日本ではあまりほとんど見かけることのないピックアップトラック。だがアメリカじゃそれこそ“日常”のクルマ。いろんなタイプのピックアップが走っている。
本場アメリカから日本未導入の日本のピックアップ、果てはインド・中国まで、今回は世界のピックアップトラックのデザインを比較してみよう。
【画像ギャラリー】リアの画像もたっぷりと!! 世界のピックアップトラックたちをギャラリーでチェック!!!
※本稿は2020年7月のものです
文:清水草一/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年8月10日号
■日本でもこんなクルマに乗りたい!!!
ピックアップトラックはアメリカの魂だ! アメリカ以外でも売られてるけど、アメリカが本場! つまりアメリカのガラパゴス商品!
でもアメリカ=世界というくらいでっかい国だけに、ウルトラ巨大なガラパゴスなんだよね!
ピックアップトラックは、デザインもガラパゴスで、まったく独自の世界を築いてきた。フツーの乗用車とは同列で扱えません! なにせトラックだけに。
でもアメリカでは、それが広く国民のゲタとして使われているわけで、実に特異な存在であります。
今回は、そのピックアップトラックのデザインを、外野から評論させていただこうという試みだ。トラックだけに勝負はフォルムより顔。ピックアップトラックは顔が命!
ということで、米、日、欧州そのほかの順でいかせていただきます!
■生まれ変わったばかりのフォード Fシリーズ
ピックアップトラック界の不動の販売ナンバー1だけに、ド定番な四角い顔でコンニチワ! その内側にちょい縦形っぽいグリルをはめこむことで、さらなる力強さを表現しております! これが年に90万台くらい売れるんだから、N-BOXの四角い顔が年に25万台売れたって、顔の総面積じゃ勝負にならんぜよ。

■キリリとしたフロントフェイス フォード レンジャー
Fシリーズの下に位置するミッドサイズ車。エクスプローラーのピックアップトラック版でもありまするが、それだけにボディも顔もかなり乗用車チック。この比較的落ち着いた控えめな顔は、雄大なアメリカの空気そのものって感じでしょうか。フルサイズに比べるとかなり常識的だ。

■迫力の顔つき シボレー シルバラード
フォードFシリーズに次ぐ、不動の販売台数ナンバー2がコイツだ! 威圧感というか顔の厚みはFシリーズより一枚上手! なにせグリルが2段構えだから! Fシリーズが「グリルの中にまたグリル」なら、シルバラードは「グリルの上にまたグリル」だ! メッキの上にはでっかく「シボレー」と書いて、旗幟鮮明にすることも忘れていない。これもピックアップの絶対的な文法なのである。

■これでもミッドサイズ シボレー コロラドZR2
シルバラードの下に位置するミッドサイズのピックアップだけに、結構常識的な乗用車っぽいデザインとなっております。日本で実物を見りゃ「デケェ!」「さすがのオラオラ感!」ですが、アメリカのでっかい大地の上では、空気のようなデザインであると断言いたします。

■高級ピックアップ GMC シエラ
シルバラードの姉妹車がオマエってわけか! グリルは全体にメッキギラギラ&ブヒブヒ感を強めつつ、サイドに牙を生やしてイノシシ感も増している。あ、イノシシじゃなくバッファローかな? どっちにせよ猪突猛進感がハンパじゃねぇぜ。

■ミドルサイズピックアップ GMC キャニオン
コロラドの姉妹車ながら、より四角くてデカいメッキグリルにより、アメリカンピックアップらしい迫力を得ておりますね。やっぱりピックアップは四角くてデカい顔が定番だし、安心するネ!

■北米では大人気 ラム パワーワゴン
ラムの源流、ダッジラムのボンネット形状は独特だ。実はコレ、トラクターをイメージしているんだぜ! この段付きボンネットのおかげで、ブタ鼻がドーンと上に突き出たようにすることができるのさ! おかげでラムといえば、究極のブヒブヒ顔! フォードやシボレーとは一味違った、よりお下劣&アニマル的な猪突猛進テイストを表現することに成功している。次期アルファードもぜひ参考にされたし。ボンネットがないからムリか。

■陸の王者 トヨタ タンドラ
日本の巨人が生産するフルサイズピックアップがこれだ! 初代は肥大化したハイラックス程度のイメージだったが、どんどんアメリカナイズされて、3代目の現行モデルは、もはや純アメリカ人に近い! このでっかくてぶっとい縁取りのメッキグリルを見てくれ! ピックアップはこうでなくっちゃ!

■これは大迫力 トヨタ タコマ
ハイラックス(ミッドサイズ)の北米版だけに、トヨタらしい堅実な香りを残しつつ、アメリカンな厚顔化がなされている。

■フルサイズピックアップ 日産 タイタン
ゴーン元社長が日産立て直しのため、2003年から北米市場に投入したフルサイズピックアップ! 現行モデルは、アメリカンピックアップの文法に則って、四角いグリルを分厚いメッキで縁取ったってわけだぜ! しかもよく見りゃ馬蹄形! さすがマールボロカントリー! ヘッドライト外側を若干斜めに切ることで、ちょっとだけ乗用車チックにスピード感を表現してみました。

■Vモーショングリルだ日産 フロンティア
これがいわゆるダットサントラック(北米版)。タイタンの下に位置するミッドサイズ車だけに、他社同様、日産のイメージを押し出しつつ、適度に控えめな空気っぽい顔つきとなっている。こうしてみると、アメリカンピックアップのデザインってのは、確たる公式が存在することがよくわかります。

■アラバマ工場製 ホンダ リッジライン
北米市場が命のホンダなれど、ピックアップトラックはミッドサイズのリッジラインだけ。しかもデザインは超乗用車チックで、いわゆる都会派SUVに近い。そのせいもあってか、売れゆきはいまひとつだ。アメリカンピックアップのデザインは、自社のアイデンティティよりも、まずアメリカの荒野の掟にあわせることが重要なのだ。うむう。

■スッキリ顔です 三菱 トライトン
トライトンは北米で販売されない、主にアジア向けのピックアップトラックだけに、デザインテイストもまるで異なる。ちゃんとラダーフレームを使っているけど、パッと見は非常に乗用車的で、荷台まで丸みをおびた有機的なラインが特徴だ。顔つきも三菱そのもの。アメリカンじゃないだけに、アメリカンピックアップとは別世界のデザインである。

■もっこり顔のいすゞ D-MAX
これまたコロラドの姉妹車として、タイで生産されておりまする。デカいグリルに吊り目の組み合わせは、アジア向けの欧風アメリカンとでも申しましょうか。

■見事なマツダ顔 マツダ BT-50
2代目まではフォードレンジャーの顔違い版だったけど、3代目からはいすゞD-MAXの顔違いに。で、その顔は見事な魂動デザイン。ピックアップトラックらしからぬ、都会的な雰囲気。

■多国籍モデル ルノー アラスカン
なんとルノーのピックアップトラック! ただしベースは日産フロンティア。顔だけルノーにして、主に中南米で販売されている。

■今やレアモデル メルセデスベンツ Xクラス
顔がまんまメルセデスながら、これもベースは日産ナバラ(フロンティア)。実は販売不振にて、北米上陸も果たせず、たった2年でこの5月に生産終了となりました。ベンツだけにベンツ顔にしないわけにはいかなかったんだろうけど、ベンツ顔のピックアップ需要は、世界的に存在しなかったようだ。

■顔はゴルフっぽいぞ VW アマロック
これまた、まんまVW顔。主に欧州&南米向けながら、これじゃアメリカではぜってー売れないだろう。

■ピニンの親会社 マヒンドラ インペリオ
インド国内向けのピックアップだけに、いわれてみればそんなデザインである。特に荷台部がレトロでイイ。郷に入りては郷に従え。

■中華製も迫力なかなか 長城汽車 風駿7
どこかトヨタ的な、落ち着いたバランスのいいデザインですね。まだアメリカ進出の野心はないようですが、素質は感じるぜ。
