちろん新型ヴェゼルにもこうした技術は織り込まれてくるだろう。
気にすべきは、年々厳しくなる衝突安全性に関する車体対策だが、新型フィットが出ていることから、そのあたりも万全なのだと思われる。
ボディサイズは現行ヴェゼルに対し、全高をやや引き下げ、1600ミリ以下にまで下げると予測する。
パワートレインは、新型フィットに採用した2モーター方式の1.5リットルハイブリッド(132ps/15.9kgm、モーター29.5ps/16.3kgm)のe:HEVが用意されるのは間違いない。
また、現行ヴェゼルツーリングに搭載されている、1.5リットルi-VTEC(131ps/15.8kgm)もしくは、VTECターボ(172ps/22.4kgm)も用意されるであろう。
なお新型フィットには、1.3リットルガソリン(98ps/12.0kgm)もあるが、約1.1トンの車重のフィットでさえ、ややトルクが足らず、加速時には非力に感じ、ヴェゼルの持つスポーティな走りのイメージにはやや足りない。
そのため、現行ヴェゼルの1.5リットルガソリンエンジンを残し、高性能&低燃費のe:HEVか、経済的なガソリンか、という選択肢を用意してくるのではないか、とみている。

また、鳴り物入りで国内導入したCR-Vの国内不振を考慮し、新型ヴェゼルでは、RAV4やエクストレイルといった4WD SUVカテゴリでも存在感を得たい、とホンダは考えているはずだ。
そのため、4WD比率を上げ、4WDの制御にも相当な力を入れてくるだろう。足回りを強化した、C-HR同様の19インチタイヤ仕様も考えられる。さらには、モデューロバージョンも追加される、というのが、筆者の予想だ。
新型ヴェゼルは、現行型のような成功は可能か?
先述したように、現在の日本市場では、コンパクトSUVが乱立状態。そのどれもが手ごろなサイズで、使い勝手も抜群だ。
そんな市場に飛び込んでいくことになる新型ヴェゼルであるが、「ホンダらしさ」を忘れなければ、新型も現行型と同じように成功するであろう。
筆者がヴェゼルに求める「ホンダらしさ」とは、例えば、コンパクトなボディなのに「想像がつかないほど」車内が広く、また「想像した以上に」きびきび走る。
そして「驚くほどに」燃費が良い、といった「他社がマネすることができないような、技術とパッケージング」だ。
ハイブリッドシステムのe:HEVはまさに、「他社がマネすることができない技術」といえる。加速性能、音振、燃費、どれも非常に高いレベルを実現している。
なめらかで優秀なエンジンフィーリングのハイブリッドユニットによって、新型ヴェゼルはさらに魅力的になるだろう。
それに、現行ヴェゼルの魅力である広い荷室空間も備わることで、新型ヴェゼルに「ホンダらしさ」が備わる。
さらには、新型フィットの時のように、「見せ方」にひと工夫あると、なおいい。新型フィットは東京モーターショー2019の場で、一気に5つのグレードを発表し、メディアの度肝を抜いた。
実際の売れ行きは、HOMEとBASICが大半を占め、NESSの人気がイマイチといった状況のようだが、それでも、顧客にアピールする戦略としては、インパクトを与えることができた事例だと考える。
■まとめ
何度か、ホンダの車両開発エンジニアの方たちと、お話をさせていただいたが、ホンダでは、クルマつくりに際し、まず社員の「やりたい」というモチベーションを大切にし、その気持ちを否定しない雰囲気をもって開発に取り組む、という。
あと数か月もすれば、新型ヴェゼルの姿が明らかとなるだろう。チャレンジ精神にあふれた、他社にはない魅力的なSUVとして、新型ヴェゼルがデビューしてくるのを楽しみにしている。