2010年にデビューしたPCXは、今や「日本で一番売れている二輪車」だ。10年を経た今年、新型PCX(125cc)とPCX160が登場。PCXが35万7500円、PCX160が40万7000円と決して激安ではないが、四輪車のデザイン手法を採り入れるなどしてひときわクオリティを高め、走りの質感も高く、お値段以上の価値があることは間違いない。
文/高橋剛、写真/市本行平、HONDA
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ハイクラスなクルマのようなデザイン
「これはクルマだ」と思った。いや、もちろん屋根はなければタイヤもふたつだけだから、新型PCX/PCX160はれっきとした二輪車なのだが、少なくともホンダはクルマ的な乗り物としてこのスクーターを作ろうとしているんだな、と思えた。
まず注目したのはエクステリアデザインだ。このこと自体が、とても珍しい。二輪車のインプレッション記事をザッと見渡してもらうと分かるが、たいていはエンジン性能、シャシー性能、そしてデザインの順で書かれている。「走ってナンボのものか」が、二輪車評価における最優先事項なのだ。これはスクーターという利便性命のジャンルでさえ、だいたい同じだ。
だが、新型PCX/PCX160の場合は、走りうんぬん以前にまずデザインが気になった。張りのある面とシャープなエッジの組み合わせは、欧州車のデザイン手法を思わせる。緊張感と艶めかしさが適度にバランスしていて、安っぽくない。
一般的なバイクに比べてスクーターはプラスチック外装の面積が広く、その分デザインできる余地も多い。そしてスクーターはとかく、その余地をハッタリやギミックで埋めようとする。だがPCXのデザインは、シンプルかつクリーン。非常にオトナっぽく上品で、無印良品的な仕上がりだ。生成りの高級感がある。
「そうなんですよ!」と、デザインを担当した岸敏秋さん(株式会社本田技術研究所デザインセンター)。「四輪のデザイントレンドを巧みに反映させているのは確かです。オーガニックでエモーショナルなデザインは、四輪でもかなりハイクラスなクルマに採り入れられています。弊社でいえばアコードやシビックなどに通じるものがあります」。
ただ単に四輪デザインをマネしただけではない。「四輪とはボディサイズがまったく異なりますからね。同じような表現を狙うためには、適度にデフォルメしたり、強調したりする必要があります。そういう細かいバランス取りにはかなり配慮しました」。つまり真っ先にデザインに注目してしまったということは、まんまとホンダの思惑に乗せられたわけだ。
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