高速道路の一部区間の最高速度が、まもなく「正式に」120km/hに引き上げられる。
というのも、現在の120km/h区間(新東名の新静岡―森掛川間と東北道の花巻南―盛岡南間)は、あくまで試験的な引き上げで、正式なものではなかったからだ。
この試験的な引き上げによって、事故が大幅に増えたりすれば、「最高速度の引き上げは危険」という結論になり、元に戻ってしまう可能性もあった。しかし現実には、実勢速度も死傷事故件数もほとんど変化しなかった。
静岡県警が発表した新東名の試行前と試行後の状況は、以下の通りだ。
文:清水草一/写真:編集部、photoAC
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■120km/h試行区間も「実勢速度」や「事故件数」にほぼ変化なし
<追越車線の実勢速度の変化>
(上り)122.4km/h→123.4km/h
(下り)122.6km/h→123.3km/h
<死傷事故件数の変化>
(上り)20件→22件
(下り)24件→24件
(施行後の数値は、6車線化工事前の半年間の数値を1年分に換算)
もともと今回の最高速度引き上げ試行は、「規制を実情に合わせる」という趣旨だったが、まさに狙い通り。最高速度を引き上げても実勢速度はほとんど変化せず、事故件数もそのままだった。
新東名に限らず、全国の4車線以上の高速道路の追越車線は、渋滞や混雑がない限り、実勢速度は規制速度よりかなり高い。最高速度を120km/hに引き上げても、それで事故が大きく増える懸念はまずない。
今回の120km/h試行に当たっては、一般ドライバーに対する事前のアンケート調査では、「怖い」といった否定的な反応がかなりあった(特に女性)。
それはともかくとして、一部モータージャーナリストからも、「隣の車線を走る80km/h規制の大型車との速度差が増すのは危険」とする指摘があったが、個人的には、あまりにも心配しすぎだったのではないかと感じる。
速度無制限のアウトバーンでは、隣の車線との速度差がすさまじい場合は少なくないが、死傷事故率は日本と大差ない。道路交通の後進国だった中国や韓国でも、すでに数年前から最高速度が120km/hに引き上げられているというのに、日本では「120km/hは速すぎて危険」というのは不可解だった。
■正式導入はいつ? 警察庁は近日中の120km/h正式導入を示唆
とにかく、120km/hへの引き上げ試行は成功だった。そこで警察庁は、近く交通規制の基準を改正し、その上で、他の区間にも拡大して適用する――と報道されていた。
そこで警察庁に、事の真偽を直接確かめてみた。
Q:2020年8月中に最高速度基準を改正するということで間違いないでしょうか。
A:交通規制を実施する場合の一般的な基準である『交通規制基準』については、8月中の改正を目途としています。
Q:その場合、120km/hの規制速度が適用されるのはどの区間でしょうか。
A:現在実施されている最高速度120km/h試行区間以外に、新たに120km/hの規制速度が適用される区間については、今回の交通規制基準の改正により、最高速度規制120km/hも基準を示したうえで、基準に該当する区間のうち片側3車線の道路を優先して、順次、関係県警察において、高速道路会社等と調整等を行うこととしています。
基準に該当する片側3車線区間は、
〇東北自動車道/浦和ICから佐野スマートIC
〇常磐自動車道/柏ICから水戸IC
〇東関東自動車道/千葉北ICから成田IC
〇新東名自動車道路/御殿場JCTから浜松いなさJCT
ですが、基準に該当する路線という位置づけであって、規制速度の引き上げが確定しているわけではありません。
交通規制の実施権限は各都道府県公安委員会であることから、今後、関係県警察において高速道路会社等と協議・調整を行った上で、規制速度引き上げの可否を決めることとなります。
(以上)
この回答が編集部に届いたのが8月13日。『交通規制基準の改正は8月中が目途』とされていたが、その8月を過ぎても、まだ発表はない。
なにか問題が発生した可能性もゼロではないが、こういう回答が届いている以上、近いうち発表されると考えていいだろう。
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